入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

    ’17年「早春」 (8)

2017年03月08日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 この3本の木々の芽吹きは遅い。ミズナラの木である。葉を落とすのも周囲と比べかなりゆっくりとしていて、大ぶりの茶色の葉をいつまでも付けていたいようにすら見える。春、夏、秋、冬、四季それぞれに変化する様子を、ずうっと眺めてきた。そんな思い入れのある木だが仕事のついでに、時に気に入ればiPhonでサッサと撮るだけだ。それも、この角度が樹形や、並び具合を引き立てるには一番良いと思い込んでいるから、時間はかけない。きょうの写真には写っていないが、ここからなら、北アルプスの雪を被った峰々の連なりが、芽吹き始めた晩生(おくて)の木のよい背景になる。
 この場所からはまた、振り向けばかつて、伊那の人々からは「アマゴイダケ」とも呼ばれた入笠山も、右手のそれより若干高い電波塔のある無名の山、とりあえず名無しの権兵衛をもじって「権兵衛山」と仮称しているが、その山も仲良く眼前にある。
 この二つの山に挟まれた渓に沿って、その昔、日蓮宗の信仰篤き人々が通っていった「法華道」があることは幾度となく書いてきた。テイ沢にも「石堂越え」と呼ばれた法華道よりももっと古い道があって長く人々に利用されたようだが、手許にある地図では山道は、上流から見て右側の山頂を経由している。信仰のような特殊な目的以外で、現在のように流れに沿って歩くようになったのはそれほど古いことではないような気がする。昭和、下っても明治まで行くかどうか。
 テイ沢の両岸にはかなりの数の石塔や石像が残っているが、入笠山の山腹にも最近それらしい石碑を発見した。岩がごつごつとしていて、冬季以外は雑草に覆われてしまうため気づかなかったが、どうやらこの山域は、人々の祈りの対象でもあったようで、入笠山と古い時代の伊那谷の人々との関わりについてはまだもっと知りたいことがある。

 
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    ’17年「早春」 (7)

2017年03月08日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 木々の芽吹きが始まると、森では鳥の鳴く声が盛んに聞こえるようになる。仲間を呼び、春をともに喜びあい、歌っている。その声を聴き、鳥の名前を素早く当てる人たちがいる。羨ましく思うが、もう覚えるのは無理だろう。
 きょうの写真も昨日と同じころに撮ったもの。牧草の様子から見れば少し早いかも知れない。実際の季節を先行するような写真を掲載しようと決めたものの、早くも先行きが危ぶまれる。
 木々の葉が萌え出すこの時期の写真は少なくて、もう少し経って、牧草の緑の色が濃くなると保存枚数も増える。そのころになれば遠くからでも、微妙な葉の色の違いで樹種が分かるようになる。娘たちが爽やかな服装を競うかのように、木々の葉も鋭い枝に思いおもいのやさしい緑の色をまとう。気の早い登山者がやってくるから、露天風呂の営業も始めなければならない。
 日は暖かく水ぬるむ5月、薄桃色の山桜の花の色が若葉の森に清楚な彩を添える。連休の賑わいが終わっても、山に来る人の姿は絶えない。山開きがこの月の下旬ごろに行われ、そして6月、待望のコナシの花が咲き、クリン草が後追いする。そのころには、上がってくる牛の頭数を気に掛けながら、開牧の準備に忙しい日が続く。
 
 毎年、巡る季節に合わせて山の暮らしを続けてきた。日を浴びて、雨に打たれて、風に吹かれて、そうやって10年が過ぎ、11年目がやがて来る。

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