市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

これでいいのか群馬県環境行政…何が何でも住民意見を東邦亜鉛に伝えようとしない環境リサイクル課

2013-04-23 23:50:00 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題
■4月22日は世界のアースデイでした。宇宙船・地球号に乗り合わせた我々は、環境保全の支援から社会経済を考えなければならない時代にいます。ところが、そうした時代の流れに逆らっているのが、本来、県民の生活環境を優先しなければならない群馬県の環境行政の実態です。東邦亜鉛が昨年末に使用許可を得た自社用のサンパイ処分場の設置手続を巡り、余りにも理不尽な群馬県の環境行政の本質をとくとご覧ください。


 東邦亜鉛が稼働中の安中・小名浜・契島の3製錬所は、平成17年に改正された鉱山保安法により長崎県対馬にある対州鉱山所属の山元製錬所から独立製錬所(海外鉱、スクラップ等を原料とし、掘採場を持たない製錬所)に移行することになりました。その経過措置の期間中を利用して、東邦亜鉛は安中製錬所の構内に、平成19年4月、旧鉱山保安法に基づき経済産業省に残土置場と称して計画届出をして、平成20年2月に造成工事を完了していました。

 ところが東邦亜鉛は、当該残土置場が完成したあと、鉱山保安法改正の経過措置が終了し、東邦亜鉛安中製錬所が独立製錬所に移行するタイミングを見計らって、今度はそれをサンパイ場として看板を架け替えようと画策し、群馬県も、自ら定める事前協議を省略することを内諾したのでした。

 そして両者のシナリオに基づき、平成22年12月18日に形式だけの地元説明会を開催し、平成23年4月26日に東邦亜鉛が群馬県知事宛にサンパイ場設置許可申請を行い、平成23年夏から秋にかけて東邦亜鉛が㈱環境技研に委託して「地域の生活環境への影響調査」を実施し、平成23年11月に東邦亜鉛が県庁リサイクル課に生活環境影響調査報告書を提出したのでした。

 その結果、地元住民らによる意見書の内容が全く反映されないまま、平成24年6月8日付で群馬県知事が東邦亜鉛に、埋立面積2,083㎡、埋立容量12,747㎥のサンパイ最終処分場設置許可証を交付しました。ここまで来れば、あとは簡単です。

 その後、東邦亜鉛は平成24年10月24日付けでサンパイ場に係る使用前検査申請を県に提出し、同年11月15日に西部環境森林事務所の松本清志係長と松本浩之主幹が使用前検査を行い、同年11月26日に「サンパイ場が廃棄物処理法第15条第2項の申請書に記載した設置に関する計画に適合している」として、群馬県は東邦亜鉛に対してサンパイ場施設の適合通知を出し、東邦亜鉛は首尾よく、事前協議を経ずにサンパイ場を手に入れたのでした。

■驚くべきことに、群馬県は、通産省の担当部署である関東東北産業保安監督部長と同部鉱害防止課長の名前で出された2通の書状にもとづき、東邦亜鉛のサンパイ場は「鉱山保安法下において設置された本件施設の工事計画届と国の検査結果が送られてきたのと、鉱山保安法の技術基準に適合するよう設置されたもので鉱害防止上も問題ないと、国のお墨付きが出ている。だから一般法に移行後、群馬県において廃棄物処理法に基づく指導監督を行うのだ」と判断し、その過程で“群馬県が定めた事前協議の規程を省略する”という暴挙を行なったのです。

 西部環境森林事務所の縦覧窓口担当者いわく「東邦亜鉛のサンパイ場の事前協議省略を判断したのは県庁リサイクル課だ」とし、県庁リサイクル課の担当者は「事前協議の判断の根拠となったのは国から鉱山保安法できちんと検査済みとの通知があったため、事前協議省略を決めた。その根拠は、東邦亜鉛のサンパイ場は、国又は地方公共団体が廃棄物処理施設の設置等を行う場合に順ずるものだとして、群馬県知事が認めたからだ」というのです。

 このように、事前協議を省略されたまま、廃棄物処理法に定めるサンパイ場が出きてしまうことに危機感を持った地元住民らは、生活環境保全上の観点生活環境上の観点から平成24年2月に意見書を群馬県に提出しました。当会関係者が提出した意見書は次を参照ください。
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/730.html

 この時、地元の北野殿(岩野谷4区)の区長、区長代理ら幹部もこの問題に重大な関心を示し、縦覧中のサンパイ場設置計画書を閲覧して、区長名で区としての意見書を県に提出していました。

 ところが、こうした住民の意見書が全く反映された形跡が無い為、平成25年4月6日に東邦亜鉛安中製錬所において第22回工場視察会が開催された機会に、住民からの意見書の扱いについて質問したら、東邦亜鉛側は「そういう文書は県から受け取っていない」と答えました。そのため、4月8日に群馬県の廃棄物・リサイクル課を訪れて、同課産業廃棄物係の松本係長に事実関係を確認したところ、「県から東邦亜鉛に住民意見書を送っていない」ことが明らかになりました。

■こうして、住民意見書をどのように群馬県が握りつぶしたのか、住民意見書を読んだ群馬県のサンパイ委員会はどのような協議をし、その結果、どのような情報が東邦亜鉛に伝わったのか、あるいは伝わらなかったのか、を検証する必要を痛感した当会は、平成25年4月8日に、その場で、県知事(廃棄物・リサイクル課)宛に、次の内容の公文書開示請求を行いました。

<開示請求した公文書の内容又は件名>
 ・平成22年度、23年度、24年度 産業廃棄物処理専門委員会のメンバーの氏名・職業について
 ・東邦亜鉛安中精練所の産業廃棄物最終処分場の設置許可申請に関してなされた協議の内容が判る一切の情報

 この結果、平成25年4月16日付で廃リ第791-1号の公文書部分開示決定通知書が郵送されてきて、4月23日に環境森林部廃棄物・リサイクル課企画指導係の松本係長と滝沢係員(電話;027-226-2833内線2852)立会のもとに、次の内容の資料が部分開示されました。

**********【開示資料】
■群馬県廃棄物処理施設専門委員会(平成23年度・第2回)議事録
日時:平成24年2月16日(木)13:00~
場所:群馬県庁 131会議室
出席委員:黒田会長、磯部委員、林委員、永井委員、阿部委員、田島委員
○東邦亜鉛株式会社の産業廃棄物処理施設設置許可申請書について
【申請書により概要説明】
(黒田会長):鉱山保安法と一般法である廃棄物処理法で処分場の構造に違いはないか。また、処分できる品目は変わったのか。
(事務局):今回の施設の構造については、申請書が出てきた時に審査をし、廃棄物処理法上の安定型最終処分場の構造基準を満たしていることを確認しました。処理できる品目については、堆積場として鉱石などを置くことは出来なくなるが、安定型最終処分場として埋め立てできる安定5品目のみと明確になりました。 ←【当会注】事前協議を端折ったくせに、よくもまあこれほどまでに東邦亜鉛擁護の説明ができるものか、と呆れる。
(磯部委員):自分の会社の中に処分場をつくるのは法律的に可能なのか。
(事務局):法では自己処理施設として最終処分場を持つことは認められており、県内にもいくつか設置されている事例があります。
(磯部委員):どんなものを埋めたか、履歴などはわかるのか。
(事務局):許可を受けた者は帳簿や維持管理状況などを記録しなければならないこととなっています。必要に応じて公表も出来ます。それは最終処分場を処分業として持っている場合でも、自己処理施設として持っている場合でも変わりません。 ←【当会注】この記録や公表を担保するために地元区長は意見書で、災害防止協定を東邦亜鉛と地元との間で締結する必要性があると述べたはず。
【申請者入室】
(黒田会長):粉じんについて強風の影響が少ないとは言えないのではないか。山の頂上にあり、風の強い時に風下に影響が出ることはないのか。
(申請者):埋め立てる廃棄物は粒径が大きく、10μm以下のような小さい物が強風により飛ばされることはないと考えています。ただし、覆土に土砂を使うため、強風の時は理立を一時的に止めたり、散水をすることで対応したいと考えています。 ←【当会注】もともと東邦亜鉛安中製錬所は工場から長年大量に放出される重金属まじりの降下煤塵により汚染されており、粉塵まみれにもかかわらず、こうした回答を平気ですること自体、同社の公害企業体質をあらわすものである。自ら率先してPM2.5を含む浮遊粒子状物質の濃度測定を実施し、そのデータを公表する気は無く、思いつきだけで答えている。それを鵜呑みにする行政も東邦亜鉛を甘やかせているため余計増長する。
(阿部委員):環境影響調査書で騒音、振動に合成式で算出しているが、現況の事業所内の騒音、振動と埋立作業に伴う予測の騒音、振動と合成すると実際よりも大きくなりすぎるということはないか
(申請者):実測値は稼備後に測らないと正確には出ないが、現時点で考えられる最大値として算出し評価しています。 ←【当会注】稼動後でないとわからないと言っているが、稼動後の記録を公開するとは言っていない。
(阿部委員):5品目のどれが一番多いのか。
(申請者):場内の施設改修など建設に伴った廃棄物が多いと考えられます。覆土用としての土砂については水溶試験等を行い安全を確認して使用します。なお、外部処理できるものは外出しをしています。 ←【当会注】施設改修で出る古い資機材の廃棄物こそ、有害物質を多量に含む可能性がある。具体的に説明しないところを見ると、説明したくないのだろう。
(永井委員):環境影響評価書のP30で夕方から夜間にかけて虫の鳴き声の影響を受けたものとあるがどう確認しているか
(申請者):騒音については録音をしており、それを聞くかぎりでは虫の鳴き声しか聞こえないような状況でありました。
(永井委員):住民から石綿を気にしている意見が出ている,石綿(アスベスト)という言葉を聞いて拒否反応が出るということもあるが、石綿が微量で処分が認められている石綿含有廃棄物であっても、企業として条件を厳しくしてもいいのではないか。そういった対応は可能か。
(申請者):今回住民の方から出された意見の石綿含有廃棄物については当社の説明不足があったと考えています。石綿については平成7年には吹きつけなどに使用することは止め、一部ガスケットなど代替え品が出るまでの間使用することもあったが、平成17年には在庫も含めてすべて使用することをやめています。石綿含有物についてはスレート材などに使われているがこれを廃棄物処理する場合は社内基準に則り、手剥離をして飛散しないように梱包しマニフェストを書き、基本的には外部処理しています。ただし、小さい破片などは袋等に入れて分別保管する場合もあるので、処理できるのであれば自社の処分場に処分したいと考えています。ISOの基準に沿って処分し、そういった基準を公表する必要もあると考えています。 ←【当会注】結局、当会の指摘で、石綿含有物質は対象廃棄物から除外したなどと東邦亜鉛は言っているが、これもきちんと事実関係を確認しておく必要がある。
(永井委員):住民からの意見で他の場所からの放射性廃棄物が入って来ることを懸念する意見が出されている。
(申請者):他から入ることは、まったくはないと断言できます。これまでもないし、これからも入れる考えはありません。 ←【当会注】地元は原発汚染地にちかい小名浜製錬所のガレキを、鉱石運搬か社に紛れ込ませて持ち込むのではないかと不安に思っている。区長名で災害防止協定に必要性を意見書で出したのもそうした地元住民の不安によるもの。
(永井委員):そういったことは公表した方がよいのでは。
(申請者):はい。 ←【当会注】はい、と言うのであれば、災害防止協定を地元と締結することで誠意を見せるべきだ。
(林委員):維持管理に関する計画書の中で、立会で展開検査を行った後、運搬するとあるが具体的にはどういうことか。
(申請者):廃棄物が出るのは場内で大きな工事がある場合ですが、社内でセーフティーアセスメント委員会というものがあり、あらかじめ工事の計画や廃棄物の処理方法などを検討します。計画に則り集配の専門の社員に廃棄物を外出しするものと埋め立てるものに分けさせています。そこで展開検査に相当する確認作業が行われるとご認識いただきたい。外から持ち込まれることはありません。 ←【当会注】セーフティーアセスメント委員会というのは社員で構成するだけのものであるだろうから、災害防止協定に基づき地元区長もメンバーに加えるべきだ。
(林委員):別紙5で、「廃棄物の付着物は埋立処分前に指定洗浄場で洗浄等の対策を行う」とあるが具体的にどうするのか。
(申請者):自社の行程でどんな物が付着するか、会社では把握をしている。付着物があると想定される物は、洗浄場に持って行き、洗浄した水の重金属濃度やPHなどを確認し、安全を確認してから運び出すこととする。 ←【当会注】公害企業としてこれまでウソを突き通してきたのだから、これもセーフティーアセスメント委員会に地元区長を交えて監視体制を整備する必要がある。
(磯部委員):生活環境影響評価書の水質の中で、現況の碓氷川の大腸菌が超過している。その理由は。
(申請者):碓氷川は必ずと言っていいほど大腸菌の濃度が高くなっています。上流の何かが影響していると考えられるが、原因については把握していません。工場の排水については工場内の処理施設があるため、問題ない値です。 ←【当会注】碓氷川の水質を東邦亜鉛がどの程度まで自分で把握して、こういう発言をしているのか極めて疑問。上流の誰かが、と無責任な発言からそのことが伺える。
(林委員):安定型処分場であるが、管理型と同じ遮水シートが施工されているので、せっかくのシートを損傷しないように注意しながら埋立を実施していただきたい。
(申請者):了解しました。 ←【当会注】鉱山保安法の新規残土置場で造成したが、本当の目的は重金属等有害物質含有の廃棄物の投棄なので、せめて遮水シートでも設置しておかねば、と思っているくせに、安定型だからそもそも安全という態度が信用できない。
(永井委員):埋立作業には低騒音・低振動型の重機を使うことを提案したい。
(申請者):そのように考えています。
(黒田会長):地下水位の年間変動はどうか
(申請者):調査では、雨量に関係なく水位が安定しています。
(黒田会長):N値が小さいようだが不等沈下することはないか
(申請者):過去に場内の他の箇所ではこれまで不等沈下が起きていないため、問題はないと考えています。 ←【当会注】これまでの場内の他の箇所の残土置場=処分場と異なり、今回は製錬所の一番上に設置したのに、問題は無い、の一点張り。まともに回答する気がないからこういう言い方になるのでは。
(永井委員):碓氷川の現況の全亜鉛、大腸菌が多いが対処することはできるのか。
(申請者):会社としては、工場排水について、環境基準以下の排出に気を付けるという対応です。 ←【当会注】工場排水にし尿関連の処理水がどのように含まれているのか、また、そのBOD濃度や大腸菌数の状況がどうなのか、データを示して説明すべきと考えるが、単に“気を付ける”という答弁でお茶を濁しているのでは。
【申請者退室】
意見のまとめ
(黒田会長):いろいろな意見がでたが、住民意見からは石綿含有廃棄物の飛散について心配する意見もあり、何らかの付帯意見としたい。また、不等沈下については、申請者の答弁でよいか。
(阿部委員):不等沈下については、ローム層で土壌を乱さなければおそらく大丈夫であると考えられる。
【委員会意見(素案)】
・施設の維持管理及び受け入れる廃棄物の性状確認について万全を期す方策を検討すること。
・石綿含有廃棄物は積極的に外部委託処理を進め、場内の処分場に処分する場合においては、事前に性状、状態を確認し、飛散の恐れがないように適正に埋め立てること。


