入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     「冬」 (22)

2015年12月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


  いつの日か、この写真の上部から始まる第1牧区の一部を解放できるようになったら、来訪者はその圧倒する眺めを眼前にして、どれほどの喜びと感動を味わうことになるだろうか。北アルプスと中央アルプスをほぼ一望できる、北は白馬に通ずる三国境、南は中央アルプスの越百(こすも)の先までと、直線距離にしても優に100キロを超える壮大な展望が待っている。
 第1牧区内の古い三角点のある丘を中心に木の柵で囲い、そこへは吊り橋をかけ、訪れた人はその上を渡っていく、というのがずっと温めてきた案だ。こうすれば牛は吊り橋の下を通れる。牛の行動を妨害せずに、人が共存できるだろう。
 しかしそうなると、古くからここを気に入って来てくれていた人たちはどう思うだろうか。小洒落た建物ができたり、自動販売機が林立し、人や車でこれまでの平穏が破られてしまうことになるかも知れない。重い荷物を背負い雪の中を来てくれた人たちは、除雪された道路を車でやってこれるようになっても喜んでくれるだろうか。
 文明の押し寄せる波に、入笠とて抗うことはできなくなるかも知れないが、その時、人々の思いはまちまちで、上手くまとめることは簡単なことではない。
 
 昔は冬の上高地から山へ入るには、くねくねと曲がる梓川に沿った道を今の倍以上もかけて歩いた。現在は川の流れを無視した、できるだけ真っ直ぐに建設された道路を快適に歩いていける。しかし、その分、あのころの風情は大分失われてしまったことを、もう大分前になるが、初めて通ったときに知らされた。
 日の当たらない川の崖っぷちにあった坂巻温泉も別の場所に新築され、昔の面影はない。中の湯も移築されて、梓川を挟んで道路から見えていた名物の露天風呂は、利用できなくなってしまった。
 今年も越年登山を目指してたくさんの登山者が釜トンネルを通るだろうが、その中に梓川沿いの旧道や、水漏れの古いトンネルを知る人はどれほどいるだろうか。狭いトンネル内の急な坂で、車がエンコでもしたら大変なことになると、「中古車」は通るなというような注意書きにひやひやし、また笑った記憶もある。
 最近では1年を通じて上高地には凄い数の観光客や登山者が入るらしい。多勢には勝てない、思い出すことはあっても、行くことはもうないだろう。
 
 TDS君、Oさん〈だと思う)、キクのことでコメントありがとうございました。7,8,9日あたりで、今年もどうですか。

入笠牧場の宿泊施設及びキャンプ場の営業に関しましてはカテゴリー別の「H27年度冬季の営業」を。また天体観測に関心のある方は「入笠牧場からの星空」をご覧ください。
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