今夜の観測を期待して待つかんと氏
しばらくすると、観音岩の右側斜め上に広がる雑木林の端に1頭の鹿が現れた。14時を少し回ったところだ。1本の赤松の枝が作った影の中にいる。早く仲間を連れてこいと見ている方は気が急くが、その鹿だけで、後続がない。鹿は時折たつまを張るM氏の方が気になるようだが、氏が潜む小梨の大木は見えても氏の姿は別の木の枝が邪魔をして見ることはできない。距離にして鹿とは200メートルくらいだが、はたしてM氏がその鹿の姿に気付いているかどうか。位置がかなり下方になり、障害物もある。また見えていたとしても、1頭ではどうすることもできない。
もし鹿の群れが出るにしても、もう少し後になるだろうと構えていたら、今度は電気牧柵のソーラー発電機の傍に7頭の群れが出てきた。頭数には文句ないが、その位置では西側に傾斜していて、M氏からは見えないし、また遠すぎる。
実はその朝、大沢山の台地で30頭以上の鹿の群れを確認していたが、1時間もしないうちにいなくなってしまった。あれだけの頭数は期待できなくとも、夕暮れまでにはもう一度出てくるだろうと、持久戦を覚悟した。
そのときは、目が疲れるので双眼鏡を外していた。と、黒い点が幾つも、朝方に見たと同じ辺りに肉眼で見えた。急いで双眼鏡を引き寄せると、明らかに鹿の群れだ。数えると、18頭いた。さらに新たに3頭が、電牧沿いの塩と苦土石灰で誘引している場所にも現れた。
そのまま長い時間が経過した。そう感じた。しかし銃声もしなければ、鹿の動きにも大きな変化はない。M氏は何をしてるのかと焦る。もしかすれば、電牧の3頭に気を取られ、それの接近を待っていて、より近くの鹿の群れには気が付いていないのかも知れない。不安になってきた。と言って、電話をするわけにはいかない。もちろん、双眼鏡からは目をそらせない。緊張と興奮が入り混じる。
突然、鹿の群れが一斉に下方に向かって走り出した。間を置かずして、鈍い銃声がした。電牧の近くにいた3頭の群れのうち2頭が一瞬、逡巡を見せたが、すぐ同じ方向にものすごい勢いで走っていった。
名手M氏にとっては、100メートル先の鹿の頭部は、標的とするには大き過ぎたようだった。(つづく)
明朝3時頃がピークになると予想される双子座流星群、問題は天気。
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