市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

群馬高専によるアカハラ事件情報開示拒否と、マスコミによる万引き事件「犯行画像」公開批判との比較考察

2017-02-24 22:25:00 | 群馬高専アカハラ問題
■全国で万引き被害店による「犯行画像」の公開が相次いでおります。これに関連して、こうした行為は「人権侵害」の恐れがある、などという意見が一部のマスコミ評論で見受けられます。この問題と、現在当会が東京地裁で係争中の群馬高専を巡るアカデミックハラスメント(通称:アカハラ)事件の関連性を検証してみました。

めがねお~御徒町店のHPのモザイク付「犯行画像」。なお、万引き犯は2月14日に逮捕された。


 群馬高専のアカハラ事件では、学科長による学内でのアカハラ行為に関して被害者である学生らからの告発や一部教職員からの学校長に対するアカハラ被害状況報告と是正措置の申し立て、そしてそれらに対する学校側の対応に関する情報開示を群馬高専に行わせることが、開かれた教育環境の実現のためには必須である、と考えて、当会は情報開示請求を行いました。

 ところが、群馬高専(=国立高専機構)側では、アカハラ情報は個人情報のため開示することか「プライバシーの侵害」にあたるとして、当初は、存否の応答さえ拒否しました。当会が異議申し立てをしたところ、群馬高専から諮問を受けた内閣府の情報公開・個人情報保護審査会が、1年ほどかけて審議をした結果、「不開示処分取り消し」の答申を行いました。しかし群馬高専側は、存否を明らかにしただけで再度不開示処分を行いました。

 アカハラ事件の態様に関する情報の公表について群馬高専側は、公表を拒む理由を「個人のプライバシー保護」の観点からだ、と主張しています。

■他方、万引き事件の態様に関する情報の公表について、マスコミの一部は、万引きの「犯行画像」の公開は「名誉棄損、人権侵害」にあたる、と批判しています。

 万引き事件の場合、被害者は万引きで利益が失われた店舗となりますが、一部のマスコミによる人権侵害を理由とする批判によれば、被害者は「犯行画像」の公開で名誉を棄損される万引き犯人ということになってしまいかねません。これでは本末転倒です。なぜなら万引き犯人は加害者のはずですから。

 ひるがえって、群馬高専内で発生したアカハラの被害者は学生や一部の教職員です。ところが、群馬高専は、当会の情報公開請求に対して、存否を含めて一切の情報を開示しないとした理由は、「個人のプライバシー」だと主張しています。この時の個人のプライバシーというのは、誰のプライバシーなのでしょうか。

 当会は、もし保護されるべきプライバシーがあるとすれば、それはアカハラの被害を受けた学生や一部の教職員だけだと考えています。ところが群馬高専側は、万引き事件における一部のマスコミの論調と同様に、加害者にも「人権」があり、アカハラの事実を公表することは、加害者とされる学科長の「名誉棄損」に当たると考えているようです。

 万引きの場合、被害店の「犯行画像」で犯行の態様がビジュアルに明らかになっているわけですが、万引き被害店の経営者が警察に被害届を出しても、警察では「画像には、被疑者が店から出るところは映っていないので証拠として不十分だ」として、捜査に慎重な姿勢を示すため、なかなか被害届を受理してもらえないようです。

■確かに、万引きの「犯行画像」だけでは、万引き犯が商品をポケットにこっそり入れ込んでいるのが画像で判別できたとしても、万引きの被疑者が万引きした商品をもって店を出たかどうかがわかりません。だから、万引き犯を現行犯で捕まえるには、店を出た直後に直接被疑者を拘束して、商品を保持しているかどうかを確認したうえで、現行犯で逮捕するしかありません。

 万引きをしたかどうかは、商品が対価を支払われずに店の外に持ち出されたかどうか、で判断されるわけです。したがって、万引き防止のために、商品のひとつひとつにICチップを装着して、店の出口にセンサーを設けておく店舗もあるようです。ここでアラームをならせば、結果的に万引き犯として逮捕するに至らなくても、店側としては商品の対価は支払ってもらえるからです。

 万引きの「犯行画像」だけでは、いくら客観的な助教証拠が固まっているとしても、僅かな疑義がある限り、「冤罪」の可能性があるから、「名誉棄損」というそしりを受けかねないので、「犯行画像」の公表はよくない、というのが、一部のマスコミの論拠のようです。

