起承転結は大事だ。
なかでも最期を如何に上手くまとめるかで、その作品の真価が問われる。途中、どれほど盛り上がろうと、最後で白けるような結末では価値が下がる。終わり良ければ全て良し、とはいささか乱暴ではあるが真実の一面を付いていると思う。
だからこそ漫画家・本宮ひろ志に対する私の評価は低かった。そのパワーは認める。特に山場における盛り上りの魅力は否定しがたい。だが、エンディングがいつも尻切れトンボであった。
最初のヒット作である「男一匹がき大将」にせよ「群竜伝」にせよ、結末はひどいものだった。だからこそ長く低迷したのだろう。表題の書は漫画ではありません。本宮ひろ志の漫画に対する想いを綴ったエッセイになっています。私はてっきし本宮自身の語りをコピーライターがまとめたものかと思ったが、どうやら本人自ら筆をとって書いたもののようだ。
そのなかで自ら率直に往時の人気作を上手く終えることが出来なかった苦悩と悔恨が語られていた。その原因はやはり本宮自身の力量不足。そういった面を含めて、それを認める率直さこそが、この人の強みなのだと思う。
なかでも実力ある編集者を高く評価し、彼らの存在なくして漫画は生まれなかったと率直に述べている。また自らの画力のなさ、妻であり漫画家のもりたじゅんの手伝いがあったからこそ、可憐な女性キャラを漫画に登場させて人気を博したことも素直に述べている。これはなかなか言えることではない。
本宮ひろ志は、率直にってかなり乱暴と言うか横暴な漫画家だと思うが、それでも漫画に対しては過酷なほど率直にまっすぐな姿勢で向き合ってきた。いくら漫画を描くのが嫌だとゴルフに逃げ、女に逃避しようと最後は漫画に戻ってくる。
そして何より重要なのは、編集者や家族、アシスタント、友人などの存在とその助けがあってこその自分だと理解している。これを堂々述べられる漫画家は、実はそう多くない。
漫画を描くということは、個人作業である部分が多いのは確かだ。いかに編集者のアシストがあろうと、またアシスタントに多くの作業を任せようと、作品の完成は自分の筆入れをもって終わるという漫画家自身の自負が他者の存在を軽く見る。
だが、本宮ひろ志はそこが違う。他者の助けがあってこその自分を強く自覚している。だからこそ、あれだけ出版社と揉めたり、他の漫画家と険悪になり、業界の主流からはずれているにも関わらず、長きにわたり活躍できたのだと思う。
漫画家の自伝はいくつかあるが、自ら筆を執って文章で書かれたものは案外少ない。いっちゃなんだが漫画家の文章力はあまり高くない。これは絵のプロであり、絵で説明し、絵で主張することに特化しすぎたが故であり、致し方ない部分もある。
率直に言って、この本も漫画と比べると、その伝えたい意図、主張はあまり強くない。だがその分、平易で読みやすい。本宮ひろ志の熱い絵柄に苦手を感じる人でも、この文章なら読みやすいと思う。機会がありましたら、一度読んでみても損はないと思います。
本宮ひろしのマンガって、そう言えば最終巻を読んだことがないかも知れません。
途中はすごく面白いのですが、それまでなんですね。
絵柄も暑苦しいし、ストーリーも女性好みではありません。
でもまあ、面白いのは事実です。
女性好みの作品が少ないのは当然で、本宮自ら若い男性好みの漫画を目指していましたから。
ある意味、たたき上げの勉強家ですが、見識の浅さゆえに短所も目立つ作家ですね。