■平成24~26年の委員名簿
群馬県廃棄物処理施設専門委員会委員名簿
 任期:平成24年11月11日~平成26年11月10日・年齢:平成24年11月11日時点
 部門/氏名/現職/専攻・資格・所属学部等/住所(自宅)/備考
1/水質地下水/磯部明彦(いそべ・あきひこ)/■■■■■(■■)/県立女子大学非常勤講師/薬学/■■■■■■■■■■■/再任・副会長
2/廃棄物処理/黒田正和(くろだ・まさお)/■■■■■(■■)/国立大学法人 群馬大学名誉教授・(株)ヤマト 技術顧問/都市工学(衛生工学)/■■■■■■■■■■■/再任・会長
3/廃棄物処理/田島貞子(たじま・さだこ)/■■■■■(■■)/高崎健康福祉大学短期大学部 短期大学部長(元 県保健福祉部技監)/医師(公衆衛生)/■■■■■■■■■■■/再任
4/大気質/林治稔(はやし・はるとし)/■■■■■(■■)/学校法人 若葉幼稚園理事長(元 県環境保全課長)/化学/■■■■■■■■■■■/再任
5/騒音振動/永井健一(ながい・けんいち)/■■■■■(■■)/国立大学法人 群馬大学名誉教授・国立大学法人 群馬大学非常勤講師/機械システム工学/■■■■■■■■■■■/再任
5/そのた(地盤)/阿部博(あべ・ひろし)/■■■■■(■■)/独立行政法人 国立高等専門学校機構 群馬工業高等専門学校環境都市工学科特任教授/土質工学/■■■■■■■■■■■/再任
〔事務局 環境森林部 廃棄物・リサイクル課 TEL:027-226-2852(企画指導係) FAX:027-223-7292〕

■平成22~24年の委員名簿
群馬県廃棄物処理施設専門委員会委員名簿
 任期:平成22年11月11日~平成24年11月10日・年齢:平成22年11月11日時点
 部門/氏名/現職/専攻・資格・所属学部等/住所(自宅)/備考
1/水質地下水/磯部明彦(いそべ・あきひこ)/■■■■■(■■)/県立女子大学非常勤講師/薬学/■■■■■■■■■■■/再任・副会長
2/廃棄物処理/黒田正和(くろだ・まさお)/■■■■■(■■)/国立大学法人 群馬大学名誉教授・(株)ヤマト 技術顧問/都市工学(衛生工学)/■■■■■■■■■■■/再任・会長
3/廃棄物処理/田島貞子(たじま・さだこ)/■■■■■(■■)/高崎健康福祉大学短期大学部 短期大学部長(元 県保健福祉部技監)/医師(公衆衛生)/■■■■■■■■■■■/再任
4/大気質/林治稔(はやし・はるとし)/■■■■■(■■)/学校法人 若葉幼稚園理事長(元 県環境保全課長)/化学/■■■■■■■■■■■/再任
5/騒音振動/永井健一(ながい・けんいち)/■■■■■(■■)/国立大学法人 群馬大学大学院工学研究科教授/機械システム工学/■■■■■■■■■■■/再任
5/そのた(地盤)/阿部博(あべ・ひろし)/■■■■■(■■)/独立行政法人 国立高等専門学校機構 群馬工業高等専門学校環境都市工学科教授/土質工学/■■■■■■■■■■■/再任
〔事務局 環境森林部 廃棄物・リサイクル課 TEL:027-226-2852(企画指導係) FAX:027-223-7292〕

■平成20~22年の委員名簿
群馬県廃棄物処理施設専門委員会委員名簿
 任期:平成20年11月11日~平成22年11月10日・年齢:平成22年11月11日時点
 部門/氏名/現職/専攻・資格・所属学部等/住所(自宅)/備考
1/水質地下水/磯部明彦(いそべ・あきひこ)/■■■■■(■■)/県立女子大学非常勤講師/薬学/■■■■■■■■■■■/再任・副会長
2/廃棄物処理/黒田正和(くろだ・まさお)/■■■■■(■■)/国立大学法人 群馬大学名誉教授・(株)ヤマト 技術顧問/都市工学(衛生工学)/■■■■■■■■■■■/再任・会長
3/廃棄物処理/田島貞子(たじま・さだこ)/■■■■■(■■)/高崎健康福祉大学短期大学部 短期大学部長(元 県保健福祉部技監)/医師(公衆衛生)/■■■■■■■■■■■/再任
4/大気質/林治稔(はやし・はるとし)/■■■■■(■■)/学校法人 若葉幼稚園理事長(元 県環境保全課長)/化学/■■■■■■■■■■■/再任
5/騒音振動/永井健一(ながい・けんいち)/■■■■■(■■)/国立大学法人 群馬大学大学院工学研究科教授/機械システム工学/■■■■■■■■■■■/再任
5/そのた(地盤)/阿部博(あべ・ひろし)/■■■■■(■■)/独立行政法人 国立高等専門学校機構 群馬工業高等専門学校環境都市工学科教授/土質工学/■■■■■■■■■■■/再任
〔事務局 環境森林部 廃棄物・リサイクル課 TEL:027-226-2852(企画指導係) FAX:027-223-7292〕
**********

■上記の委員会議事録を見ると、事務局と東邦亜鉛が同席しているにもかかわらず、参加者氏名等が記載されていません。したがって、申請者である東邦亜鉛の誰が委員会に出席して発言したのか不明です。これでは議事録として不完全です。もしかしたら、わざわざ開示用に作り変えたのではないか、という疑念さえ湧いてきます。

 また、議事録によれば、委員会の黒田会長は、アスベストに関して「何らかの付帯意見としたい」として、【委員会意見(素案)】として「・施設の維持管理及び受け入れる廃棄物の性状確認について万全を期す方策を検討すること。 ・石綿含有廃棄物は積極的に外部委託処理を進め、場内の処分場に処分する場合においては、事前に性状、状態を確認し、飛散の恐れがないように適正に埋め立てること。」の2点を挙げていました。

 ところが、実際に、群馬県知事が、平成24年6月8日付で東邦亜鉛に交付した産業廃棄物処分施設設置許可証では、委員会の上記の意見はどこにも書いて無く、単なる「留意事項」として次の3点しか挙げていません。
1.施設の設置に当っては、各種関連法規を遵守すること
2.計画内容等に変更があった場合には当庁に速やかに連絡し、指示を受けること。
3.施設の使用前検査申請書を提出し、職員の検査を受けること。
※設置許可証は次を参照ください。
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/img/1354734399.jpg