 当会は、むしろ「犯行画像」を公開することで、被疑者から堂々と「名誉棄損」で訴えてもらえばよいというふうに考えています。事実無根による名誉棄損であれば、「犯行画像」を公開した万引き被害店側も納得できるからです。万引きによる被害額に比べれば、むしろ名誉棄損で告訴されて裁判で決着させたほうが、敗訴して名誉棄損による損害賠償金を支払っても、そのほうが合理的だと思うのではないでしょうか。

 いずれにしても、現行犯逮捕ではなく、防犯カメラによる画像だけでは被疑者特定に疑義を生じかねないので、「犯行画像」の公開は、被疑者に対する人権侵害や名誉棄損だというのが一部のマスコミの論調の根拠とみられます。

■これを群馬高専のアカハラ事件と比較してみましょう。

 万引きされた商品は、万引きされたときの状況を語ることができません。しかし、アカハラの被害を受けた学生や一部の教職員らは、実際にアカハラの被害者として一部始終を語ることができます。そうした状況を口頭、あるいは文書のかたちで、学校の管理責任者である学校長に告発あるいは報告を申し立てたのですから、これらに関する情報が公開されたとしても、当該被害者にとっては「人権侵害」でもなければ「名誉棄損」でもないはずです。

 むしろ、アカハラにかかわる告発や報告の申し立て情報を、学校側が隠匿すること自体、被害者の尊厳を損なわせることになるため、これこそ「人権侵害」であり「名誉棄損」であるに違いありません。

 ましては、加害者に関する情報を公開することは、「プライバシー保護」となるはずがなく、ましては「人権侵害」や「名誉棄損」になるはずがありません。

 このように群馬高専には、アカハラ事件の情報開示をためらう理由がまったく見当たりません。一刻も早く、自ら率先してアカハラ事件に関する情報公開を行うことで、開かれた教育環境を、学生や保護者のみならず、将来の受験生やその保護者、中学校や塾の関係者に対して有言実行の姿勢をアピールできるのです。

 アカハラと決別する気概を本当に持っているのか。その踏み絵として、群馬高専には、これまでのアカハラ事件の情報をすべて公表し、責任の所在と再発防止策を明らかにする義務があるのです。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関連情報
**********デイリー新潮2017年2月23日 8時0分
万引き画像公開騒動 めがねお~社長が語る「警察が動かないならやるしかない」
〈WANTED〉〈あなたです!! 徹底的に追いかけます!!覚悟してください!!〉
 上野近辺に店舗を構える眼鏡小売店「めがねお~」。その御徒町店のHPに物騒な言葉がアップされたのは、2月7日のことだった。
 遡るその3日前、店は万引きの被害に遭遇。激怒した社長が、防犯カメラに映った“犯人”のモザイク付画像をアップし、3月1日までに返却か弁償をしなければ、モザイクも外す、と宣言したのだ。
■「めがねお~」社長が語る
 この言動、すぐにマスコミに報じられ、物議を醸すことになったのは周知の通り。まずは騒動そのものを、渦中のご本人に振り返ってもらおう。
「店長から“緊急です”と連絡があったのは、2月4日の夕方6時前でした」

