
拝啓O里様
シベリア鉄道は、いまだ果たせぬ長年の夢であります。大黒屋光太夫を主人公にした井上靖の「おろしや国酔夢譚」や、それを元に作られた某作家が旅するTV番組では、極寒のシべりの苛烈さも知りました。また、別の作家で「さらばモスクワ愚連隊」とかいう塩気のない小説に失望して、以来この人の本を読まないことにしたのも、シベリアの縁と言えなくもありません。
年を重ねるごとに北方志向もあやふやになり、今では温暖な土地への旅も夢も見るようになりました。しかしそれでも、シベリアへの憧れだけは変わりません。できればこの仕事を辞めてからにしたいのですが、それまで待てぬなら、仕事が一段落する11月から4月の間でも構いません、シベリアの旅にぜひ同道したいものです。
シベリアと言えばもうひとつ、かの地における戦後の抑留者の苦労話も、記憶に強くあります。就中、祖国に帰れずに終わった人々の望郷滾る中での無念の死を。
今年の初めころ、そうした異国の地に倒れた父やその仲間のために私費を投じ、苦労の末にかの地に慰霊碑を建立した遺族の女性の記事を読み、感動しました。この独り言にも載せましたが、読んでくれたでしょうか。もし読んでいただいてなければ、家に戻れば記事は大切に持っていますので、詳細口達とさせてください。「この千羽鶴に乗って祖国へお帰りください」、・・・何度読んでも泣けました。
入笠牧場の夏は、既報しているように今年は横道にそれたまま、次の季節を迎えるようです。神足勝記に関する執筆は進んでいますか。一息入れて、高原の涼風に吹かれにやってきてはどうですか、歓待します。都会の炎熱に負けぬようご自愛ください。
敬具
8月中は、キャンプの場合も、予約をお願い致します。キャンプ場及び山小屋の営業内容につきましては、「H29年度の営業案内」と「続H29年度の営業案内」を参考にしてください。