入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’23年「冬」(30)

2023年12月13日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 寒空に救急車の鋭い音が反響するように聞こえてくる。カーテンを閉ざしたままだから外の様子は分からないが、天気は良さそうだ。
 やはり雲一つない青い冬の空が拡がっていて、わずかながら笹を慣らす風が日向ぼこを長続きさせてくれなかった。再び家の中に戻り炬燵に入り、何もない一日を、お客さんのように迎えることにした。今朝は例の柿の木の小枝に、2羽のムクドリが来ている。

 昨日は小雨の降る重い一日で、本当は何もないとは到底言い難い幾日かがその前にも過ぎていった。しかしそれは措いて、敢えて何もないと嘘をつく。そして、詮無く放心している。それしかできることは何もないから、そういう意味では「何もない一日」と言い、それを繰り返すことしかできないでいる。
 誰かが言ったように、こうやって、来る日も来る日も世間のできごとを遠くに感じ、「鈍痛で耐えていれば」、時間は過ぎていくのは分かる。取り返しのつかないこともそこに置いたまま、容赦なく。
 穏やかな晩年とは、そういうことなのだろうか。物の分かったふりをして、小賢しく振る舞い、それでいて、小石のような小事に躓いただけで大騒ぎする人もいた。

 例えばあの人は晩年、もういい歳だったのに少しでも長生きをしようとして禁煙を決意した。ところがその苦しさに耐えれず癇癪ばかり起こして、周囲を困らせたと聞く。かと思えば、重篤な老人性鬱病に罹った人もいた。
 演技は上手にできても、小心は隠せない。それよりか、妻に先立たれ、記者会見で涙を流しながら「最後まで夫婦生活がありました」と叫ぶように言った、あの老映画監督、新藤兼人にこそ共感し、敬意を表したい。

 脱線か、脱輪か、これ以上この列車は進みそうにない。本日はこの辺で。

 

 


 
 
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