Photo by Ume氏
今朝は霧が深い。霧の深いのはきょうに限ったことではないにしても、何となくこれまでと違って、その白い闇からは初冬の趣を感ずる。
小屋に一番近いテント場のコナシの木が見えるくらいで、それより遠くはすっかり霧の中に隠れてしまっている。因みに外の気温は6度にも届いていない。頼りにしている雨量・雲量計を見ると、天気は回復するようだから、もう少し気温が上がればこの霧も次第に晴れてくるだろう。今はまだ太陽の位置すら分からない。
昨日は小入笠の頭まで、電気牧柵の冬対策を行った。斜面の緩やかな所は2線のアルミ線の下段を上段のアルミ線と一緒にし、急な斜面は雪で支柱が折られないよう地面から抜き、その穴には翌年のため目印に木の枝や杭を差し込んでいく。この厄介な骨の折れる仕事を終わらせないと、安心して山を下れない。
意外だったのは、電気牧柵はほぼ無傷で、鹿によるかなりの被害を予想していただけに安堵した。特に例年なら小入笠の頭の周辺は最もその被害が大きいはずが、何の問題もなかった。鹿たちも行儀が良くなったということか。
作業を終えて、再点検をしながらゆっくりと下る。この電気牧柵も区画を広くするため、遠くの牧区から不要な支柱やアルミ線を持って来て張り直した。翌春、雪が下方へ移動するにつれその重みで何本もの支柱を駄目にしたのを見て、それ以後は先述した手のかかる冬対策を考え、始めたというわけだ。なお、アルミ線を上下一緒にするのは鹿対策である。
過ぎた日のそんなことを思い出しながら色付いた周囲の景色を眺めていると、自然と湧いてくる感傷のようなものについ淫してしまう。自然の終章の美しさと意識が一緒になって熟れていくからだが、その深さ、味わいをどんな言葉で、どれほど褒め称えてみても意は尽くせない。
毎年同じことを呟くが、誰かが言った。日本人の美学の特徴は頂点ではなく、それを過ぎた衰退の始まる中にあるのだと。確かに今はそういう時季であり、年齢でもある。
やはり、霧が薄らいできた。美しい。いい秋の中で、きょうは草刈りに精を出そう。
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本日はこの辺で。