<読んだ本 2011年1月>
「うっひゃあ~、やれやれ。危ないとこだったぜ!」
戸塚駅で、最終電車のドアが閉まる寸前に飛び降りた。
深酒をして電車に乗って座るとついつい寝入ってしまい、遠くまで深夜旅をしてしまう。
座らなければ寝ないはずだと、東京からひとつ前の横浜まで吊革につかまり立っていても、横浜で目の前の客が降りると悲しい習性でいそいそと座っちゃうのだ。横浜から戸塚の間は、東海道線のなかで駅間が一番長く、所要時間12分かかるので途中で瞼をうっかり閉じてふっと落ちてしまうのである。そうしていつも大枚はたいてタクシー業界に貢献するのだった。
なにはともあれ今日のところは助かった。
安心したら急に腹が減ってくる。酒を呑むときにはほとんど食べないほうなのだ。
いつもの西口ではなく、東口方面に出た。駅の構内から一歩外に出るとさすがに寒い。
思ったとおり、灯りのすっかり消えたスーパーの正面玄関にラーメンの屋台はいた。
赤い、夜に滲むような提灯がいかにも暖かげである。
屋台といってもリヤカーではなく、小型トラックを改造したものだ。車の前部、客席の横には風避けの、衝立が立ててある。
空いている椅子に座り、一番安いラーメンを注文する。
(あのまま小田原までいけば一万数千円かかったはずだ。そう思えば、六百円くらい、夜食にかけても問題ないよな)
冬の凍えるような深夜、温かいラーメンはなによりのご馳走だ。
他の客だが、もう電車は走っていない午前一時だ。果たしてわたしと同じようにこの近辺に住んでいるのであろうかと、素朴な疑問がいつも浮かぶ。
その夜のラーメンを最後にわたしは、寝過ごすことも心配いらない毎年恒例の禁酒期間にはいったのであった。
読んだ本ですが、今月は7冊、去年の72冊を今年は最低限の目標として、それを越えたいと思っています。
1.○エコーパーク (上) マイクル・コナリー 講談社
2.◎エコーパーク (下) マイクル・コナリー 講談社
3. ◎リンカーン弁護士 (上)マイクル・コナリー 講談社
4. ◎リンカーン弁護士 (下)マイクル・コナリー 講談社
5. ○天使は振り返る (上) グレッグ・アイルズ 講談社
6. ○天使は振り返る (下) グレッグ・アイルズ 講談社
7. ◎ソウル・コレクター ジェフリー・ディバー 文芸春秋
今月は去年のちょんまげモノの反動なのか、洋モノばかりとなってしまった。ただ、総体的に充実した読書生活を送れた。
「リンカーン弁護士」は、コナリー初のリーガル・サスペンスである。
主人公はタウン・カーの“リンカーン”を事務所代わりにつかう刑事弁護士、ミッキー・ハラー。
『・・・法は真実を扱うものではない。法は交渉と改善と、改竄を扱うものだ。わたしは有罪と無罪を
問わない。なぜなら、だれもが有罪だからだ。なにかについての。だが、それはどうでもいい。わたしが
取り組むすべての事件が、過重労働と不当に安い給与で働かされる労働者がこしらえた基礎に築かれた
家だからだ。彼らは手抜きをする。ミスをする。最後には嘘でミスを糊塗する。わたしの仕事は糊を
剥がし、ひび割れを見つけることだ。指と道具をそのひび割れに差しこみ、広げるために、ひび割れを
大きくして、家が倒れるか、あるいはそれに失敗しても、依頼人がすり抜けることができるように。
社会の多くの人間がわたしを悪魔と考えているが、彼らはまちがっている。わたしは油で汚れた
天使なのだ。わたしこそまさに真の市井の聖人だ。わたしは必要とされ、望まれている。両方の側に。
わたしは機械のなかのオイルなのだ。わたしはエンジンをかけ、回転させるギアを作動させる。司法制度の
エンジンを動かしつづけるのに手を貸している・・・』
