■当会では、八ッ場ダム問題について、市民オンブズマン群馬と連携して、取り組んでおりますが、既にご報告したように、平成21年6月26日の前橋地方裁判所(民事第2部合議係)平成16年(行ウ)第43号公金支出差止等請求住民訴訟事件の、原告住民側敗訴判決を受けて、同日付で、東京地検に対して、刑事確定訴訟記録法第4条による刑事訴訟法第53条第1項に定める保管記録の閲覧を申請していました。実際には、平成21年7月3日に、東京地検に申請書を持参して、直接記録担当に手渡して、保管記録をぜひ閲覧させて欲しいと、強く要請していました。
ところが、既に3ヶ月を経過したにも関わらず、東京地検からはまだ何の回答もありません。そこで、10月7日付けで、次の督促状を提出することにしました。
**********
平成21年10月7日
〒100-8903東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
中央合同庁舎第6号館A棟・B棟
東京地方検察庁 記録担当 御中
(TEL 03-3592-5611)
〒379-0114群馬県安中市野殿980
市民オンブズマン群馬 代表 小川 賢
八ッ場ダム工事に係る刑事事件の保管記録閲覧の申請について(再度のお願い)
平素より、社会正義の公正な具現化に向けて、たゆまぬご尽力を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、我々、市民オンブズマン群馬では、八ッ場ダム住民訴訟(前橋地方裁判所 民事第2部合議係 平成16年(行ウ)第43号公金支出差止等請求住民訴訟事件)の群馬原告団事務局として、八ッ場ダム工事にかかる公金の無駄遣いについて追及をしております。
このことに関しまして、本年6月26日付けで、当会の鈴木庸・事務局長名で、添付のとおり、下記の事件について、刑事確定訴訟記録法第4条による刑事訴訟法第53条第1項に定める保管記録の閲覧申請のお願い状を、代表である弊員が本年7月3日に直接御庁に持参して、記録ご担当者にお渡ししましたが、現時点に至るまで、まだ申請に対するご回答のご判断をいただいておりません。
当該刑事事件の判決日は3年前の10月25日ですので、もうすぐ3年が経過します。ぜひ、保管記録の閲覧期限が切れる前に、ご判断いただきたく、よろしくお願い申し上げます。
記
【事件名】2006年10月25日判決の次の刑事事件。記載内容は翌日の上毛新聞から引用。
「八ッ場ダム元課長に有罪 国交省事務所汚職で判決 東京地裁」
国土交通省八ッ場ダム工事事務所(長野原町)など発注の測量業務をめぐり、受注側から借金の形で710万円のわいろを受け取ったとして収賄罪に問われた同事務所元用地第一課長、斉藤烈被告(44)=懲戒免職=に対し、東京地裁は25日、懲役2年6月、執行猶予4年、追徴金710万円(求刑懲役2年6月、追徴金710万円)の判決を言い渡した。
川本青厳裁判長は「無利息、無担保で金を借りた見返りに指名競争入札の内部資料を繰り返し提供し、連日のように飲み歩いた。動機や経緯に酌量の余地はない。刑事責任は重いが、事実を認め、反省している」と判決理由で述べた。
判決などによると、斉藤被告は2004年11月から今年4月にかけ、同事務所が発注した測量業務の設計書や仕様書のコピーを郵送した見返りなどとして協立測量(東京)の阿部善宏元専務(47)=有罪確定=から計710万円を借金した。 以上
添付:平成21年6月26日付の当会から御庁あてお願いの書面
**********
■ここでいう刑事事件は、国交省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所に勤務していた用地第一課長だった斉藤烈(44)が、同事務所が発注する用地調査業務などをめぐり、便宜を図った見返りに無利子、無担保で、業者から710万円を借りていた収賄事件のことで、当会は「斉藤烈事件」と呼んでいます。
この事件で、警視庁捜査二課は平成18年7月26日に、収賄容疑で千葉県流山市中野久木、同事務所前用地第一課長(当時国交省首都国道事務所用地第二課長)の斉藤烈を逮捕し、八ッ場ダム工事事務所などを家宅捜査しました。
■一方、贈賄容疑で逮捕起訴されたのは協立測量㈱(東京杉並区上荻1-15-1)元専務で、東京都練馬区に住む阿部善宏(46)=別の収賄罪でも起訴=でした。
警視庁捜査二課は、斉藤烈が関東地方整備局内の入札予定価格を算出できる内部資料などを入手できる立場にいたことから、阿部善宏がこの資料を受け取り、入札に利用したとみて参加した入札の特定をしました。
同課の調べによると、斉藤容疑者は八ッ場ダム工事事務所用地第一課長だった平成16年11月から平成18年3月にかけ、協立測量に便宜を図った見返りとして、阿部善宏から数回にわたり無利子、無担保で710万円を借りており、容疑を認めました。
■ 斉藤烈は平成3年から阿部善宏と面識があり、平成14年ごろから融資を受けていました。それまでに2千数百万円を借りていましたが、返済したのはわずかで、残りは飲食費や借金返済に充てていました。
この事件で、当時、関東地方整備局長だった門松武は、「職員が収賄容疑で逮捕されたことは、行政の信頼を裏切るもので極めて遺憾。厳正かつ適正に対応するとともに、このようなことが二度と起こらないよう再発防止に努めたい」などと、取材記者に白々しく語っていました。
