<読んだ本 2021年3月と4月>
東海道線は定刻の午前11時52分に終点の三島駅に到着した。
同じホームで次に来る12時6分の熱海行き電車に乗り、そして熱海で最後の乗換で戸塚に戻れる。静岡県内の東海道線は快速特急もなく、短い各駅の乗り継ぎを繰り返さねばならず真に不便である。
(なんか出汁の匂いがほんのりと漂ってきたぞ・・・)
ホームの先頭方向に歩いていくと、立ち食い蕎麦屋をみつけた。「桃中軒」っていう店の名前、たしか沼津か三島の駅弁屋だったな。駅弁屋の立ち食い蕎麦といえば、伊東の祇園、高崎駅の「たかべん」などを思いだし、期待してしまうぞ。

まだ10分以上あるから、食べるか。海老と野菜の掻き揚げ・・・・・・か、旨そうだ。
「掻き揚げ蕎麦をお願いします」
ハイヨ! と、狭い厨房から元気のいい返事があって調理に取り掛かる。
吹きさらしのホームでしかも囲いなしだから換気問題なし、3密も、ディスタンスやらも空いているからまったくもって無問題(モーマンタイ)。コロナ禍では、こういうホームの立ち食い蕎麦屋はなかなか貴重だと思う。
(あれっ、なんか遅いなぁ・・・)

よく見ると「ご注文をいただいてから掻き揚げを揚げます」と書いてあるではないか。し、しまった。かけそばにしておくべきだったか。
天ぷらをあらかじめ揚げてないとはどちらかというと喜ぶところだけど、静岡で何度も乗り換えているので、できれば次の電車も逃したくないのでヒジョーに微妙だ。

「おまちどお様でした!」
視線を、腕時計と厨房にせわしく往復させていると、声がかかった。あと4分か。
くそっ、慌てることの大嫌いなわたしだが、ここは揚げたて天ぷらを後回しにして、蕎麦から攻める。半分くらいまでガンガン攻めちゃう。
そうして漸く、天ぷらを齧る。熱い。ハフハフしながら頬張る天ぷらはさくさくだ。甘辛のつゆに浸して、少しでも温度を下げてからかぶりつく。海老と玉ねぎが旨い。小海老、玉ねぎ、人参くらいまではわかるが、入線のアナウンスが始まり、それ以上追及しているヒマなどこれっぽちもない。
旨かったが、慌ただしかった。注文してから天ぷらを揚げる立ち食い蕎麦、嬉しいけど忙しかった。
さて、3月・4月に読んだ本ですが、両月でなんとかの10冊、年間累計で18冊です。
1. ○破門 黒川博行 文春文庫
2. ○憂食論 柏井壽 講談社
3. ◎あきない世傳金と銀八 瀑布篇 高田郁 ハルキ文庫
4. ○葬られた勲章 上 リー・チャイルド 講談社文庫
5. ○葬られた勲章 下 リー・チャイルド 講談社文庫
6. ○スパイ武士道 池波正太郎 新潮文庫
7. ○旅路 上 池波正太郎 文春文庫
8. ○旅路 下 池波正太郎 文春文庫
9. ◎草花たちの静かな誓い 宮本輝 集英社文庫
10. ○暗約領域 新宿鮫Ⅺ 大沢在晶 光文社
「あきない世傳金と銀八 瀑布篇」は予約後、ずいぶん待たされたがいつも通りさすがに面白かった。次の九冊目がすぐにでも読みたくなる終わり方でまいった。なにしろ図書館読みだから半年くらいは待たねばならないのが辛い。
「葬られた勲章」の上下2巻、上巻が面白くないのは洋モノの常だが下巻に入っても残念ながらあまり面白くなかった。
8年ぶりに読む、新宿鮫シリーズ11冊目「暗約領域」はとにかく重かった。内容というよりも、ハードカバーで709ページあるから、マジな話、本に重量がありかさばるので持ち運びして読み切るまで大変だった。
「旅路」上下二巻だが、池波正太郎の文章は実に読みやすいと思う。すらすら読んでいて、思わず眼がとまった文章があった。読みやすいが、池波の本にはこういう処が結構あるのである。
『「人の世などというものは、な……」
と、木村又右衛門はいった。
「それぞれの、ひとの勘ちがいによって、成り立っているようなものじゃ。それが、この年齢になってみて、
よくわかるようになってきた」
人間たちの頭で考える推定とか予測とかいうものほど、
「当てにならぬものはない」
木村はそういうのだ。
親と子の間柄でも、肉親どうしでも、人と人とが真に理解し合うことは不可能であり、まして他人どうしが、
あれこれと、たがいに、おもいをめぐらしてみたところで、それがぴたりと適中していることは、
ほとんどないといってよい。
これが、木村又右衛門の信念のようなもので、
「それがわかったとき、わしは、すっかり気が楽になってな。それからはもう、
よけいなことを考えずにすむようになった」』
文春文庫 池波正太郎著「旅路」下巻より