この本、ハラハラドキドキで物凄く面白かった。二重丸の上を点けてもいいくらいだった。ぜひシリーズにしてほしいものだ。
「天使は振り返る」は、こちらもどちらかというと法廷サスペンスだが、この著者にしてはあまり満足できるものではなかった。だが、無実の親友を助けるために独自に調査しているうちに容疑者のひとりの麻薬密売人に拉致監禁されて、ヘロイン中毒にされてしまうシーンあたりでは、思わず引き込まれてしまった。
順番が、面白過ぎた「リンカーン弁護士」のすぐあとだったのがいけなかったのかもしれない。
「ソウル・コレクター」は、主人公リンカーン・ライムの大好きなシリーズである。今回も、完全犯罪を目論む難敵の殺人犯に立ち向かうという、もの凄く胸躍る一冊であった。
チームのなかの新人の巡査がIT関係の企業を捜査していく段階で、自分のコンピューターに関する能力にコンプレックスを感じて、勉強しようと思い立つのを、リンカーンが諭す。
『人間というのは、思いもかけないことで他人を下に見ようとするものだ。自分が知らないことを相手が知って
いるというだけで、相手の言うことが合っていて、自分が間違っていると決めつけてはいけない。考えるべき
ことはほかにもある。仕事で力を発揮するのにその知識がぜひとも必要か否か、だよ。必要なら、学べ。
必要ではないなら、時間の無駄になるだけだ。忘れろ』
なんかこれ、わたしにも通用しそうなアドバイスである。
→「読んだ本 2010年12月」の記事はこちら
「うっひゃあ~、やれやれ。危ないとこだったぜ!」
戸塚駅で、最終電車のドアが閉まる寸前に飛び降りた。
深酒をして電車に乗って座るとついつい寝入ってしまい、遠くまで深夜旅をしてしまう。
座らなければ寝ないはずだと、東京からひとつ前の横浜まで吊革につかまり立っていても、横浜で目の前の客が降りると悲しい習性でいそいそと座っちゃうのだ。横浜から戸塚の間は、東海道線のなかで駅間が一番長く、所要時間12分かかるので途中で瞼をうっかり閉じてふっと落ちてしまうのである。そうしていつも大枚はたいてタクシー業界に貢献するのだった。
なにはともあれ今日のところは助かった。
安心したら急に腹が減ってくる。酒を呑むときにはほとんど食べないほうなのだ。
いつもの西口ではなく、東口方面に出た。駅の構内から一歩外に出るとさすがに寒い。
思ったとおり、灯りのすっかり消えたスーパーの正面玄関にラーメンの屋台はいた。
赤い、夜に滲むような提灯がいかにも暖かげである。
屋台といってもリヤカーではなく、小型トラックを改造したものだ。車の前部、客席の横には風避けの、衝立が立ててある。
空いている椅子に座り、一番安いラーメンを注文する。
(あのまま小田原までいけば一万数千円かかったはずだ。そう思えば、六百円くらい、夜食にかけても問題ないよな)
冬の凍えるような深夜、温かいラーメンはなによりのご馳走だ。
他の客だが、もう電車は走っていない午前一時だ。果たしてわたしと同じようにこの近辺に住んでいるのであろうかと、素朴な疑問がいつも浮かぶ。
その夜のラーメンを最後にわたしは、寝過ごすことも心配いらない毎年恒例の禁酒期間にはいったのであった。
読んだ本ですが、今月は7冊、去年の72冊を今年は最低限の目標として、それを越えたいと思っています。
1.○エコーパーク (上) マイクル・コナリー 講談社
2.◎エコーパーク (下) マイクル・コナリー 講談社
3. ◎リンカーン弁護士 (上)マイクル・コナリー 講談社
4. ◎リンカーン弁護士 (下)マイクル・コナリー 講談社
5. ○天使は振り返る (上) グレッグ・アイルズ 講談社
6. ○天使は振り返る (下) グレッグ・アイルズ 講談社
7. ◎ソウル・コレクター ジェフリー・ディバー 文芸春秋
