<報国寺の竹林(1)>
なるほど・・・「竹寺」とはよくいったものだ。
竹の香りに満ちた径に一歩入ると、竹林がつくりだす日陰のせいで周りの気温が数度下がったような気がした。さきほどまで背中に流れおちていた汗もとまったようだ。
「竹の庭」と呼ぶ、境内の庭園の孟宗竹林は約二千本あるという。
見あげていると、竹林のはるか手の届かない上の新緑のとこらへんを、風がさやさやと囁きながら渡っている。どこかで、まさにいま生まれたばかりのような風が。
夏を思い知らされる強い陽射しも、折り重なる堅い鋭さをもった緑の葉叢を揺らしながら、砕き濾されて軟らかく降りそそいでいる。
これはどうも、腰をおろして竹林を眺めながら抹茶をゆるりと喫すればよかった雰囲気だったようである。
庭園の拝観料は二百円だが、五百円プラスして七百円だすと竹林の中にある茶席「休耕庵(きゅうこうあん)」で抹茶と茶菓子が供される。
ぐるりと径をめぐって本堂裏のひらけた、竹の香りが遠のいた一角に出ると、外国語を話す観光客たちが屯して休んでいた。
「どうして近くの鎌倉を書かないのか?」
ほどよく酔ってきたところで、眼が座ってきた友人が斬り込むように鋭く訊く。
ジツは鎌倉を突っ込まれるのは初めてではない。戸塚・鎌倉間は駅で三つ、所要時間は十二分、戸塚・横浜間と一緒である。いつでもいけるところは、どうもいまひとつ食指がね・・・なんとか逃れようとモゴモゴいい加減な言い訳をするわたしに、
「いまや読んでいるひとは神奈川県民や首都圏のひとばかりじゃないだろう。それに『堂社物詣好き』と謳ってけっこうあちこちの神社仏閣の記事を書いているじゃないか。近場の古都鎌倉をまるで無視するのも、それって『不誠実』だよ」
「・・・・・・」
有無を言わさぬ「秘剣 不誠実」で豪快袈裟がけにばっさり切り捨てられちまった。たしかにそうかもしれない。じわじわと納得してしまった。しかし、すぐに従うのも業腹だ。
そんなこといったかなあ、とヤツが忘れるくらいたっぷり月日を置いて、今朝早起きして鎌倉に出かけてきたのであった。
― 続く ―
なるほど・・・「竹寺」とはよくいったものだ。
竹の香りに満ちた径に一歩入ると、竹林がつくりだす日陰のせいで周りの気温が数度下がったような気がした。さきほどまで背中に流れおちていた汗もとまったようだ。
「竹の庭」と呼ぶ、境内の庭園の孟宗竹林は約二千本あるという。
見あげていると、竹林のはるか手の届かない上の新緑のとこらへんを、風がさやさやと囁きながら渡っている。どこかで、まさにいま生まれたばかりのような風が。
夏を思い知らされる強い陽射しも、折り重なる堅い鋭さをもった緑の葉叢を揺らしながら、砕き濾されて軟らかく降りそそいでいる。
これはどうも、腰をおろして竹林を眺めながら抹茶をゆるりと喫すればよかった雰囲気だったようである。
庭園の拝観料は二百円だが、五百円プラスして七百円だすと竹林の中にある茶席「休耕庵(きゅうこうあん)」で抹茶と茶菓子が供される。
ぐるりと径をめぐって本堂裏のひらけた、竹の香りが遠のいた一角に出ると、外国語を話す観光客たちが屯して休んでいた。
「どうして近くの鎌倉を書かないのか?」
ほどよく酔ってきたところで、眼が座ってきた友人が斬り込むように鋭く訊く。
ジツは鎌倉を突っ込まれるのは初めてではない。戸塚・鎌倉間は駅で三つ、所要時間は十二分、戸塚・横浜間と一緒である。いつでもいけるところは、どうもいまひとつ食指がね・・・なんとか逃れようとモゴモゴいい加減な言い訳をするわたしに、
「いまや読んでいるひとは神奈川県民や首都圏のひとばかりじゃないだろう。それに『堂社物詣好き』と謳ってけっこうあちこちの神社仏閣の記事を書いているじゃないか。近場の古都鎌倉をまるで無視するのも、それって『不誠実』だよ」
「・・・・・・」
有無を言わさぬ「秘剣 不誠実」で豪快袈裟がけにばっさり切り捨てられちまった。たしかにそうかもしれない。じわじわと納得してしまった。しかし、すぐに従うのも業腹だ。
そんなこといったかなあ、とヤツが忘れるくらいたっぷり月日を置いて、今朝早起きして鎌倉に出かけてきたのであった。
― 続く ―
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