■こうして、地元区長を初め、地元住民の意見書は全て反故にされたことが明らかになりました。そのため、情報開示を受けた直後に、県庁16階の廃棄物・リサイクル課を訪れて、産業廃棄物係の松本係長に面談し、「いまからでもお願いですから、地元住民の意見書を東邦亜鉛に送ってください。東邦亜鉛側もそれを待っていますから」と懇願しました。

 しかし、松本係長は、目を見開いたまま、ポツリと「それはできません」と当会の懇願をあっさりとしりぞけました。

 しつこく理由をきくと、松本係長は「この意見書は、設置許可申請の手続の過程で提出されたものであり、事前協議の過程で提出されたものではないからが」というのです。

 驚きました。群馬県が県民の為に定めた事前協議を勝手な論理で省略したのは、こういう意図があったわけです。

■何度も何度も松本係長には懇願しましたが、結局取り付くシマがありません。こうした場合、県民として、どうしたら県に提出した意見書を東邦亜鉛に伝えてもらえるのでしょうか。県民のことよりも東邦亜鉛と癒着している群馬県の環境行政ですので、泣き寝入りするしかないのでしょうか。

 思いつく方策としては、情報開示で群馬県が受領した地元住民らからの意見書を、情報公開条例で開示請求して、それを地元住民から東邦亜鉛に届けるか、あるいは、もう一度、群馬県廃棄物処理施設専門委員会の場で、東邦亜鉛のサンパイ場の件で、委員会の意見を附帯意見として、環境・リサイクル課の怠慢を糾弾し、同課にきちんと東邦亜鉛に伝えるよう、その際に、住民らの意見書も一緒に東邦亜鉛に送るよう決議してもらうよう、お願いするか、などです。

 今回の顛末からも、東邦亜鉛と行政との長年にわたる癒着が、尋常でないことが痛感できます。

 このように、東邦亜鉛の事業に欠かせないサンパイ場設置では過分な配慮をする行政ですので、反対に、北野殿地区で再度推進の動きのある東邦亜鉛周辺の重金属土壌汚染対策のための公害特別土地改良事業では、東邦亜鉛の事業にとって緊急性が全く無いと考えている同社経営幹部の思惑を受けて、行政側が事業推進のブレーキをかけることを地元住民らは心配しています。既にその兆候があらわれているから、なおさらです。

【ひらく会情報部】

※参考情報
【鉱山保安法第二条第二項ただし書の附属施設の範囲を定める省令】
(平成十二年十二月二十七日通商産業省令第四百七号)
最終改正年月日:平成一五年四月一日経済産業省令第五一号
経済産業省設置法(平成十一年法律第九十九号)の施行に伴い、及び鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第二条第四項の規定に基づき、鉱山保安法第二条第二項但書の附属施設の範囲を定める省令を次のように制定する。
 鉱山保安法第二条第二項ただし書の附属施設とは、次に掲げる施設をいう。
一 病院及び診療所
二 寄宿舎
三 次に掲げる施設
 所属鉱山名/施設名/所在地
・三菱マテリアル株式会社古遠部鉱山/秋田製錬場/秋田県秋田市
・東邦亜鉛株式会社対州鉱山/小名浜製錬場/福島県いわき市
・東邦亜鉛株式会社対州鉱山/安中製錬場/群馬県安中市

・株式会社YAKIN大江山大江山鉱山/大江山製造所/京都府宮津市
・三井金属鉱業株式会社北神岡鉱山/竹原製錬場/広島県竹原市
・東邦亜鉛株式会社対州鉱山/契島製錬場/広島県豊田郡東野町
・三菱マテリアル株式会社生野鉱山/直島製錬場/香川県香川郡直島町
・住友金属鉱山株式会社別子鉱山/四阪島製錬場/愛媛県越智郡宮窪町
・住友金属鉱山株式会社別子鉱山/新居浜電錬工場/愛媛県新居浜市
・住友金属鉱山株式会社別子鉱山/東予製錬場/愛媛県新居浜市及び西条市
・日鉱金属株式会社佐賀関鉱山/佐賀関製錬場/大分県北海部郡佐賀関町

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大勢の参加者で賑わった第3回富岡市国際交流まつりに群馬県台湾総会が参加

2013-04-22 23:58:00 | 国内外からのトピックス
■桜もとっくに咲いて散り、春たけなわで5月連休も間近に迫ったと言うのに、2月下旬に逆戻りしたかのような天候に見舞われた先週末でしたが、平成25年4月21日(日)に、お隣の富岡市の生涯学習センターで第3回富岡市国際交流まつりが開催され、今年も群馬県台湾総会が参加しました。

すっかり雪化粧した周囲の山々と満杯の駐車場。

 周囲の山々は雪化粧をし、浅間山などは真っ白に染まっていて、風もあり非常に寒い日でしたが、幸い、朝まで降っていた雨もあがりました。

 開催スタートは11時でしたが、群馬県台湾総会の会員は8時半には会場入りして、テントの屋台で販売するビーフンや大根もちの下ごしらえをしました。とくにビーフンは前の日から手分けして野菜を切ったり、ビーフンを水でもどしたりして、準備に余念が有りませんでした。

朝早くから下ごしらえをした調理室の黒板。

 幸い、富岡市国際交流公開のスタッフの皆さんにもお手伝いを頂き、11時10分からのフードコートの開始までにすっかり準備が整いました。

■まだ、雨雲がかなり低く垂れこめていた空模様でしたが、次第に西の方から明るくなりました。けれども、気温が低く風も吹いていたため体感温度はかなり寒く感じました。

群馬ちゃん(後ろ姿)も来た。

 屋外でのフードコート会場には、地元のロータリークラブや地域おこしのグループをはじめ、中国、フィリピン、インドネシア、ミクロネシア連邦、台湾、タイ、ボリビア、韓国のテント屋台が並びました。



 ホワイエと呼ばれる屋内会場では、いろいろなジャンルのアーティストによる演奏やコンサートが開かれました。

いろいろなジャンルの音楽演奏や歌唱が披露された。

 ご当地アイドルグループのAKG(AKAGIDAN)の公演では、大勢のファンがステージを囲んでいました。

AKGのステージには黒山の人だかり。

■大ぶりのが2切れ入って100円の大根もちの売れ行きは順調で、1時ごろまでには殆ど売りつくしました。

売れ行き順調の大根もち。日本の皆さんにも知られるようになった証拠。

ホカホカの大根もちを食べてもらおうと奮闘するスタッフら。

 細麺が特徴の台湾の新竹産の材料を使ったビーフンは、最初1パック200円で販売する予定でしたが、中国の出店者が餃子など(しかも材料は冷凍品を解凍したものを使用)、いずれも1パック300円で販売するので、台湾のビーフンが200円だと不公平だ(?)などと言い出したため、やむなく300円にしましたが、内容量も増量しました。

 その結果、中国の屋台では、最後まで売れ残っていましたが、台湾のブースでは逸早くビーフンも完売できました。やはり、来訪者の皆さんの間には、台湾に対する好感度の高さを感じるとることができました。本当にありがとうございます。

■台湾の隣はミクロネシア連邦の大使館が出店していましたが、なぜ太平洋の島嶼国が、日本の内陸にある群馬県富岡市のイベントに参加するのか不思議に思い声をかけてみました。

台湾総会と同じテントで出店したミクロネシア連邦大使館。

 大使館の日本人職員の方の説明によると、20年ほど前からミクロネシア連邦大使館と富岡市との交流が続いており、群馬サファリやセンチュリー21ゴルフ場なども、ミクロネシア連邦に対して機会あるごとに協賛してきているのだそうです。

 筆者もミクロネシア連邦の海事局長が来日した際に、食事を共にしたことがあり、現地の海運事情について、いろいろ話を聞いたことがあります。同国では随分前に日本から船舶4隻の供与を受けて、大事に使ってきましたが、船齢が30年を超えて、代替船の必要が出て来ました。そこに目を付けた中国が2隻の船舶を贈与しましたが、燃費が悪く、乗り心地も悪く、すぐに2隻とも故障してしまいました。にもかかわらず、中国は修理費用までは面倒をみないため、日本政府に対して日本製の船2隻をあらためて援助してもらいたいという海事局長の話でした。

 それから3年ほどして、昨年末に日本政府が2隻の船舶を無償で供与することを決定しました。早ければ来年末には、同国待望の日本製の船がミクロネシアの海を走り始めるはずです。

 現在、台湾と国交を結んでいる太平洋島嶼国家はパラオ、マーシャル諸島、ナウル、ツバル、キリバス、ソロモン諸島の6カ国です。ミクロネシア連邦は残念がら1986年の独立後は中国を承認してしまいました。しかし、中国がいくら援助をしてくれるとはいえ、使い物にならない船を援助されるのでは被援助側としてはたまりません。

■今回の各国の関係者による出店ですが、富岡市国際交流協会の事務局の対応がまずく、群馬県台湾総会でも、寸前まで出典すべきかどうか迷いました。けれども、やはり台湾と日本の関係をさらに強固にすべきだと考えて、今回も参加することになりました。

 しかし昨年まで参加していたタイのグループは、交流協会の事務局の女性担当者との折り合いが付かず、今回は参加を辞退したため、別のグループが急きょ参加することになりました。

急遽ピンチヒッターで出店したタイの屋台。

■それでも、今回は前回の反省点のいくつかを改善し、会場に来ていただいた大勢のお客さんが楽しめるようにいろいろと工夫が見られました。また、裏方で各国の出店のサポートをしていただく交流協会会員のかたがたのために、協会で昼食のサービスを提供していただけるようになりました。

富岡市のマスコット「お富ちゃん」も会場内を散歩。

 ぜひ、次回も台湾のテント屋台にお越しいただき、おいしい台湾料理を召し上がってくださるよう、群馬県台湾総会一同おまちしております。

【群馬県台湾総会西毛支部】

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椿本興業の不祥事とタゴ51億の安中市不祥事に見る真相究明・責任所在・再発防止策の対応の違い

2013-04-21 22:50:00 | 土地開発公社51億円横領事件

■社会経済の潤滑油とも言えるカネを巡っては、官民とも組織内で不正会計や横領などの事件が付きものです。最近、民間で話題となっている事件を列挙すると次のようなものがあります。

2012年11月19日
明治機械、子会社で不適切会計の疑い・第三者委員会を設置して調査へ
 明治機械は11月19日、子会社のラップマスターエスエフティ株式会社(所在地:東京都千代田区神田多町2-2-22 千代田ビル、代表:高橋 豊三郎)で返品されてきた商品を経理に正しく反映することが行われていなかった疑いが生じたことを発表した。同社では、子会社での不適切会計の疑いがでたことを受けて、元最高検察庁公判部長の大鶴基成・弁護士を委員長とする弁護士2名、公認会計士1名から構成された第三者調査委員会を設置することで実態調査に着手する。尚、明治機械では子会社における不適切会計が今期の業績に与える影響は「ない」とした上で子会社で会計処理上の不祥事が発覚したことについては「株主、投資家の皆様をはじめとする関係者の皆様には、多大なるご迷惑とご心配をおかけいたしますことを、深くお詫び申し上げます」と謝罪の弁を述べている。ラップマスターエスエフティは、半導体製造装置などの製造・販売および保守を手掛けている。

