温泉クンの旅日記

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塩原温泉(1)

2018-06-10 | 温泉エッセイ
  <塩原温泉(1)>

「どうなっているんだ、まったく!」



 いつ来ても使用中じゃないか。ドアの「入浴中」の札をみて思わずひとりごとを口に出してしまう。夕食を早めに切りあげ、タオルを引っ提げて食事会場を出ると胸弾ませて小走りにやって来たのにダメか。



 この「光雲荘」の男湯と女湯の間にある貸切(家族)風呂は、宿泊者なら空いていれば無料で使用できるのだが、なんとしたことか、何度来ても使用(入浴)中なのである。宿泊者のほとんどはまだ食事中のはずなのに・・・。



(ひょっとして、まさか・・・)
 ドアノブを握り、軽く左に廻してみるとカチャリと音がする。くそっ、なんと内鍵がロックされていない。なんと途端に胸がまたもや弾んでくる。失礼します、念のため声をかけながらドアを引き開ける。手早くも慎重にチェックすると誰もいない。
 浴衣を脱ぎすてて、浴室に入ってみるとタイルがすっかり乾いていて、かなり前から無人だったことがわかる。オ―・マイ・ガァーッドォ!



 湯の温度はベストマッチ、四十二度くらいだろう。温泉の香りも成分もここが一番濃いようだ。
 浴槽は狭く、丁度畳一枚くらいで、ひとりなら丁度いい広さである。掛け湯を何杯もしているうちに向かっ腹もすっかり消えてしまったのが不思議だ。貸切風呂の外の露天風呂は入るには湯の温度が低すぎて断念する。



 大浴場の露天風呂は「ほほぅ・・・これは」と思わず唸るほどの趣であった。塩原では最大級の広さだという。



 男湯と女湯の境、つまり中央部分に仕切が入り組んだ混浴ゾーンがあるらしいが確認するつもりもなかったのでよくわからない。
 源泉名「光雲荘源泉」の湧出量は毎分二百リットル、一日で約三百トン近く湧き出る自家源泉だから、「沸かし」も「循環」など一切ないのが自慢である。



 しかし、いかんせん外気温がこの日は低すぎた。わたしの体感では三十七、八度ぐらいといったところか。湯から出ている身体の部分が渡る風にひんやりして温泉の効能を味わうどころでない。温泉の香りも風が運び去っていってしまっていた。首まで浸かっても湯の温みがしみわたりそうもなく、早々にあきらめて遁げだしてしまった。

 L字型のような内湯のほうは四十度ちょっとといった感じで、露天で冷えた身体が活きかえった心地である。



 泉温七十三度の「ナトリウム・塩化物・炭酸水素塩泉」。メタケイ酸が多く含有していて、肌が潤う保湿成分がたっぷりの肌への当たりがつるつるしている湯だ。ただ鮮度というか、湯が身体を抱きすくめる按配が、こちらの内湯も(贅沢言えばだが)もうひとつもの足りなかったのである。


  ― 続く ―


   →「バレバレ」の記事はこちら

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