今月は去年のちょんまげモノの反動なのか、洋モノばかりとなってしまった。ただ、総体的に充実した読書生活を送れた。
「リンカーン弁護士」は、コナリー初のリーガル・サスペンスである。
主人公はタウン・カーの“リンカーン”を事務所代わりにつかう刑事弁護士、ミッキー・ハラー。
『・・・法は真実を扱うものではない。法は交渉と改善と、改竄を扱うものだ。わたしは有罪と無罪を
問わない。なぜなら、だれもが有罪だからだ。なにかについての。だが、それはどうでもいい。わたしが
取り組むすべての事件が、過重労働と不当に安い給与で働かされる労働者がこしらえた基礎に築かれた
家だからだ。彼らは手抜きをする。ミスをする。最後には嘘でミスを糊塗する。わたしの仕事は糊を
剥がし、ひび割れを見つけることだ。指と道具をそのひび割れに差しこみ、広げるために、ひび割れを
大きくして、家が倒れるか、あるいはそれに失敗しても、依頼人がすり抜けることができるように。
社会の多くの人間がわたしを悪魔と考えているが、彼らはまちがっている。わたしは油で汚れた
天使なのだ。わたしこそまさに真の市井の聖人だ。わたしは必要とされ、望まれている。両方の側に。
わたしは機械のなかのオイルなのだ。わたしはエンジンをかけ、回転させるギアを作動させる。司法制度の
エンジンを動かしつづけるのに手を貸している・・・』
この本、ハラハラドキドキで物凄く面白かった。二重丸の上を点けてもいいくらいだった。ぜひシリーズにしてほしいものだ。
「天使は振り返る」は、こちらもどちらかというと法廷サスペンスだが、この著者にしてはあまり満足できるものではなかった。だが、無実の親友を助けるために独自に調査しているうちに容疑者のひとりの麻薬密売人に拉致監禁されて、ヘロイン中毒にされてしまうシーンあたりでは、思わず引き込まれてしまった。
順番が、面白過ぎた「リンカーン弁護士」のすぐあとだったのがいけなかったのかもしれない。
「ソウル・コレクター」は、主人公リンカーン・ライムの大好きなシリーズである。今回も、完全犯罪を目論む難敵の殺人犯に立ち向かうという、もの凄く胸躍る一冊であった。
チームのなかの新人の巡査がIT関係の企業を捜査していく段階で、自分のコンピューターに関する能力にコンプレックスを感じて、勉強しようと思い立つのを、リンカーンが諭す。
『人間というのは、思いもかけないことで他人を下に見ようとするものだ。自分が知らないことを相手が知って
いるというだけで、相手の言うことが合っていて、自分が間違っていると決めつけてはいけない。考えるべき
ことはほかにもある。仕事で力を発揮するのにその知識がぜひとも必要か否か、だよ。必要なら、学べ。
必要ではないなら、時間の無駄になるだけだ。忘れろ』
なんかこれ、わたしにも通用しそうなアドバイスである。
→「読んだ本 2010年12月」の記事はこちら
で、なぜにコメントを残したかと言うと、「戸塚」の2文字が、ちょくちょくいろいろな記事に登場したからであります。
えー、わたくしも一番近い駅は戸塚駅でありまして、きっとご近所さんなんだろうと思い、ご挨拶がてらコメントを残しました。
伊豆の温泉の記事参考になりました。これからも情報収集のために、こちらを利用させていただきます。よろしくお願いします。
伊豆の記事で訪れていただいたのことですが、これからもよろしくお願いいたします。
雪で遠くへの車旅ができないときだけ伊豆に行くので、記事数は少ないので誠に申し訳ありません。
戸塚近辺にお住まいだそうで、意外とどこかですれ違っているかもしれませんね。
これをご縁に気軽に立ち寄っていただければ幸いです。
返信がタイムリーでなくてたいへん失礼いたしました。(温泉クン)