2012年12月28日
マツヤ、不適切会計の発覚で調査委員会を設置へ
 JASDAQに上場している長野県を地盤として食品スーパーのマツヤ は12月28日、2012年2月期において、過大な未収入金(仕入割戻)計上を行うといった不適切会計が行われていたことを明らかにした。同社では、今回発覚した不適切会計の実態解明のため、同社の社外監査役と外部の弁護士、公認会計士の3名から構成される調査委員会を組織して調査を進めるとしている。同社では、不適切会計の中身が、不正行為によるものなのか、会計処理上のミスによるものなのかといった具体的な中身については説明は行っていない。

2013年2月18日
OUGホールディングス子会社での不適切会計・大証は監理銘柄(確認中)指定へ
 OUGホールディングス は2月14日、連結子会社の株式会社ショクリューで不適切な会計処理が行われていたことが判ったことを発表した。これにより四半期報告書は法定提出期限の2月14日までに提出できないこととなり、大証は同社を「監理銘柄(確認中)」に指定した。子会社での不適切会計の具体的な中身について同社では「当社の連結子会社である株式会社ショクリューにおいて不適切な会計処理が行われていたことが判明し、当社では、独立役員である社外監査役(公認会計士、弁護士の有資格者)を委員に含む社内調査委員会を平成25年2月5日に設置し、事実関係の調査、再発防止策の検討等に取り組んでおります。これまでの調査で、同社の管理体制の不備に起因する不適切な会計処理により在庫商品の計上額に差異が生じ、利益ベースで55百万円の損失影響額が見込まれることが判明しております」と説明している。

2013年3月18日
椿本興業、約10年前から従業員による不正取引
 椿本興業は3月18日、従業員による不正行為があったことを発表した。現在、内容の詳細、時期及び影響金額を含め調査中であるものの現時点において、同社の当期及び過年度の連結及び個別業績に影響を与える可能性があると判断したもの。実際には3月13 日に、同社の中日本営業本部に所属する従業員本人により、約10 年前から架空売上と架空仕入を伴う不正行為を行っていた旨の自白があったとされている。

2013年4月1日
アイレックス、不適切会計の疑い・調査委員会を組織して調査へ
 システム開発業者のアイレックス は4月1日、売上高の計上について計上基準を逸脱し、適切な会計処理が行われていなかった可能性があることが監査役監査によって指摘されたことを発表した。同社では、実態調査のため親会社グループの社員6名(公認会計士2名を含む)で構成する調査委員会を設置することで実態解明を行う予定としている。

2013年4月11日
大塚商会、子会社社員が架空取引・影響額は約11億円
 大塚商会は4月11日、子会社のネットプランの従業員が架空取引を行っていたことを発表した。同社ではこの架空取引の具体的な中身については、 「見積書、見積明細書、工事完了届等の信憑を偽造して架空取引を捏造し、関係する事業者を欺き、更に注文書や契約書を偽造して、巧妙に取り計らって架空売上及び回収偽造を行ってきたことが調査を進めた結果判明し、本人も架空取引を認めました」と述べている」と説明している。尚、業績への影響額については、2013年第1四半期において、売掛金の回収等に約10億6600万円の影響が及ぶ可能性があるとしている。ただし、通期予想に対する影響はない模様。

■このように、企業不祥事件の場合には、直ちに社内外のメンバーによる調査委員会を立ち上げて真相究明、責任の所在、再発防止策について調査検討するのが通例です。これらの事件のうち、椿本興業の場合を見てみましょう。

 上記のように同社は3月18日に不祥事についてプレス発表しました。

**********
http://www.tsubaki.co.jp/ir/pdf/release/13/13031801.pdf
                    平成25年3月18日
各 位
               会社名 椿本興業株式会社
               代表者名 取締役社長 椿本哲也
               (コード番号 8052 東証・大証第1 部)
               問合せ先 取締役 執行役員 大河原 治
               (TEL. 06-4795-8805 )
          当社従業員による不正行為について
 この度、誠に遺憾ではありますが、当社の中日本営業本部において従業員による不正行為が行われていたことが判明いたしました。投資家の皆様及び市場関係者の皆様には多大なるご迷惑とご心配をお掛けすることになりますことを、ここに深くお詫び申し上げます。
 現在、内容の詳細、時期及び影響金額を含め、真相究明のため、鋭意調査中でありますが、現時点におきまして、当社の当期及び過年度の連結及び個別業績に影響を与える可能性があると判断したため、取り急ぎ下記の通りお知らせいたします。
          記
1. 不正行為の判明した経緯と概要
 平成25 年3月13 日に、当社の中日本営業本部に所属する従業員本人より、約10 年前から架空取引を行っていた旨の自白があり、当社内において直ちに調査を開始いたしました。
 その結果、従業員本人により、架空売上と架空仕入を伴う不正行為が行われていたことが判明いたしました。
2. 今後の対応
 この度判明した不正行為による当期及び過年度の連結及び個別業績への影響額につきましては、鋭意調査中であり、当該影響額につきましては把握出来次第、速やかに開示いたします。
 また、当社が過去に提出いたしました有価証券報告書及び四半期報告書の訂正報告書につきましては、本件調査によりその数値が明らかになった段階で、速やかに近畿財務局に提出する予定であります。また、当期及び過年度の決算短信及び四半期決算短信の訂正につきましても、同様に、調査によりその数値が明らかになった段階で速やかに開示する予定であります。
 なお、社内調査に関する公正中立な第三者による検証及び独自の調査を行うべく、社外調査委員会についても設置を検討しているところであります。
 今回の当社従業員による不正行為につきましては、株主をはじめ投資家の皆様、お取引先の皆様及び市場関係者の皆様には多大なるご迷惑とご心配をお掛けする結果となり、重ねて深くお詫び申し上げます。
 今後は、皆様からの信頼を取り戻すべく、事業活動の健全化に向けた社内業務全般の徹底的な見直しを最重要の施策と位置付け、取り組んでまいります。
以 上
**********

 その1週間後の3月25日に椿本興業が次のプレス発表をしました。

**********
                    平成25 年3 月25 日
各 位
               会社名 椿本興業株式会社
               代表者名 取締役社長 椿本 哲也
               (コード番号 8052 東証・大証第1 部)
               問合せ先 取締役 執行役員 大河原 治
               (TEL. 06-4795-8805 )
          第三者委員会設置に関するお知らせ
 平成25 年3 月18 日に「当社従業員による不正行為について」で公表いたしましたとおり、この度、当社の中日本営業本部において従業員による不正行為が行われていたことが判明したことから、当社では既に社内調査委員会を設置し、調査を開始しておりますが、さらに本日、平成25 年3 月25 日開催の取締役会において、下記の通り第三者委員会を設置することを決議いたしましたので、お知らせいたします。
          記
1. 第三者委員会設置の趣旨
 当社の従業員による不正行為(本件不正行為)が行われていたことの調査に当たり、社内調査委員会の調査に加え、本件不正行為に関する事実の認定、発生原因や責任の所在等の究明、再発防止策に関する提言が必要であると判断し、当社と利害関係を有しない外部の専門家から構成される第三者委員会を設置することといたしました。
2.第三者委員会の目的
(1) 本件不正行為に関する事実の認定、発生原因及び問題点の調査分析を行う。
(2) 本件不正行為の発生に関する内部統制、コンプライアンス、ガバナンス上の問題点の有無の調査分析を行う。
(3) 上記(1)(2)を踏まえ、再発防止策の提言を行う。
3.第三者委員会の構成(敬称略)
  委員長 三浦州夫 弁護士 河本・三浦法律事務所
  委 員 渡辺 徹 弁護士 北浜法律事務所・外国法共同事業
  委 員 安原 徹 公認会計士 ペガサス監査法人・安原公認会計士事務所
 なお、第三者委員会の委員選定に際しましては、日本弁護士連合会による「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン(平成22 年7 月15 日公表)」に沿って委員の選定を行っております。
4.調査のスケジュール
 平成25 年3 月25 日(本日)第三者委員会設置第三者委員会においては、厳正かつ徹底した調査の終了後、当社に対して報告書を提出する予定です。今後の予定については、判明次第、速やかに開示いたします。
5.今後の対応について
 当該事象が当社の業績に及ぼす影響につきましては、現在のところ明らかになっておりませんが、把握出来次第速やかに開示いたします。
 当社は、第三者委員会による調査に対して全面的に協力し、早急に調査を進めてまいります。
 また、第三者委員会の調査の結果、明らかとなった事実関係等につきましては、速やかな適時開示を行ってまいります。
 株主をはじめ投資家の皆様、お取引先の皆様及び市場関係者の皆様には多大なるご迷惑とご心配をお掛けいたしますことを、深くお詫び申し上げます。
     以 上
**********

■株主をはじめ、投資家に対して速やかに対応措置をとっていることを示さないと、企業に対する投資家の不信はもとより、会社の社会的イメージダウンを少しでも深刻にならないように企業の場合、迅速に対応措置をとっていることが分かります。

 この椿本興業の企業不祥事は、その後、取引先にも影響を与えつつあるようです。

**********
2013年3月26日
日本コンベヤ、 椿本興業の従業員による不正取引に関与
 日本コンベヤは3月26日、3月18日付けで椿本興業が公表した椿本興業 従業員による不正取引の中に、同社との取引が含まれていることを明らかにした。
 椿本興業の従業員による不正取引とは、椿本興業の中日本営業本部の従業員が、約10年前から架空取引を繰り返していたというもので、当該従業員による自己申告によりこの事実が明らかになったというものとなる。椿本興業では現在、第三者調査委員会を組織してその実態の調査を進めている。
 日本コンベヤ では、3月26日付けで 、3 月18 日付で開示された椿本興業株式会社の「当社従業員による不正行為について」に関して、「不正行為が疑われる取引の一部に、当社との取引が含まれていることが判明いたしました。当該取引が不正取引であるか否か、当該取引が当期及び過年度の業績へ及ぼす影響などにつきまして、現在、鋭意、調査中であります。調査結果が判明次第、開示いたします」と述べている。

http://www.conveyor.co.jp/nc20130326.pdf
               平成25 年3 月26 日
各 位
               会社名:日本コンベヤ株式会社
               代表者名:代表取締役社長 西 尾 佳 純
                (コード番号 6375)
               問合せ先:取締役管理本部長 石 田 稔 夫
               (TEL:072-872-2151)
          椿本興業株式会社との取引について
 この度、平成25 年3 月18 日付で開示された椿本興業株式会社の「当社従業員による不正行為について」に関して、不正行為が疑われる取引の一部に、当社との取引が含まれていることが判明いたしました。
 当該取引が不正取引であるか否か、当該取引が当期及び過年度の業績へ及ぼす影響などにつきまして、現在、鋭意、調査中であります。調査結果が判明次第、開示いたします。
以 上
**********