防犯カメラの映像を公開した「めがねお~御徒町店」
 と述べるのは、社長の張谷満氏(59)。PC量販店の営業本部長を経て、約20年前に同社を設立した。従業員は10名程度、年間売り上げは1億から1億5000万円の規模である。
 社長が続ける。
「聞くと、俳優の哀川翔さんプロデュースの眼鏡『SAMURAI SHO』が7本なくなった、おそらく万引きです、と。瞬間、頭に血が上りましたよ。あれは予約制の限定発売で、1本約3万円。計21万円の損失は、うちみたいな会社にとっては洒落になりません。何とか捕まえられないかと思い、防犯カメラの映像を確認したら、やっぱりすぐに不審な男が見つかったのです」
 映像をみると、男は棚の前に立ち、「SAMURAI SHO」を下のトレイに降ろし、死角に消える。そんな動きを2度繰り返し、いつの間にか店を去っていたのだ。2月13日になって逮捕された容疑者と酷似している。
「ちょうどあの男が来る前には眼鏡が7本あり、去った後はない。確信を持ったのは翌日です。以前店に勤めていた従業員が、いま近くの中古ブランド眼鏡の買取店で働いている。彼に訊いたら、その夜、『SAMURAI SHO』をまさに7本売りに来た男がいるというじゃないですか。盗品ぽいから買わなかったと言うので、慌てて男の画像を送ると“こいつです!”と断言するのです」
 間違いない――そう思った社長は、さっそく警察に被害届を出した。が、反応は鈍かったという。
「画像には、男が店から出るところは映っていない。これでは、その男が万引きしたことの証明にはならないのだとか。買取店の話もしたけど、同じでした」
■動かない警察
 犯人の顔までわかる。それでも泣き寝入りしかないのか。眠れぬ夜を過ごした社長が思いついたのがHPでの“指名手配”だったのだ。
「警察が動かないなら、自分がやるしかない、と。店長も責任を感じて謝ってばかりで、店の雰囲気も悪かった。自分が何か手を打つしかないと思ったんです。うちの土日の売り上げは30万~40万円程度。利益はその何分の1かですから、これで数日分の労働がムダになってしまう。また、後でわかったのですが、この男は、万引きの日の昼にも店に来て、下見めいたことをしていました。悪質ですよ」
 とはいえ、もちろん葛藤はあったという。
「弁護士に相談すると、やはりリスクは高い、と。名誉毀損やプライバシー侵害で訴えられる可能性もあるそうです。でも、うちのような小さな会社にとっては、これくらいしないと取り返せない。“自衛”です。警察だって、殺人や強盗などの事件に人員を割くのはよくわかりますし……。それに、顔を出せば“ここでは万引きはできない”という抑止力にも繋がると思いました。それでも結局、決断まで2日半悩みまして……」
 ようやく7日の公開に至ったというワケなのだ。
 記憶に新しいのは、3年前、古書店「まんだらけ」が同じく万引き犯のモザイク写真をアップしたこと。結果、犯人は検挙された。
「それも頭にありました。当時、私も『まんだらけ』はけしからんと思っていましたが、同じことをやられてみるとよくわかる。今回の件は、リスクも、どんな批判でも甘んじて受ける覚悟を持っています」
■インテリは「人権侵害」と
 これが大きく報じられたのは、全国で同様の事態が相次いでいたからだ。
 その直前、千葉市内のファミリーマートや神戸市内のセブンイレブンが、「万引き犯」の顔写真を、こちらは店にモザイク無しで掲示していたことが発覚。
 テレビや新聞は、〈「人権侵害」指摘も〉と見出しを打った朝日新聞はじめ、多くは「店主の気持ちはわかるが、モザイクを取ることには、問題点もある」式の取り上げ方をした。
 曰く、その「問題点」とは、大別すれば3つ。
「万引きという罪とネット公開という罰のバランスが取れていない」「法的に名誉毀損、プライバシー侵害に当たる」「法治国家で禁じられている私刑に相当する」
 これらを弁護士や“識者”などがコメントするのである。こうした点に留意してか、先のコンビニ2店は早々に掲示を取り下げている。
■1日12億円の被害
 ところが、だ。
 NPO法人「全国万引犯罪防止機構」の福井昂事務局長は言う。
「確かに人権侵害になるかもしれない。一方で店主たちがそれほど困っているということをどれだけ理解してもらえているのでしょうか」
 一昨年の全国の万引きの件数は、11万7000件余り。うち検挙されているのは7割で3割は見逃されてしまっている。しかも、検挙率はここ10年で5%低下しているのだ。被害金額は年間4615億円、つまり、1日12・6億円の計算になる。
「店を責めるのはお門違いではないかと思います」
 と言葉を継ぐのは17年間この世界に携わる、万引きGメンの伊東ゆう氏である。
