iPS「心筋球」2人改善 重い心不全患者に移植
慶応大発のバイオベンチャー「ハートシード」(東京)は11日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)で作った心臓の筋肉(心筋)の細胞を塊にした「心筋球」を、重い心不全の患者に移植する臨床試験(治験)で、移植から半年後に症状が改善する効果が2人でみられたと明らかにした。現在のところ深刻な不整脈や、がん化、拒絶反応といった、安全性の問題は起きていないとしている。
2人はいずれも虚血性心筋症の60代男性で、昨年12月と今年2月に移植。それぞれ半年後に、心臓が血液を送り出す機能を示す収縮率を調べたところ改善していた。今年移植した男性は、移植前から収縮率が倍増、大きな効果がみられた。
また心臓の機能が低下すると増える物質の血中濃度は、2人とも移植前と比べて50%以上減っていた。
心筋球は、健康な人のiPS細胞から心筋の細胞を作り、球状の塊にしたもの。注射で心臓に移植すると、患者の心筋とくっついて再筋肉化すると期待されている。
治験では、重い心不全の患者10人への移植を計画。5人目までは5千万個、6人目以降は1億5千万個の心筋細胞を移植する。今回の2人を含む4人への移植が終了しており、引き続き安全性や有効性を確認する。
※iPS細胞
人工多能性幹細胞。血液や皮膚の細胞に人工的に遺伝子を入れ、体のさまざまな細胞に変化できる能力を持たせたもので、再生医療や創薬に応用されている。「INDUCED(人工) PLURIPOTENT(多能性) STEM CELL(幹細胞)」の頭文字で、開発者の山中伸弥(やまなか・しんや)・京都大教授が命名した。iが小文字なのは、当時流行していた携帯音楽プレーヤーのiPod(アイポッド)のように普及してほしいとの願いを込めたという。山中教授が2006年にマウスで、07年に人で作製を報告し、12年にノーベル医学生理学賞を受賞した。