■こうして取引先を撒き込んで、大変な波紋を業界に投げかけていますが、椿本興業では第3者委員会を組織したという発表の後は、その後の調査の進捗は発表していません。いつごろ第3者委員会の調査結果が報告書として提出されるのかが注目されますが、明治機械の場合には、第3者委員会の設置から約3カ月後に調査報告書が出されています。これと同様な場合、椿本興業の不祥事に関する報告書は5月中旬頃出されることになります。

 明治機械の不祥事では、調査報告は次のようにプレス発表されました。

**********
平成 25 年2月15 日
会社名 明治機械株式会社
代表者名 代表取締役社長 高橋 豊三郎
          第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ
 当社は、平成24 年11 月19 日付「第三者委員会の設置に関するお知らせ」にて公表しましたとおり、当社の連結子会社であるラップマスターエスエフティ株式会社の不適切な会計処理の疑義に係る調査に当たり、不正の事実関係の有無の把握、又、再発防止や適切な会計処理及び責任所在の究明に関する提言等が必要であると判断し、当社と利害関係を有しない外部の専門家から構成される第三者委員会を設置して調査を進めてまいりました。
 2月14日付で、第三者委員会より調査報告書を受領いたしましたので、その結果につき、当該調査報告書(全文)を別添にてご報告いたします。
 当社は、第三者委員会の評価及び提言を真摯に受け止め、過年度決算の訂正を行う予定であり、過年度分の訂正有価証券報告書等の提出時期につきましては、本日受領した第三者委員会の調査結果を踏まえ、会計監査人による監査を経て、速やかに提出することといたします。
 当社及び当社グループといたしましては、今回の調査結果を真摯に受け止め、事実解明に基づいた適正な会計処理への是正や再発防止に取り組むと共に、株主様、投資家様をはじめ関係者の皆様からの信頼回復に努めてまいる所存であります。また、それらの是正や再発防止等の内容が確定次第、速やかに開示させていただきます。
 株主および取引先の皆様をはじめ関係者の皆様には多大なるご心配とご迷惑をおかけいたしましたことを、改めて深くお詫び申し上げます。
別添資料:「調査報告書」
 本報告書では、社外の取引先および社内外の個人名に関しては、個人情報等を考慮し匿名としております。
平成25 年2 月14 日 明治機械株式会社 第三者調査委員会
http://post.tokyoipo.com/visitor/search_by_brand/infofile.php?brand=1787&info=842524
**********

■これに対して安中市の不祥事であるタゴ51億円事件の場合には、安中市は庁内の職員で調査委員会を構成したため、その作業にはベラボーに時間が費やされ、成果品である報告書の内容たるや、全く酷いものでした。最初から真相解明、責任明確化、再発防止策の構築に向けた意欲が失せていたからです。タゴ事件の関係者が安中市役所にあまりにも沢山いたため、関係者が調査委員会に事件の全容解明をさせるはずがない為でした。中途半端に事件の幕引きをしたため、今や事件関係者が市のトップになってしまっており、もうすぐタゴ事件発覚から18周年を迎えようとしていますが、現在の市役所は、事件当時の状態にあと戻りしてしまっていると言えそうです。

 椿本興業の企業不祥事については、今後とも動きを見守りたいと思います。

【ひらく会情報部】

※参考資料
【企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン】
2010年7月15日 改訂2010年12月17日 日本弁護士連合会
企業や官公庁、地方自治体、独立行政法人あるいは大学、病院等の法人組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合、最近では、外部者を交えた委員会を設けて調査を依頼するケースが増えています。
日弁連では、そのような委員会のうち、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会(以下、「第三者委員会」という)を対象として、本ガイドラインを策定しました。
これは、第三者委員会が設置される場合、弁護士がその主要なメンバーとなるのが通例であることから、第三者委員会の活動がより一層社会の期待に応え得るものとなるように、当連合会が自主的なガイドラインとして定めたものです。
本ガイドラインは第三者委員会があまねく遵守すべき規範を定めたものではなく、現時点でのベスト・プラクティスを取りまとめたものですが、ここに1つのモデルが示されることで第三者委員会に対する社会の理解が一層深まることを願うものです。
また、今後第三者委員会の実務に携わる弁護士には、各種のステークホルダーの期待に応えつつ、さらなるベスト・プラクティスの構築に尽力されることを期待します

「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」の策定にあたって
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/100715_2.pdf
2010年 7月15日 改訂 2010年12月17日 日本弁護士連合会
 企業や官公庁、地方自治体、独立行政法人あるいは大学、病院等の法人組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合、当該企業等の経営者ないし代表者(以下、「経営者等」という)は、担当役員や従業員等に対し内々の調査を命ずるのが、かつては一般的だった。しかし、こうした経営者等自身による、経営者等のための内部調査では、調査の客観性への疑念を払拭できないため、不祥事によって失墜してしまった社会的信頼を回復することは到底できない。そのため、最近では、外部者を交えた委員会を設けて調査を依頼するケースが増え始めている。
 この種の委員会には、大きく分けて2つのタイプがある。ひとつは、企業等が弁護士に対し内部調査への参加を依頼することによって、調査の精度や信憑性を高めようとするものである(以下、「内部調査委員会」という)。確かに、適法・不適法の判断能力や事実関係の調査能力に長けた弁護士が参加することは、内部調査の信頼性を飛躍的に向上させることになり、企業等の信頼回復につながる。その意味で、こうした活動に従事する弁護士の社会的使命は、何ら否定されるべきものではない。
 しかし、企業等の活動の適正化に対する社会的要請が高まるにつれて、この種の調査では、株主、投資家、消費者、取引先、従業員、債権者、地域住民などといったすべてのステーク・ホルダーや、これらを代弁するメディア等に対する説明責任を果たすことは困難となりつつある。また、そうしたステーク・ホルダーに代わって企業等を監督・監視する立場にある行政官庁や自主規制機関もまた、独立性の高いより説得力のある調査を求め始めている。そこで、注目されるようになったのが、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会(以下、「第三者委員会」という)である。すなわち、経営者等自身のためではなく、すべてのステーク・ホルダーのために調査を実施し、それを対外公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とするのが、この第三者委員会の使命である。
どちらのタイプの委員会を設けるかは、基本的には経営者等の判断に委ねられる。不祥事の 規模や、社会的影響の度合いによっては、内部調査委員会だけで目的を達成できる場合もある。しかし、例えば、マスコミ等を通じて不祥事が大々的に報じられたり、上場廃止の危機に瀕したり、株価に悪影響が出たり、あるいは、ブランド・イメージが低下し良い人材を採用できなくなったり、消費者による買い控えが起こったりするなど、具体的な2ダメージが生じてしまった企業等では、第三者委員会を設けることが不可避となりつつある。また、最近では、公務員が不祥事を起こした場合に、国民に対する説明責任を果たす手段として、官公庁が第三者委員会を設置するケースも増えている。
 第三者委員会が設置される場合、弁護士がその主要なメンバーとなるのが通例である。
 しかし、第三者委員会の仕事は、真の依頼者が名目上の依頼者の背後にあるステーク・ホルダーであることや、標準的な監査手法であるリスク・アプローチに基づいて不祥事の背後にあるリスクを分析する必要があることなどから、従来の弁護士業務と異質な面も多く、担当する弁護士が不慣れなことと相まって、調査の手法がまちまちになっているのが現状である。そのため、企業等の側から、言われ無き反発を受けたり、逆に、信憑性の高い報告書を期待していた外部のステーク・ホルダーや監督官庁などから、失望と叱責を受ける場合も見受けられるようになっている。
 そこで、日本弁護士連合会では、今後、第三者委員会の活動がより一層社会の期待に応え得るものとなるように、自主的なガイドラインとして、「第三者委員会ガイドライン」を策定することにした。依頼企業等からの独立性を貫き断固たる姿勢をもって厳正な調査を実施するための「盾」として、本ガイドラインが活用されることが望まれる。
 もちろん、本ガイドラインは第三者委員会があまねく遵守すべき規範を定めたものではなく、あくまでも現時点のベスト・プラクティスを取りまとめたものである。しかし、ここに1つのモデルが示されることで第三者委員会に対する社会の理解が深まれば、今後は、企業等の側からも、ステーク・ホルダー全体の意向を汲んで、本ガイドラインに準拠した調査が求められるようになることが期待される。また、監督官庁をはじめ自主規制機関等が、不祥事を起こした企業等に対し第三者委員会による調査を要求する場合、公的機関等の側からも、本ガイドラインに依拠することが推奨されるようになるものと予想される。
 これまでも、監督官庁による業務改善命令の一環として第三者委員会の設置が命じられる場合も見受けられたが、将来的には、単に第三者委員会の設置を命ずるにとどまらず、本ガイドラインに依拠した第三者委員会の調査を求めるようお願いしたい。
 いずれにせよ、今後第三者委員会の実務に携わる弁護士には、裁判を中心に据えた伝統的な弁護、代理業務とは異なり、各種のステーク・ホルダーの期待に応えるという新しいタイプの仕事であることを十分理解し、さらなるベスト・プラクティスの構築に尽力されることを期待したい。