「以前は万引きの主な動機は、“魔が差した”的な“出来心”ゆえのものだった。しかし、最近は、大量、集団、高額、換金目的といった、シノギ的なものが目立ち、悪質さが増しています」
「めがねお~」の“犯人”も犯行の数時間後にさっそく換金を図っていたのは先に記した通り。
「こうした中で、被害者は苦しみ続けている。大型のチェーン店などでは、毎週のように大量万引きが起きていますが、警察もなかなか取り合ってくれない。私が関わった店で酷いところでは、ピーク時で売り上げの10%が持って行かれていたなんてところもありました。その責任は店長に押し付けられますからね。万引き犯を捕まえた時、殴りかかる店長もいましたし、そうでなくても大抵は“ぶっ殺してやる”という目をして睨んでいるものですよ」
 実際、小売店に聞いてみても、
「万引きはイタチごっこ。防犯カメラを付けても死角は生まれますしそれをチェックする時間も膨大にかかるのです。月に2万~3万円はやられますが、コストとして諦めていますよ」(都内のコンビニ店主)
 と言うのは随分マシな方で、より利敵率が低い書店に至っては、
「少年ジャンプ1冊盗まれると、50冊も売らないとカバーできません。うちの店は万引きで赤字になっていると言ってもおかしくない。他も同じで、書店店主の集まりでは、いつも万引きの苦労ばかり話題になっていますよ」(中部地方の書店店主)
 と嘆くのである。
「公開なんて当たり前。むしろ甘いくらいで、経営者の当然の権利ですよ」
 と断じるのは、福島県はいわき市在住の芹沢道雄氏。この芹沢氏、かつて同市で「セリザワ書店」を経営し、四半世紀前、万引きに耐え兼ね、防犯カメラで撮影した画像をビデオにして売ることを宣言。魏路を巻き起こした、言わば、本件の“パイオニア”的存在である。
 芹沢氏は言う。
「何せ、被害が酷くてね。知り合いの本屋の奥さんはノイローゼになってしまったくらい。結局、売るのはやめたけど、効果はあって、、万引きはゼロになったばかりか、地域でも少年犯罪が減ったと警察に褒められたくらいです。あの時は“火をつけてやるぞ!”なんて電話もあったものだけど、逆に“よくやってくれた”という励ましも多かった。人権なんて言っているのは、自分が関係ないから。自分が被害に遭っていたらとてもそんなこと言えるはずがないよ」
 当事者にとっては、まさに生存権の問題。「加害者の人権」なんて言われても、寝言にしか聞こえないことは容易に想像しうるのだ。
■イデオロギーファースト
 そもそも、である。
 モザイクを外したとして、本当に店主は名誉棄損の罪に当たるのだろうか。
「確かにその構成要件は満たしていますが…」
 と述べるのは、元東京高検検事の川口克巳弁護士。
「名誉棄損は、それが専ら公益を図る目的であった場合、免責されます。この場合、21万円という多額の被害からの回復を図るのは、社会秩序を守ることの一環として捉えることも出来る。公益性があると解釈する余地はあるのです」
 仮に公益性が認められなかったとしても、被害者感情を考えれば、あえて「処罰」するほどの違法性があるかは疑問だというのだ。
「そもそも、今回のケースを『万引き』とする報道の仕方が気にかかる。態様、金額から見て、進入窃盗タイプの重大犯罪です」(同)
 評論家の呉智英氏も言う。
「『自力救済はダメ』『国家に委ねるべし』というのは、法律論としてはその通り。近代国家は国民から処罰権を召し上げていますからね。でも逆に言えば、それも『法治主義』なるひとつのイデオロギーに過ぎません。一方で万引きの被害者が救済されないという現実がある。それを補おうとする店主の自衛行為を『私刑』と批判する人は、イデオロギーを守ることが最優先。現実に盲目な余り、目の前の現象がその矛盾を衝いていることに気が付かないのです。まさに『イデオロギーファースト』で、被害者のことなど眼中にはないのです」
 いかがだろうか。
 冒頭の「めがねお~」張谷社長は今でも葛藤の中にいるという。
「公開の後、電話が店に殺到しています。“バカバカバカ!”と言って切られたり、“売名行為だろ。潰れてしまえ!”との電話もある。信念を持ってやったことですが、店や従業員、取引先に迷惑が掛かるのではないか、との不安に苛まれます。毎日さまざまな意見を聞いては励まされたり、へこんだり、一喜一憂していますよ。今も悩みつつ、犯人が一日も早く弁償してくれるのを待っているのです」
 こうして自問自答する姿を見るに、安全地帯から「人権侵害」とのたまうお歴々と比して、どちらの主張により説得力があるのかは明らか。そんなに人権が大事なら、率先して、出演料の一部でも被害店主に寄付してあげてはいかがだろうか。

特集「インテリが人権侵害とのたまう『万引き画像』公開」より
「週刊新潮」2017年2月23日号 掲載
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