2月25日。朝の光が眩しい。午前7時零下7度C。晴天。
昨夜は一晩中寒くて幾度となく目が覚めた。その間何度も夢を見たが、どれも薄い夢だった。内容は曖昧で、今しがた立ち去った人の微かな気配のように、やがて消えた。昨夜、窓のそばに布団をひいたから、夜気が侵入してきて睡眠を邪魔したようだった。仕方ない。
朝食は支度もしないし、食べないと決めていたから格別することもない。そう安気(あんき)を決めてから思い出した。何もすることがないどころか昨日、動きのとれなくなった車をそのまま放置しておいたから、それを雪の中から掘り出すという、面倒な仕事があったことを忘れていた。雪が凍っているうちの方が脱出しやすいだろう思いつつも、動き出す気になれないまま時間が過ぎた。
炬燵に囚われ、漫然怠惰から抜け出すには何かキッカケが要るなと、そう思っていたら、HALが吠えながら雪原を林道の方へ走っていった。一人の登山者が見えた。南門から牧場を通り帰っていくところのようだった。まだ午前9時、ヒルデエラ(大阿原)からテイ沢を下ってきたとしか考えられないが、それにしても早い。入笠山の山頂で日の出でも眺めたのか、それともヒルデエラ辺りで朝日に染まる湿原の写真でも撮っていたのか。
結局、つられるようにして外に出た。それから悪戦苦闘の1時間、車は腰の重い牛のようにさんざん抵抗した末、ようやく窪みから這い出した。ひと冬に何度かは似たような苦役に泣く。今冬は二度目だった。
小屋にいたら11時半ごろ、「みろく山の会」のOZWさんから電話が入った。すでに富士見パノラマの山頂駅に着いたという。そしてその約1時間後、元気な中高年たちがやってきた。懐かしい顔、顔、顔、その中にはもちろんSHIMEさんもいた。最年長83歳、ご立派!である。(つづく)
明るい光、そして残雪、3月の入笠・・・、 SHIMEさんに負けるな。
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