<志摩の国温泉(3)>
「えっ!」
巻き寿司と厚い出汁巻き玉子の皿も運ばれて、すっと卓に載せられ驚いた。
お凌ぎ”なのだろうか、まったく献立にはなかったものである。
まいったな。右端の器を開けてみると、香の物だったので少しホッとした。
揚物のフライは、ひとつは鮟鱇だと覚えているがもうひとつは忘れてしまった。
隣の個室はどうやらゴルフ旅のビジネスマン二人組で、壁の上が抜けているので筒抜けでお喋りが聞こえてくる。ゴルフの話、仕事の失敗談、成功談、美食の話と続き、苦労話と最近の家族の話に着地している。
なんか湿っぽくなってきたので、猫のように耳をパタッと伏せることにした。
昼を軽くしておいたおかげだろう。ようやく辿りついた食事は、海鮮しらす茶漬け、茶漬け出汁、香の物。“しらす”は公言していないが大好物、なんとか美味しく食べきった。
本日の締めのデザートの盛り合わせ。爽やかな果物とよく冷えたアイスが、なんとも口なおしにぴったりだった。
よし、夕食のミッション無事に完了。
勇んで個室を出ようとするわたしに、
「こちらはお夜食になりますので、お部屋にお持ち帰りください」
「ええーっ!」。(うそっ。もう、喰えないって!)
「残されてもかまいませんので」
夜食をもったまま温泉にいくわけにもいかないので、とりあえず部屋に置きにいった。身軽になったところで、まずは貸切風呂だ。
フロント横にいくと、幸い入っていない「陶器風呂 陶海の湯」の札があった。
少し小さめの陶器の丸い風呂で、仲のいい、しかも太ってない二人で入るにはぴったりぐらいだろう。
少しでも夜食に手をつけようと思い、内風呂にもいくことにした。
志摩はわりと自家源泉の宿は数少ない土地だ。
平成16年(2004年)開湯の「志摩の国温泉 朝寝坊の湯」は、宿の敷地内より毎日100tも湧き出るという。
ほのかな硫黄の匂いと薄茶色のお湯が特徴だというが、匂いはわたしの鼻ではあるかなきかに薄い。泉温は18.7度、泉質は「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉」。冷鉱泉なので加温はいたしかたない。
いつもより食べたとはいえ、けっこう呑んでいる。汗ばんできたところで、風呂をあがる。
二階の廊下に飾られた絵をひと渡り観賞してから、部屋に戻る。宿の主か女将の趣味だろうか、悪くない。
夜食の弁当箱を開けてみると、小さい俵型のおむすびが綺麗に四つ入っていた。
せっかくの心づくしである。
温泉で汗かいたのでもうすこし経てば、二つ三つくらいはなんとか食べられそうだ。
― 続く ―
→「志摩の国温泉(1)」の記事はこちら
→「志摩の国温泉(2)」の記事はこちら
「えっ!」
巻き寿司と厚い出汁巻き玉子の皿も運ばれて、すっと卓に載せられ驚いた。
お凌ぎ”なのだろうか、まったく献立にはなかったものである。
まいったな。右端の器を開けてみると、香の物だったので少しホッとした。
揚物のフライは、ひとつは鮟鱇だと覚えているがもうひとつは忘れてしまった。
隣の個室はどうやらゴルフ旅のビジネスマン二人組で、壁の上が抜けているので筒抜けでお喋りが聞こえてくる。ゴルフの話、仕事の失敗談、成功談、美食の話と続き、苦労話と最近の家族の話に着地している。
なんか湿っぽくなってきたので、猫のように耳をパタッと伏せることにした。
昼を軽くしておいたおかげだろう。ようやく辿りついた食事は、海鮮しらす茶漬け、茶漬け出汁、香の物。“しらす”は公言していないが大好物、なんとか美味しく食べきった。
本日の締めのデザートの盛り合わせ。爽やかな果物とよく冷えたアイスが、なんとも口なおしにぴったりだった。
よし、夕食のミッション無事に完了。
勇んで個室を出ようとするわたしに、
「こちらはお夜食になりますので、お部屋にお持ち帰りください」
「ええーっ!」。(うそっ。もう、喰えないって!)
「残されてもかまいませんので」
夜食をもったまま温泉にいくわけにもいかないので、とりあえず部屋に置きにいった。身軽になったところで、まずは貸切風呂だ。
フロント横にいくと、幸い入っていない「陶器風呂 陶海の湯」の札があった。
少し小さめの陶器の丸い風呂で、仲のいい、しかも太ってない二人で入るにはぴったりぐらいだろう。
少しでも夜食に手をつけようと思い、内風呂にもいくことにした。
志摩はわりと自家源泉の宿は数少ない土地だ。
平成16年(2004年)開湯の「志摩の国温泉 朝寝坊の湯」は、宿の敷地内より毎日100tも湧き出るという。
ほのかな硫黄の匂いと薄茶色のお湯が特徴だというが、匂いはわたしの鼻ではあるかなきかに薄い。泉温は18.7度、泉質は「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉」。冷鉱泉なので加温はいたしかたない。
いつもより食べたとはいえ、けっこう呑んでいる。汗ばんできたところで、風呂をあがる。
二階の廊下に飾られた絵をひと渡り観賞してから、部屋に戻る。宿の主か女将の趣味だろうか、悪くない。
夜食の弁当箱を開けてみると、小さい俵型のおむすびが綺麗に四つ入っていた。
せっかくの心づくしである。
温泉で汗かいたのでもうすこし経てば、二つ三つくらいはなんとか食べられそうだ。
― 続く ―
→「志摩の国温泉(1)」の記事はこちら
→「志摩の国温泉(2)」の記事はこちら
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