<企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン>
2010年 7月15日 改訂 2010年12月17日 本弁護士連合会
第1部 基本原則
 本ガイドラインが対象とする第三者委員会(以下、「第三者委員会」という)とは、企業や組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合及び発生が疑われる場合において、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会である。
 第三者委員会は、すべてのステークホルダーのために調査を実施し、その結果をステークホルダーに公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とする。
第1.第三者委員会の活動
1.不祥事に関連する事実の調査、認定、評価
 第三者委員会は、企業等において、不祥事が発生した場合において、調査を実施し、事
実認定を行い、これを評価して原因を分析する。
(1)調査対象とする事実(調査スコープ)
 第三者委員会の調査対象は、第一次的には不祥事を構成する事実関係であるが、それに
止まらず、不祥事の経緯、動機、背景及び類似案件の存否、さらに当該不祥事を生じさせ
た内部統制、コンプライアンス、ガバナンス上の問題点、企業風土等にも及ぶ。
(2)事実認定
 調査に基づく事実認定の権限は第三者委員会のみに属する。
第三者委員会は、証拠に基づいた客観的な事実認定を行う。
(3)事実の評価、原因分析
 第三者委員会は、認定された事実の評価を行い、不祥事の原因を分析する。
事実の評価と原因分析は、法的責任の観点に限定されず、自主規制機関の規則やガイドライン、企業の社会的責任(CSR)、企業倫理等の観点から行われる1。
2.説明責任
 第三者委員会は、不祥事を起こした企業等が、企業の社会的責任(CSR)の観点から、ステークホルダーに対する説明責任を果たす目的で設置する委員会である。
3.提言
 第三者委員会は、調査結果に基づいて、再発防止策等の提言を行う。
第2.第三者委員会の独立性、中立性
 第三者委員会は、依頼の形式にかかわらず、企業等から独立した立場で、企業等のステークホルダーのために、中立・公正で客観的な調査を行う。
第3.企業等の協力
 第三者委員会は、その任務を果たすため、企業等に対して、調査に対する全面的な協力のための具体的対応を求めるものとし、企業等は、第三者委員会の調査に全面的に協力する2。
第2部 指針
第1.第三者委員会の活動についての指針
1.不祥事に関連する事実の調査、認定、評価についての指針
(1)調査スコープ等に関する指針
①第三者委員会は、企業等と協議の上、調査対象とする事実の範囲(調査スコープ)を決定する3。調査スコープは、第三者委員会設置の目的を達成するために必要十分なものでなければならない。
②第三者委員会は、企業等と協議の上、調査手法を決定する。調査手法は、第三者委員会設置の目的を達成するために必要十分なものでなければならない。
(2)事実認定に関する指針
①第三者委員会は、各種証拠を十分に吟味して、自由心証により事実認定を行う。
②第三者委員会は、不祥事の実態を明らかにするために、法律上の証明による厳格な事実認定に止まらず、疑いの程度を明示した灰色認定や疫学的認定を行うことができる4。
(3)評価、原因分析に関する指針
①第三者委員会は、法的評価のみにとらわれることなく5、自主規制機関の規則やガイドライン等も参考にしつつ、ステークホルダーの視点に立った事実評価、原因分析を行う。
②第三者委員会は、不祥事に関する事実の認定、評価と、企業等の内部統制、コンプライアンス、ガバナンス上の問題点、企業風土にかかわる状況の認定、評価を総合的に考慮して、不祥事の原因分析を行う。
2.説明責任についての指針(調査報告書の開示に関する指針)
第三者委員会は、受任に際して、企業等と、調査結果(調査報告書)のステークホルダーへの開示に関連して、下記の事項につき定めるものとする。
①企業等は、第三者委員会から提出された調査報告書を、原則として、遅滞なく、不祥事に関係するステークホルダーに対して開示すること6。
②企業等は、第三者委員会の設置にあたり、調査スコープ、開示先となるステークホルダーの範囲、調査結果を開示する時期7を開示すること。③企業等が調査報告書の全部又は一部を開示しない場合には、企業等はその理由を開示すること。また、全部又は一部を非公表とする理由は、公的機関による捜査・調査に支障を与える可能性、関係者のプライバシー、営業秘密の保護等、具体的なものでなければならないこと8。
3.提言についての指針
 第三者委員会は、提言を行うに際しては、企業等が実行する具体的な施策の骨格となるべき「基本的な考え方」を示す9。
第2.第三者委員会の独立性、中立性についての指針
1.起案権の専属
 調査報告書の起案権は第三者委員会に専属する。
2.調査報告書の記載内容
 第三者委員会は、調査により判明した事実とその評価を、企業等の現在の経営陣に不利となる場合であっても、調査報告書に記載する。
3.調査報告書の事前非開示
 第三者委員会は、調査報告書提出前に、その全部又は一部を企業等に開示しない。
4.資料等の処分権
 第三者委員会が調査の過程で収集した資料等については、原則として、第三者委員会が処分権を専有する。
5.利害関係
 企業等と利害関係を有する者10は、委員に就任することができない。
第3.企業等の協力についての指針
1.企業等に対する要求事項
 第三者委員会は、受任に際して、企業等に下記の事項を求めるものとする。
①企業等が、第三者委員会に対して、企業等が所有するあらゆる資料、情報、社員へのアクセスを保障すること。
②企業等が、従業員等に対して、第三者委員会による調査に対する優先的な協力を業務として命令すること。
③企業等は、第三者委員会の求めがある場合には、第三者委員会の調査を補助するために適切な人数の従業員等による事務局を設置すること。当該事務局は第三者委員会に直属するものとし、事務局担当者と企業等の間で、厳格な情報隔壁を設けること。
2.協力が得られない場合の対応
 企業等による十分な協力を得られない場合や調査に対する妨害行為があった場合には、第三者委員会は、その状況を調査報告書に記載することができる。
第4.公的機関とのコミュニケーションに関する指針
 第三者委員会は、調査の過程において必要と考えられる場合には、捜査機関、監督官庁、
自主規制機関などの公的機関と、適切なコミュニケーションを行うことができる11。
第5.委員等についての指針
1.委員及び調査担当弁護士
(1)委員の数
 第三者委員会の委員数は3名以上を原則とする。
(2)委員の適格性
 第三者委員会の委員となる弁護士は、当該事案に関連する法令の素養があり、内部統制、コンプライアンス、ガバナンス等、企業組織論に精通した者でなければならない
 第三者委員会の委員には、事案の性質により、学識経験者、ジャーナリスト、公認会計士などの有識者が委員として加わることが望ましい場合も多い。この場合、委員である弁護士は、これらの有識者と協力して、多様な視点で調査を行う。
(3)調査担当弁護士
 第三者委員会は、調査担当弁護士を選任できる。調査担当弁護士は、第三者委員会に直属して調査活動を行う。
調査担当弁護士は、法曹の基本的能力である事情聴取能力、証拠評価能力、事実認定能力等を十分に備えた者でなければならない。
2.調査を担当する専門家
 第三者委員会は、事案の性質により、公認会計士、税理士、デジタル調査の専門家等の各種専門家を選任できる。これらの専門家は、第三者委員会に直属して調査活動を行う12。
第6.その他
1.調査の手法など
 第三者委員会は、次に例示する各種の手法等を用いて、事実をより正確、多角的にとらえるための努力を尽くさなければならない。
(例示)
①関係者に対するヒアリング
 委員及び調査担当弁護士は、関係者に対するヒアリングが基本的かつ必要不可欠な調査手法であることを認識し、十分なヒアリングを実施すべきである。
②書証の検証
 関係する文書を検証することは必要不可欠な調査手法であり、あるべき文書が存在するか否か、存在しない場合はその理由について検証する必要がある。なお、検証すべき書類は電子データで保存された文書も対象となる。その際には下記⑦(デジタル調査)に留意する必要がある。
③証拠保全
 第三者委員会は、調査開始に当たって、調査対象となる証拠を保全し、証拠の散逸、隠滅を防ぐ手立てを講じるべきである。企業等は、証拠の破棄、隠匿等に対する懲戒処分等を明示すべきである。
④統制環境等の調査
 統制環境、コンプライアンスに対する意識、ガバナンスの状況などを知るためには社員を対象としたアンケート調査が有益なことが多いので、第三者委員会はこの有用性を認識する必要がある。
⑤自主申告者に対する処置
 企業等は、第三者委員会に対する事案に関する従業員等の自主的な申告を促進する対応13をとることが望ましい。
⑥第三者委員会専用のホットライン
 第三者委員会は、必要に応じて、第三者委員会へのホットラインを設置することが望ましい。
⑦デジタル調査
 第三者委員会は、デジタル調査の必要性を認識し、必要に応じてデジタル調査の専門家に調査への参加を求めるべきである。
2.報酬
 弁護士である第三者委員会の委員及び調査担当弁護士に対する報酬は、時間制を原則とする14。
 第三者委員会は、企業等に対して、その任務を全うするためには相応の人数の専門家が相当程度の時間を費やす調査が必要であり、それに応じた費用が発生することを、事前に説明しなければならない。
3.辞任
 委員は、第三者委員会に求められる任務を全うできない状況に至った場合、辞任することができる。
4.文書化
 第三者委員会は、第三者委員会の設置にあたって、企業等との間で、本ガイドラインに沿った事項を確認する文書を取り交わすものとする。
5.本ガイドラインの性質
 本ガイドラインは、第三者委員会の目的を達成するために必要と考えられる事項について、現時点におけるベスト・プラクティスを示したものであり、日本弁護士連合会の会員を拘束するものではない。
 なお、本ガイドラインの全部又は一部が、適宜、内部調査委員会に準用されることも期待される。
       以 上

〔注〕
1 第三者委員会は関係者の法的責任追及を直接の目的にする委員会ではない。関係者の法的責任追及を目的とする委員会とは別組織とすべき場合が多いであろう。
2 第三者委員会の調査は、法的な強制力をもたない任意調査であるため、企業等の全面的な協力が不可欠である。
3 第三者委員会は、その判断により、必要に応じて、調査スコープを拡大、変更等を行うことができる。この場合には、調査報告書でその経緯を説明すべきである。
4 この場合には、その影響にも十分配慮する。
5 なお、有価証券報告書の虚偽記載が問題になっている事案など、法令違反の存否自体が最も重要な調査対象事実である場合もある。
6 開示先となるステークホルダーの範囲は、ケース・バイ・ケースで判断される。たとえば、上場企業による資本市場の信頼を害する不祥事(有価証券報告書虚偽記載、業務に関連するインサイダー取引等)については、資本市場がステークホルダーといえるので、記者発表、ホームページなどによる全面開示が原則となろう。不特定又は多数の消費者に関わる不祥事(商品の安全性や表示に関する事案)も同様であろう。他方、不祥事の性質によっては、開示先の範囲や開示方法は異なりうる。
7 第三者委員会の調査期間中は、不祥事を起こした企業等が、説明責任を果たす時間的猶予を得ることができる。したがって、企業等は、第三者委員会が予め設定した調査期間をステークホルダーに開示し、説明責任を果たすべき期限を明示することが必要となる。ただし、調査の過程では、設定した調査期間内に調査を終了し、調査結果を開示することが困難になることもある。そのような場合に、設定した調査期間内に調査を終了することに固執し、不十分な調査のまま調査を終了すべきではなく、合理的な調査期間を再設定し、それをステークホルダーに開示して理解を求めつつ、なすべき調査を遂げるべきである。
8 第三者委員会は、必要に応じて、調査報告書(原文)とは別に開示版の調査報告書を作成できる。非開示部分の決定は、企業等の意見を聴取して、第三者委員会が決定する。
9 具体的施策を提言することが可能な場合は、これを示すことができる。
10 顧問弁護士は、「利害関係を有する者」に該当する。企業等の業務を受任したことがある弁護士や社外役員については、直ちに「利害関係を有する者」に該当するものではなく、ケース・バイ・ケースで判断されることになろう。なお、調査報告書には、委員の企業等との関係性を記載して、ステークホルダーによる評価の対象とすべきであろう。
11 たとえば、捜査、調査、審査などの対象者、関係者等を第三者委員会がヒアリングしようとする場合、第三者委員会が捜査機関、調査機関、自主規制機関などと適切なコミュニケーションをとることで、第三者委員会による調査の趣旨の理解を得て必要なヒアリングを可能にすると同時に、第三者委員会のヒアリングが捜査、調査、審査などに支障を及ぼさないように配慮することなどが考えられる。
12 第三者委員会は、これらの専門家が企業等と直接の契約関係に立つ場合においても、当該契約において、調査結果の報告等を第三者委員会のみに対して行うことの明記を求めるべきである。
13 たとえば、行為者が積極的に自主申告して第三者委員会の調査に協力した場合の懲戒処分の減免など。
14 委員の著名性を利用する「ハンコ代」的な報酬は不適切な場合が多い。成功報酬型の報酬体系も、企業等が期待する調査結果を導こうとする動機につながりうるので、不適切な場合が多い。


