年を取ればとるほど、時の経つのを早く感ずるものだが、さすがと言うべきか12月、師走はまっこと、また一段と早くなった気がする。
そんなことを言いながら昨夜、思いがけず古い懐かしい白黒映画を観た。「ローマの休日」である。若く最も美しかった頃のオードリー・ヘップバーンが主演した名作で、当時世界中が沸いた。そう言っても大袈裟ではないだろう。内容はローマを舞台にした某国王女とアメリカの通信社で働く記者との短い恋愛譚で、以前に一度観たことがあったがそれでも面白かった。
彼女の映画は、この他にも評判になったものが多数あったはずだが、これ以外には1本しか見てない。彼女の最晩年の映画で、森林火災と闘う消防士が主人公だったと記憶している。しかしもう、題名もなにも覚えていない。ただ、若かった頃の輝くような美貌をすっかり失せてしまったヘップバーンを見て、彼女でも年月に侵され、老いるのだと、何とも哀感のないまぜった残酷な安堵感のようなものを覚えた。
それから少しして、彼女の訃報を聞いた。生前に用意してあったスイスの片田舎に葬られたらしいが、彼女の亡骸を自家用飛行機を使ってそこまでで運んだのは、「ローマの休日」で彼女の相手役をしたあのグレゴリー・ペックだった。実にいい話だと思ったものだが、それにしても彼女の華やかな生涯が、あまりに短く思えた。。
「天人五衰」という言葉は、彼もまた自死を遂げてすでに45年も経ってしまったが、三島由紀夫の最後の作品「豊穣の海」から知った。たとえ天女であっても、五つの段階を経る中において老いを重ね、終えるのだ、というような意味だったと思う。
この言葉で思い出したのが、ヘップバーンだった。今では彼女も冷たい土の中で、永遠の眠りについている。
自分の一生と比べ、他の人の生涯のあまりの呆気なさを、こんなふうに人の死に接して時には感じたりするが、待てまて、自らにも当てはまることで、いつか誰かにそんなふうに見られ、感じられる時が来る、確実に。「牧場の管理人してた人、亡くなったんだってぇ」なんて、クク・・・クゥ。
ムー、日本酒のことを話題にするつもりがつい、この時期にはあまりふさわしくないことを書いたかも分からない。
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