■また、この事件の発覚で、地元の「ダムの町」の長野原町では動揺が走り、「交渉に影響ができるではないか」と懸念の声が広がりました。なぜなら、警視庁に収賄容疑で逮捕された斉藤烈は平成18年3月まで2年間、八ッ場ダム建設に伴う長野原町の水没地区住民との交渉を担当していたからです。地元関係者は「あのまじめな人がなぜ」と驚く一方、「交渉に影響が出る」と今後を懸念する声も当時、上がったと報道されました。
地元関係者の話を総合すると、斉藤烈が課長を務めていた八ッ場ダム工事事務所用地第一課は、水没五地区のうち長野原、林、横壁の三地区の代替地交渉などを行っていました。当然、萩原昭朗とも接触があったはずです。
■当時の報道によると、公私ともに接触があった地元の男性は「代替地の地主との話し合いに奔走していた。住民ですら業者からの接待の申し出があるほど。課長ならなおさらだろうが、贈収賄とは夢にも思わなかった」と驚いて見せました。勤務態度や風ぼうなどから、「堅物」のイメージが定着していたということでした。
斉藤烈は同事務所勤務時代、町内の寮で単身生活をしていました。長野原町役場関係者は「派手には見えなかった。ここで一人暮らしでは、お金の使いようがない」と話していました。
■事件の発覚当時、マスコミの取材を受けた八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長は「今でもダムを造ることに批判している人もあり、打撃が大きい」とショックを受けた様子だと報じられました。
同町の高山欣也町長は「大変心外で、今後の交渉がやりにくくなるだろう。一期分譲者の取得面積、農地などの交渉が控えていて重要な時。こんなことは絶対にあってはならない」と語りました。
■国交省関東地方整備局は、「贈賄側とされる阿部善宏が専務を務めていた協立測量は平成16年4月から平成18年4月末までに、同局発注の業務27件を指名競争入札で発注し、八ッ場ダム工事事務所の業務の落札はなかった」などと、事件への関与を否定しましたが、この時期は、ちょうど萩原昭朗の丸岩会が真っ盛りの盛況だったころで、萩原昭朗の手下同然だった八ッ場ダム工事事務所長の安田吾郎が、赴任していた時期でもありました。斉藤烈は、まさに安田吾郎所長の手足となって、用地買収の責任担当者として、萩原昭朗委員長と関係していたに違いありません。
警視庁は八ッ場ダム工事事務所の指名競争入札への、協立測量の参加状況についても調べをするめる、として、警視庁は平成18年7月5日、長野原町与喜屋の八ッ場ダム工事事務所を約6時間にわたり家宅捜査し、捜査員8人が段ボール箱3箱分の資料を押収したのでした。当会が、このダンボール3箱の中身に、貴重な情報が詰まっており、それが、刑事記録閲覧を通じて、内容が明らかになる事を期待しています。
■さて、賄賂を払った、協立測量㈱の指名停止期間は、結局、平成18年5月26日~平成19年5月25日(12ヶ月)となり、指名停止をした地方整備局は、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州に及びました。
その後、起訴状では、斉藤烈は、関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所用地第一課長だった平成16年11月から平成17年10月と、首都国道事務所に移動後の平成18年3月、協立測量の阿部に業務の予定価格を算出するのに有利になる内部資料などを渡し、その見返りに、数回にわたり計710万円を無利息、無担保で借り受けた、とされました。
■このあと、斉藤烈は懲戒免職となり、刑事裁判で、東京地裁は平成18年10月25日に、懲役2年6月、執行猶予4年、追徴金710万円(求刑懲役2年6月、追徴金710万円)の判決を言い渡しました。
判決で、川本青厳裁判長は「無利息、無担保で金を借りた見返りに指名競争入札の内部資料を繰り返し提供し、連日のように飲み歩いた。動機や経緯に酌量の余地はない。刑事責任は重いが、事実を認め、反省している」と判決理由で述べました。
判決などによると、斉藤烈は平成16年11月から平成18年4月にかけ、八ッ場ダム工事事務所が発注した測量業務の設計書や仕様書のコピーを郵送した見返りなどとして協立測量の阿部善宏元専務から計710万円を「借金」したことにされています。
■このように、斉藤烈事件は、いろいろな意味で、八ッ場ダムの用地買収を巡る不正に関わる手口を知るには格好の対象だと、当会では考えており、東京地検に刑事記録の閲覧申請で、市民オンブズマン群馬に協力しているのです。
・なぜ、賄賂をもらったのに、「無利息、無担保で借金」という言い方をしなければならないのか。
・なぜ、賄賂をもらった責任は思いのに、事実を認めて反省しているとして、執行猶予付きの判決が出たのか。
・なぜ、八ッ場ダム工事事務所が発注した測量業務の設計書や仕様書のコピーを、民間の測量会社に郵送できたのか。
・なぜ、賄賂を支払った業者は、八ッ場ダム工事事務所が発注した測量業務の入札に参加していないのに、同事務所の設計書や仕様書のコピーを欲しがったのか。
・賄賂の使い道について、本当に斉藤烈が自分ひとりだけで、使い切ったのか。
こうしたいろいろな疑問を払拭するために、東京地検による刑事記録の閲覧許可が、期限前の今月25日より前に、当方に通知されてくることが期待されます。
【ひらく会情報部】