<柏倉温泉、桜花爛漫の宿(4)>
「ヤバい。あああ、虻(あぶ)かよ!」
階段を昇りはじめ、五段ほどあがったところで「ぷーん!」と耳に羽音が入ってきて焦る。虻が出るにはすこし早いから蜂かもしれないが、どちらにしても危なさに変わらないし、たしかめている余裕などない。降りるか昇るか、一瞬で選択しなければならない。
ここの急階段の手すりは低すぎるし、蹴上(たかさ)は普通だが踏面(奥行き)の寸法が少なく普通の半分ほどくらいで昇りづらいことこのうえない。
茅の輪くぐりも作法通りしたことだし、えーい昇ってしまえ。
左手で手すり、右手で階段を掴み、良く言えばスパイダーマンか城壁をするするとよじ登る忍者のように、虻の羽音に追われて両手両足を使い猛スピードで昇っていく。遠くからみたら、クライミング・ボルダリングの練習と映ったかもしれない。
無病息災を祈る神事が<茅(ち)の輪くぐり>で、通常は六月の晦日の夏越祓(なごしのはらえ)、十二月晦日の大祓(おおはらえ)に行われるのだが桜の四月は珍しい。
くぐり方には作法がある。
まず前に立って一礼し、左足からまたいで輪をくぐり左廻りにまわって元の位置へ戻る。次に前で一礼し、右足からまたいで輪をくぐり右廻りにまわって元の位置へ戻る。さらに前に立って一礼し、左足からまたいで輪をくぐり左廻りにまわって元の位置へ戻る。
そうしてまた前で一礼し、左足からまたいで輪をくぐって神前に進みお参りするわけだが、この聖徳太子神社の拝殿は急階段を昇らねばならなかったのである。
森閑とした離れでぐっすり眠ったのと、ゆっくり入った朝風呂のせいで朝食がことのほか旨かった。
大盛りご飯をぺろりと二杯食べきった。最近みかけないことが多いが焼き海苔でもあればもう一杯軽めでいけたな。
栃木と同じ海なし県、群馬の湯宿の朝食で定番の<鮎の一夜干し>は平均的な味、つまりこれをメインのおかずにしたらご飯がすすまなかっただろう。
高い・・・な。昇りきって見下ろすとけっこう高所である。急な運動で汗ばんでいたのだが、瞬間、ひんやりとした冷たい汗に変わる。
(そういえば・・・朝食のときに訊いたら、ゆるやかな遊歩道もあると言っていたな)
自分が高所恐怖症だったことをいまさらながら思いだす。下りの階段は落ちたらただではすまなそうだ。
創業は大正時代だそうだが、ここは宿に神社があるのではなく、神社が宿もやっていると考えるほうが正解だな。
まったくゆるやかと思えない遊歩道をゆっくり辿りながら思うのだった。
→「柏倉温泉、桜花爛漫の宿(1)」の記事はこちら
→「柏倉温泉、桜花爛漫の宿(2)」の記事はこちら
→「柏倉温泉、桜花爛漫の宿(3)」の記事はこちら
→「続・谷川温泉(2)」の記事はこちら
「ヤバい。あああ、虻(あぶ)かよ!」
階段を昇りはじめ、五段ほどあがったところで「ぷーん!」と耳に羽音が入ってきて焦る。虻が出るにはすこし早いから蜂かもしれないが、どちらにしても危なさに変わらないし、たしかめている余裕などない。降りるか昇るか、一瞬で選択しなければならない。
ここの急階段の手すりは低すぎるし、蹴上(たかさ)は普通だが踏面(奥行き)の寸法が少なく普通の半分ほどくらいで昇りづらいことこのうえない。
茅の輪くぐりも作法通りしたことだし、えーい昇ってしまえ。
左手で手すり、右手で階段を掴み、良く言えばスパイダーマンか城壁をするするとよじ登る忍者のように、虻の羽音に追われて両手両足を使い猛スピードで昇っていく。遠くからみたら、クライミング・ボルダリングの練習と映ったかもしれない。
無病息災を祈る神事が<茅(ち)の輪くぐり>で、通常は六月の晦日の夏越祓(なごしのはらえ)、十二月晦日の大祓(おおはらえ)に行われるのだが桜の四月は珍しい。
くぐり方には作法がある。
まず前に立って一礼し、左足からまたいで輪をくぐり左廻りにまわって元の位置へ戻る。次に前で一礼し、右足からまたいで輪をくぐり右廻りにまわって元の位置へ戻る。さらに前に立って一礼し、左足からまたいで輪をくぐり左廻りにまわって元の位置へ戻る。
そうしてまた前で一礼し、左足からまたいで輪をくぐって神前に進みお参りするわけだが、この聖徳太子神社の拝殿は急階段を昇らねばならなかったのである。
森閑とした離れでぐっすり眠ったのと、ゆっくり入った朝風呂のせいで朝食がことのほか旨かった。
大盛りご飯をぺろりと二杯食べきった。最近みかけないことが多いが焼き海苔でもあればもう一杯軽めでいけたな。
栃木と同じ海なし県、群馬の湯宿の朝食で定番の<鮎の一夜干し>は平均的な味、つまりこれをメインのおかずにしたらご飯がすすまなかっただろう。
高い・・・な。昇りきって見下ろすとけっこう高所である。急な運動で汗ばんでいたのだが、瞬間、ひんやりとした冷たい汗に変わる。
(そういえば・・・朝食のときに訊いたら、ゆるやかな遊歩道もあると言っていたな)
自分が高所恐怖症だったことをいまさらながら思いだす。下りの階段は落ちたらただではすまなそうだ。
創業は大正時代だそうだが、ここは宿に神社があるのではなく、神社が宿もやっていると考えるほうが正解だな。
まったくゆるやかと思えない遊歩道をゆっくり辿りながら思うのだった。
→「柏倉温泉、桜花爛漫の宿(1)」の記事はこちら
→「柏倉温泉、桜花爛漫の宿(2)」の記事はこちら
→「柏倉温泉、桜花爛漫の宿(3)」の記事はこちら
→「続・谷川温泉(2)」の記事はこちら
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