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通勤通学者約1500名の帰宅の足を乱しても責任の所在を自ら特定できないJRグループの責任転嫁体質(続々報)

2013-04-20 23:44:00 | 国内外からのトピックス
■平成25年4月16日の夕方、信越線安中駅構内で発生した貨物列車のトラブルは、東邦亜鉛安中製錬所に原料の亜鉛鉱石(焼鉱及び精鉱)を運搬する貨車を牽引していた電気機関車が、信越線下り線上で立ち往生したため、後続の信越線下り普通電車151Mが運休し、153M、155M、157Mの3本が遅延しました。立ち往生の原因について、電気機関車EH500を所有し、運行していたJR貨物では、当会の聞き取り調査に対して、運転手のスイッチ操作ミスだったと話しました。

 そこで、実際にどのような経緯でトラブルが発生したのか、4月19日に現場で状況を確認しました。運行時間の管理では、世界一の正確性を誇るJRということなので、毎日同じ時間に同じ作業が行われているため、3日前の状況が再現されているからです。

 新聞報道によれば、「4月16日午後5時50分ごろ、安中市中宿のJR安中駅構内で、車庫への入れ替えをしていた田端操車場発安中行き下り貨物列車が、下り線路上で動かなくなった。車輌を点検し、午後7時20分ごろ運転再開した」とあります。また、この前後に高崎駅を出発する信越線下り電車を時刻表で見ると、普通列車149Mが高崎発17:18(安中着17:29)、同151Mが高崎発17:51(安中着18:02)、同153Mが高崎発18:23(安中着18:34)、同155Mが高崎発19:13(安中着19:25)、同157Mが高崎発20:02(安中着20:13)となっています。

■カメラを構えて、安中駅の西側にある市道の跨線橋のたもとで待機していると、17:30に下り普通電車が定刻通り17:29に安中駅の下り線ホームに到着し、旅客をおろすと17:30に次の駅の磯部に向けて出発しました。


 17:33になると安中貨物の到着が迫り、東邦亜鉛の子会社の安中運輸の作業員が駅構内に姿を見せ始めました。


 すると高崎行きの信越線上り普通電車が安中駅の上り線プラットフォームに入ってきました。


 ほぼ同時に、高崎方面からライトを光らせてこちらに向かってくる列車に気付きました。その列車がぐんぐん近づいてきましたが、途中で下り線から貨物線に入り、やがて停止しました。これが安中貨物を牽引してきた電気機関車EH500です。それと同時に、高崎行の信越線上り普通列車が安中駅の上り線プラットフォームを出発しました。


 17:37に電気機関車EH500が貨車から切り離されて、ゆっくりと動き出しました。そして、貨物線から信越線下り線に入ってきました。



 下り線に入ったEH500は、どんどん磯部方面に進み、跨線橋の下まで来ると停車しました。この時点でも17:38です。


 間もなく機関車のハム音(電気装置特有の唸り音)が消えました。運転手が反対側の運転席に移るため、運転席を離れる際に電源スイッチを一旦切ったようです。


 これを見届けると同時に、安中運輸のディーゼル機関車DB301が動き出し、ゆっくりと貨物線に入っていきます。


 17:40に跨線橋の下で待機していた電気機関車EH500に唸り音がしました。移動を終えた運転手が再び電源スイッチを入れた模様です。


 貨物線に目をやると、タンク貨車との連結作業が済んだらしく、ディーゼル機関車DB301の短い汽笛が聞こえました。DB301はタンク車2両をけん引して、ゆっくりと貨物線から東邦亜鉛の工場への待機線に入ってきました。


 その模様を見ていたEH500は、17:40に、やはり短い汽笛を発すると、跨線橋の下から動き出し、下り線を高崎方面に逆送していきました。


 待機線に入り、跨線橋のすぐ前の位置で一旦停車していたDB301は、17:41にポイントが切り替わるや、短い汽笛を発するやタンク車2両を押して、東邦亜鉛安中製錬所の工場に向かう引込み線に入って行きました。



 一方、下り線を逆走していったEH500は、柳瀬川の橋梁を過ぎたところで一旦停車しました。そして、運転手が一旦電源を切り、反対側の運転席に移り、再び電源スイッチを入れてポイントの切り替えを確認後、ゆっくりと動き出して、貨物線に入り、福島県いわき市の小名浜製錬所から運んできた安中貨物の貨車から200mくらい離れた位置に停車しました。時間は17:45でした。


 17:49に、工場に最初の2両のタンク貨車を運び終わったDB301ディーゼル機関車が単機で戻ってきました。


 DB301は、一旦待機線でポイントの切り替えを待ち、すぐに貨物線に入り、タンク貨車を2両連結して、17:51に移動を開始しました。



 そして待機線で再びポイントの切り替えを待った後、17:52に再度、タンク貨車2両を押しながら、安中製錬所の引込み線に入って行きました。



■以上の一連の作業は、80年にもわたる東邦亜鉛安中製錬所の操業の歴史と同じ期間、繰り返されているだけあって、実に手際よく行われていることが見ていて分かります。

 ではなぜ、平成25年4月16日の17:50ごろ、安中市中宿のJR安中駅構内で、車庫への入れ替えをしていた田端操車場発安中行き下り貨物列車を牽引してきたJR貨物所属の電気機関車EH500-76号機が、下り線路上で動かなくなったのでしょうか。

 午後5時50分ごろといえば、EH500-76号機が、一旦下り線を高崎方面に逆送してから、再び貨物線に入り、空の貨車を小名浜まで持ち帰る深夜の出発に備えて、待機を始めた時間と言うことになります。







暮れなずむ西空をバックに21:41まで安中駅構内の貨物線で待機するEH500-6号機。4月19日撮影。

 おそらく、17:42から17:44にかけて、柳瀬川の付近の下り線で、ポイントの切り替え待ちと、運転手の移動のために停止していたEH500-76号機が、運転手の前後の移動を終えて、入れ替わった運転台で、再度電源スイッチを入れて動かそうとした際に、スイッチ操作のミスで動かなくなったものとみられます。

 そうすると、信越線と並行して走っている国道18号線沿いの100円ショップ脇にある信越線の踏切の信号機が、ずっと鳴りっぱなしになっていたのではないかと思われます。もし、運悪くこの踏切信号機にひっかかったドライバーは、大変な迷惑を被ったに違いありません。

 また、17:50ごろ、立ち往生の連絡が高崎駅に入ったとすれば、電気機関車が立ち往生してから5分以上経過したことになります。信越線の時刻表によれば、ちょうどそのころ、普通電車151Mが高崎駅を17:51に出発する直前でした。運休したのはこの電車で、その後の普通電車153M(高崎発18:23、安中着18:34)、同155M(高崎発19:13、安中着19:25)、同157M(高崎発20:02、安中着20:13)のダイヤが乱れて、運行時間が大幅に遅れたわけです。

■JR貨物は渋々「運転手のスイッチ操作を誤ったのが今回の立ち往生の原因だ」と説明しました。ところが、「現場からの報告書は一切上がってきていない」と言っています。JR貨物では、関東支社と東京貨物ターミナル駅が2000年12月にISO9000シリーズの認証を取得し、それ以降、各駅や各機関区でISO認証取得を進めているはずです。となると、今回の事故報告書が関東支社に上げられていないことなり、その場合ISOのルール違反になります。

 筆者は、通勤・通学客約1500名の帰宅の足への影響の原因とされた今回のJR貨物の電気機関車EH500-6号機の線路上での立ち往生の本当の理由は別のところにあるとみています。その根拠は、JR東日本やJR貨物が、事故原因の問い合わせに対して不自然な対応をとったためです。

 たしかに、安中貨物を牽引してきた電気機関車は、安中駅構内で3回の運転台の入れ替わりを行いますが、基本中の基本であるこの時のスイッチ操作の手順を誤るということなど、到底考えられないからです。

 JR貨物の売り上げは漸減していますが、こうした事故対応の原因秘匿体質を見ると、顧客の信頼に十分こたえているのだろうか、という疑問がわき、そのことが売り上げの伸び悩みという結果に表れているとも受け取れるからです。

■ところで、今回の事故調査で、東邦亜鉛安中製錬所の動脈である安中貨物の運行実態を理解できました。こんな内陸に、全量海外からの原料を使って操業してきた公害企業を支えていたのは、まさに鉄道輸送だったのです。

 そして、電気機関車の駆動も、亜鉛の製錬も両方とも電気に依存しています。JR貨物も東邦亜鉛も東京電力から非常に安い単価で電力供給を受けています。原発事故を契機に、一般家庭の電気代は上がりっぱなしですが、東邦亜鉛は再生エネルギー買取制度の賦課金さえ免除されています。

 そうした特典を得ていながらも、東邦亜鉛は「電力コストが今後の経営戦略に大きな重しとなっている」という見解を示しています。東邦亜鉛は豪州の鉱山会社を円高の恩恵を受けて安値で買収したのですから、日本の高い電気代や日本までの鉱石運搬費を使って電気亜鉛の製錬をするのではなく、豪州で亜鉛製錬まで一貫して行い、製品を日本に持ち込めば、電力や輸送コスト、そして公害問題の観点からも経営改善に寄与することはだれの目にも明らかです。当会もそうした提案を東邦亜鉛にし続けていますが、なぜか無視されたままです。

 この理由としてオーストラリアでは、以前は電気代が安かったが最近になって再生エネルギー促進や環境保護の高まりなどで電力料金がアップしているという事情があります(末尾の参考情報の通り、2012年現在の一般家庭用電力料金は20.42円/kwhで、日本の約23円に比べればまだ低い)。オーストラリアは石炭の産地として世界的に知られていますが、環境問題にも積極的に取り組んでおり、二酸化炭素の排出についても賦課金を課しています。だからといって原発に依存することはしてはいません。

 こうした理由により、今でも公害企業の体質を内包する東邦亜鉛としては、環境問題に敏感で規制も厳しいオーストラリアで製錬事業を行うよりも、既に公害汚染地として周辺を汚染し続けても環境行政面で緩フンの日本政府、群馬県、安中市の行政の庇護のもとで事業を営む方が、遥かにメリットがあると判断しているのかもしれません。

