もう外は雨が降ろうが、雪が降ろうが、この〝勝手な独白″は一足早い新緑の態勢を変えない。ここに掲載の写真は、Ume氏の作品のように完成された水準の高いものもあれば、目を閉じて撮ったのかというような独白者の駄作もある。しかし、季節を戻すことはもうしない。それら玉も石も混じる写真を参考に、入笠牧場の春をあれこれと想像していただければと思う。
今日の写真は、5月になったばかりの第2検査場の近くにある山桜が開花した様子で、実は2年前の写真だ。山中にあって、小さな可憐な花を咲かせる野生の桜の木は、みな山桜だと思い込み、そう呼んできた。桜にもいくつか種類のあるくらいは知っているが、里の桜と、山の桜で済ませている。
ともかく、花なら木に咲く花が好きで、桜なら爛漫を惜しまぬソメイヨシノよりも、和服のような清楚で控えめな山桜の方が好きだ。開花と芽吹きがほぼ同時の山桜だが、それぞれの木がその開花・芽吹きの時期にこだわりまちまちだから、あっちの森へ、こっちの谷へと、花を見る者の探求心をそそるようで心憎い。
こんなふうに桜の花は咲いても、ご覧のように白樺の木はまだ芽吹いてもいない。白樺とよく似たダケカンバときたらもっと遅い。いつまでも無精姿を晒すのをやめて新緑の衣を早くまとうようにと春の日は、そのまばゆい光でもっと急かせてくれたらと思う時がある。
昨夜の雪で、西山(中ア)は白い衣の裾を麓まで下げてしまった。ここと標高差で100メートルにも満たないような裏山まで、これまた雪がベッタリと付いたまま融けようともしない。入笠へ車でい行くことは、これで当分の間は無理となった。
思い出を 解かしていくや 春の雪 -TDS
TDS君、ありがとう。