宮本輝の「草花たちの静かな誓い」からは短いが心にとまった文章を。
『心配しても仕方のないことは心配するな・・・・・・。
うん、これは極意だなと弦矢は思って笑みを浮かべた。
気に病んでもどうにもならないことをつねに気に病む人がいる。不幸というものはいつも
そこから生まれて来るのかもしれない。』
なんか、二つの引用は、このご時世にぴったりあてはまるような言葉ではあるな。
→「読んだ本 2021年2月」の記事はこちら
→「高崎駅、たかべんのラーメン」の記事はこちら
→「伊東のいなり寿司」の記事はこちら
→「読んだ本 2012年10月」の記事はこちら
東海道線は定刻の午前11時52分に終点の三島駅に到着した。
同じホームで次に来る12時6分の熱海行き電車に乗り、そして熱海で最後の乗換で戸塚に戻れる。静岡県内の東海道線は快速特急もなく、短い各駅の乗り継ぎを繰り返さねばならず真に不便である。
(なんか出汁の匂いがほんのりと漂ってきたぞ・・・)
ホームの先頭方向に歩いていくと、立ち食い蕎麦屋をみつけた。「桃中軒」っていう店の名前、たしか沼津か三島の駅弁屋だったな。駅弁屋の立ち食い蕎麦といえば、伊東の祇園、高崎駅の「たかべん」などを思いだし、期待してしまうぞ。

まだ10分以上あるから、食べるか。海老と野菜の掻き揚げ・・・・・・か、旨そうだ。
「掻き揚げ蕎麦をお願いします」
ハイヨ! と、狭い厨房から元気のいい返事があって調理に取り掛かる。
吹きさらしのホームでしかも囲いなしだから換気問題なし、3密も、ディスタンスやらも空いているからまったくもって無問題(モーマンタイ)。コロナ禍では、こういうホームの立ち食い蕎麦屋はなかなか貴重だと思う。
(あれっ、なんか遅いなぁ・・・)

よく見ると「ご注文をいただいてから掻き揚げを揚げます」と書いてあるではないか。し、しまった。かけそばにしておくべきだったか。
天ぷらをあらかじめ揚げてないとはどちらかというと喜ぶところだけど、静岡で何度も乗り換えているので、できれば次の電車も逃したくないのでヒジョーに微妙だ。

「おまちどお様でした!」
視線を、腕時計と厨房にせわしく往復させていると、声がかかった。あと4分か。
くそっ、慌てることの大嫌いなわたしだが、ここは揚げたて天ぷらを後回しにして、蕎麦から攻める。半分くらいまでガンガン攻めちゃう。
そうして漸く、天ぷらを齧る。熱い。ハフハフしながら頬張る天ぷらはさくさくだ。甘辛のつゆに浸して、少しでも温度を下げてからかぶりつく。海老と玉ねぎが旨い。小海老、玉ねぎ、人参くらいまではわかるが、入線のアナウンスが始まり、それ以上追及しているヒマなどこれっぽちもない。
旨かったが、慌ただしかった。注文してから天ぷらを揚げる立ち食い蕎麦、嬉しいけど忙しかった。
さて、3月・4月に読んだ本ですが、両月でなんとかの10冊、年間累計で18冊です。
1. ○破門 黒川博行 文春文庫
2. ○憂食論 柏井壽 講談社
3. ◎あきない世傳金と銀八 瀑布篇 高田郁 ハルキ文庫
4. ○葬られた勲章 上 リー・チャイルド 講談社文庫
5. ○葬られた勲章 下 リー・チャイルド 講談社文庫
6. ○スパイ武士道 池波正太郎 新潮文庫
7. ○旅路 上 池波正太郎 文春文庫
8. ○旅路 下 池波正太郎 文春文庫
9. ◎草花たちの静かな誓い 宮本輝 集英社文庫
10. ○暗約領域 新宿鮫Ⅺ 大沢在晶 光文社
「あきない世傳金と銀八 瀑布篇」は予約後、ずいぶん待たされたがいつも通りさすがに面白かった。次の九冊目がすぐにでも読みたくなる終わり方でまいった。なにしろ図書館読みだから半年くらいは待たねばならないのが辛い。
「葬られた勲章」の上下2巻、上巻が面白くないのは洋モノの常だが下巻に入っても残念ながらあまり面白くなかった。
8年ぶりに読む、新宿鮫シリーズ11冊目「暗約領域」はとにかく重かった。内容というよりも、ハードカバーで709ページあるから、マジな話、本に重量がありかさばるので持ち運びして読み切るまで大変だった。
「旅路」上下二巻だが、池波正太郎の文章は実に読みやすいと思う。すらすら読んでいて、思わず眼がとまった文章があった。読みやすいが、池波の本にはこういう処が結構あるのである。
『「人の世などというものは、な……」
と、木村又右衛門はいった。
「それぞれの、ひとの勘ちがいによって、成り立っているようなものじゃ。それが、この年齢になってみて、
よくわかるようになってきた」
人間たちの頭で考える推定とか予測とかいうものほど、
「当てにならぬものはない」
木村はそういうのだ。
親と子の間柄でも、肉親どうしでも、人と人とが真に理解し合うことは不可能であり、まして他人どうしが、
あれこれと、たがいに、おもいをめぐらしてみたところで、それがぴたりと適中していることは、
ほとんどないといってよい。
これが、木村又右衛門の信念のようなもので、
「それがわかったとき、わしは、すっかり気が楽になってな。それからはもう、
よけいなことを考えずにすむようになった」』
文春文庫 池波正太郎著「旅路」下巻より

宮本輝の「草花たちの静かな誓い」からは短いが心にとまった文章を。
『心配しても仕方のないことは心配するな・・・・・・。
うん、これは極意だなと弦矢は思って笑みを浮かべた。
気に病んでもどうにもならないことをつねに気に病む人がいる。不幸というものはいつも
そこから生まれて来るのかもしれない。』
なんか、二つの引用は、このご時世にぴったりあてはまるような言葉ではあるな。
→「読んだ本 2021年2月」の記事はこちら
→「高崎駅、たかべんのラーメン」の記事はこちら
→「伊東のいなり寿司」の記事はこちら
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