【ひらく会情報部】

※参考情報
【平成25年4月16日の安中貨物】
安中駅構内で立ち往生したJR貨物の電気機関車はEH500-76号機で、牽引していた貨車はタンク貨車(タキ)6両、無蓋貨車(トキ)6両であることが次の画像で分かります。
http://www.youtube.com/watch?v=WoAPlznjxmg 
【平成25年5月15日の安中貨物】
事故前日の安中貨物を牽引した電気機関車はEH500-20号機で、貨車はタキ1両、トキ5両であることがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=DcoeSgc9Cx0 
【豪州の電気料金】
2012年12月26日電力事業連合会「海外電力関連解説情報」
http://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_kaisetsu/1223716_4141.html
「大幅に上昇したオーストラリアの小売電気料金」
 オーストラリア(豪州)では、1990年代後半からの規制緩和により、州電力庁の分割民営化、全国で統一した卸電力市場の創設、段階的な小売の自由化といった電力システムの制度改革を実施してきた。ところが、近年になって電気料金が大幅に上昇を続け、今後もこの傾向が継続するとの見通しが強い。実態と背景を探ってみる。
□3年間で40%も値上がりした家庭用電気料金
 自国の豊富な石炭資源を利用できることから、豪州では長年にわたって割安な電気料金の恩恵を享受してきた。しかし、2007年以降、料金上昇が続いており、豪州エネルギー消費者協会(EUAA)が2012年3月に公表した国際比較調査の結果によると、既に日本、欧州連合(EU)平均、米国の水準を上回っている実態が明らかになった。2008年の世界金融危機以降の対米ドル高、対ユーロ高となった豪ドル為替相場の影響を考慮しても、こうした国々よりも高い水準となっている。
 2007年から2010年の3年間の家庭用電気料金の値上がり幅は約40%に達しており、燃料価格の高騰によって上昇している欧州と比較しても、短期間で急激に値上がりしている実情が明確だ。さらに、豪州エネルギー市場委員会(AEMC)は、電気料金の上昇傾向は今後も続くと予測している。なお、2012年の豪州の家庭用小売電気料金の平均単価は25.21豪セント(約20.42円)/kWhとなっている。
□背景にある燃料価格の高騰、新設設備の増加、環境関連費用
 こうした電気料金の上昇に大きく影響しているのが、卸電力調達費用と送配電線使用料の高騰である。送配電線使用料はピーク需要の増加、電力供給信頼度基準の強化、老朽設備の更新などに必要となる莫大な投資、さらには料金規制上の問題を背景に急上昇している。卸電力調達費用の増加は、現行のスポット価格は比較的安く推移しているものの、小売料金の規制期間の卸電力調達コストの上昇が想定されているためだ。
 この背景には、国際的な燃料価格の高騰や新規参入者の増大に伴う新設設備の増加、炭素価格制度の導入などがある。2012年7月から実施された炭素価格制度は、火力発電所を含むCO2排出量の多い事業者に対して、排出価格を1トン当たり23豪ドル(約1860円)の負担を義務化しており、これによる初年度の平均的な家庭の負担は電気料金で10%(週3.3豪ドル、約267.3円)アップすると試算されている。
 また、再生可能エネルギーに関しては、2020年までに発電電力量の20%(450億kWh)を再エネでまかなうという目標を掲げた「再生可能エネルギー目標制度(RET)」があり、その中心を風力発電が担っている。同制度は2001年4月にスタート、小売事業者に販売電力量の一定割合について、再エネ証書の調達を義務付けており、その結果、風力発電の導入が進んでいる。この一方で、間欠性電源である風力発電にはバックアップ電源が必要であることから、風力発電の増加と並行して、負荷追従性が高いオープンサイクルガス発電も増加している。AEMCによると、最近の電気料金上昇分の7%はRETによる商業用再エネ発電の導入費用、3%は州政府が独自に行っている固定価格買取制度や省エネ証書制度などの費用とされる。炭素価格制度やRETが電気料金に与える影響はまだ軽微だが、今後は増加していくことが確実といえる。
□連邦政府が「電気代が安価な時代は終わった」と明言
 豪州連邦政府は2012年11月、基本的なエネルギー政策である「エネルギー白書」を公表した。世界的な環境意識の高まりから、豪州でも2012年7月に排出量取引の前段階として炭素価格制度が導入され、長期的には国産資源を活用した石炭火力発電から、クリーンエネルギーへの移行を目指し、今後10年間は天然ガスを移行期におけるエネルギーとする青写真を描いている。
 豪州エネルギー市場管理会社(AEMO)はこれを実現するためには、2030年までに全国電力市場(NEM)管内で発電所や送電線の新設に720億~820億豪ドル(約5.8兆~約6.6兆円)もの投資が必要であるとしている。また、別の試算では、送電投資に240億豪ドル(約1兆9500億円)、配電投資に1200億豪ドル(約9兆7000億円)が必要という結果も報告されている。しかし、民間企業にとっては、政策変更懸念や炭素価格リスクがつきまとい、先行きの不透明感から投資判断に苦慮しているのが実情だ。
 連邦政府は電気料金が上昇している現状を認め、「電気代が安価な時代は終わった」と明言し、民間企業による発電投資や送配電投資を促すため、更なる規制緩和を進める方針を打ち出している。しかし、連邦規模のエネルギー政策は、連邦と州のエネルギー大臣で構成される「エネルギーに関する閣僚会議(MCE)」で議論され、MCEの上位機関で、連邦と州の首相の意思決定機関である「政府間評議会(COAG)」で決定されるように、エネルギー政策には州政府の意向が色濃く反映される。特に規制緩和は州政府の権限を弱めることを意味し、反発も予想されるため、連邦政府のシナリオ通りに進むとは限らない可能性もある。

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通勤・通学者約1500名の帰宅の足を乱しても責任の所在を自ら特定できないJRグループの責任転嫁体質(続報)

2013-04-18 21:55:00 | 国内外からのトピックス
■一昨日の夕方、信越線安中駅構内で発生した貨物列車のトラブルで通勤・通学で帰宅途中の旅客約1500人の足が乱された件で、当会はその原因を知るべく、JR東日本高崎支社とJR貨物本社に電話で問い合わせていました。

 前日、JR東日本高崎支社の営業部販売促進課、総務部広報課、JR貨物営業部、総務部をたらい回しにされた挙句、原因特定に至らなかったため、昨日の晩、高崎駅の窓口に立ち寄り同駅の樋口助役と面談し、事情を説明したところ、あらためてJR東日本高崎支社の広報課に翌日電話するようにアドバイスを受けました。

■本日、JR高崎支社の広報課の伊野担当に相談し調査を依頼したところ、まもなく連絡がありました。それによれば「高崎支社の関係部署に確認したが、やはり車輌が所属しているところが責任部署となるため、本件はJR貨物が対応しなければならない事象であり、高崎機関区あたりが様子を知っているはず。だから、再度JR貨物の総務部に電話して広報課に回してもらい、そこで詳しい話が聞けると思う」ということでした。

 さっそくJR貨物の総務部に電話(03-5367-7397)をして、同社広報課につないでもらいました。広報担当者にこれまでの事情を話して、原因について何か報告は聞いていませんか、と訊ねたところ、「そういう報告書は上がってきていないが、少し時間をいただければ調べてみる」とのことでした。

 10分後にJR貨物の広報課から電話(03-5367-7379)があり、次の内容の説明がありました。それによると、電気機関車が安中駅構内の下り線で立ち往生した原因は、機関車の車輌故障ではなく運転手の操作ミスだということです。運転手が運転中にスイッチ類を誤って操作した為、長時間、動かなくなったのが原因だというのです。さらに、「当該運転手には、然るべき処分を課して、再発防止に努める」ということで、「説明できるのはこれが限界だ」として、それ以上の詳しい説明はありませんでした。

■昨日の上毛新聞の報道記事では、「安中市中宿のJR安中駅構内で、車庫への入れ替えをしていた田端操車場発安中行き下り貨物列車が、下り線路上で動かなくなった。車輌を点検し、午後7時20分ごろ運転再開した」とあり、これを読めば読者は、「立ち往生した原因は車輌故障が原因だ」と思ったことでしょう。当会もはじめはそう思いました。しかも、この記事のもとになったのは、JR東日本高崎支社の広報がマスコミ向けに発表した情報でした。

 ところが、2日がかりで電話取材した結果、トラブルの原因が、電気機関車を運転していた運転手による操作ミスという人的要因だったことが判明したのでした。けれども、スイッチの誤った操作だけでなぜ1時間半も復旧に時間がかかったのか、スイッチの操作ミスがなぜ発生したのか(運転手は運転操作時にそれぞれの動作ごとに必ず指差発声確認をしているはず)、現場の運転手だけで復旧対応ができたのか、などの疑問については答えてくれませんでした。

 昨日のJR貨物の対応といい、本日のJR貨物の渋々ながらのコメントといい、消極的な対応が気になります。おそらく、今回のように旅客電車の運行に支障をきたした場合の対応には慣れておらず、どうぜJR東日本がうまく処理してくれるだろう、という甘えがあるのかもしれません。いずれにしても、運行の遅れに対して敏感ではない体質が伺えます。

 こうした感想を交えて、今回の一連の顛末と、トラブルの原因が車輌故障ではなく人的原因であったことを、JR東日本高崎支社広報部に伝えたところ、驚いた様子が電話口から感じ取れました。高崎駅の樋口助役も、昨晩面談した際にJR貨物の対応についてあきれていました。

■しかし、旅客輸送に従事するJR東日本と貨物輸送に特化するJR貨物は、確かに会社組織は別法人かもしれませんが、我々利用者としては両方ともJRグループとして認識しています。

 また、JR貨物は、JR東日本のレールを借りて輸送業務のビジネスをやっているわけですから、今回のようにJR貨物の不手際で旅客列車の運行に支障が出た場合、旅客のクレームの矢面に立たされるのはJR東日本です。ぜひ、今回の事件を奇貨としてグループ内の組織の垣根を取り除いて、再発防止策に万全を期してもらいたいと思います。

■同様にJRを利用している知人によれば、ある日、大宮駅の在来線ホームでレールとレールの継目にあるレール固定ボルト・ナット2セットのうち、1セットが取れてなくなっていて、もう一つのナットが緩んで、電車が通過する為にボルトがピョンと跳ねているのを見つけたので、さっそく電話で大宮駅の窓口にホームの番号や位置を通報したところ、「そのような箇所は見当たらない」と言われたため、今度は現場を写真にとって送り善処を求めたところ、それでも「見当たらない」と言われた為、知り合いにJR関係者がいたので、その人物に情報提供をしたところ、やっと復旧措置が取られたということです。

 たまたま、本日の朝も、越後湯沢始発のMaxたにがわ400号が高崎駅発6時37分だったのですが、駅のアナウンスで「トンネルの点検工事のため、東京方面への次の列車は高崎発6時50分の長野始発あさま500号なのでそれをご利用ください」と案内がありました。これでは運休なのか遅延なのか分からないので、窓口に確認したら30分ほど遅延予定というので、きちんとそのように案内をするよう依頼しましたが、その後も、しばらく同じ内容で構内放送をしていました。組織が肥大化しているようです。

【ひらく会情報部】

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