<石和温泉(3)>
早朝である。内風呂「大岩風呂 信玄」は、喉に良さそうなもうもうたる湯気に包まれていた。

「ほぉー、こっちは岩風呂なんだ!」
到着日の前日に入った風呂は深夜の午前一時で終わり、二時間の清掃時間を掛けて、午前三時から男女の風呂が入れ替わる。

身体がまだ目覚め切れていないから、入浴前のルーティンである掛け湯を朝は入念に浴びる。朝の血圧の乱高下から身体を若干でも守り防ぐためである。脱衣所で、冷水を紙コップで一杯飲むのも朝の入浴前の習慣だ。


外の「露天風呂 風林」も風情があり、どちらかというと昨日の露天より好みだ。
この露天風呂は朝の爽やかな大気に実にふさわしい。

入替風呂となった朝になんと入浴を敬遠する女性がいるという。
脱衣所を清掃しても「もう! 女風呂なんだからシェービングクリームなんか片づけといてよ!」、浴槽の湯を抜いて新しい湯に取り替えても「とにかく男が使ったあとなんて厭なの!」というケッペキーン女子。 こっちにはパウダールームがないから無理、という小梅太夫風(失礼!)のマダム淑女たち。
その昔、男風呂のほうが女風呂より断然見晴らしもよく広かったが、怒涛のような<男女同権だ・差別だ・不公平だ>の大波は温泉宿の業界も等しく襲った。
その結果もあってのせっかくの男女入替風呂、両方入らずに帰るのはわたしにすれば、ただただ<もったいない>の一語である。
至福の二度寝から目覚め、昨日と同じバイキング会場で軽めの朝食を食べると、満員の陣容を確かめて見晴らしのいい貸切風呂に向かった。
このホテルには貸切展望風呂が「ぶらり」と「ゆるり」と二つある。どちらも三人がゆっくり入れる広さがあり、石造りの「ぶらり」が四十五分で二千五百円、和風の「ゆるり」四十五分で三千円である。

その展望風呂が、朝四時から無料で開放され「ぶらり」が男湯、ゆるりが女湯となるのである。

よし、いいぞ。時間を見計らったのが功を奏し、独占だ。
掛け湯をしてゆるゆると身を沈めていく。

石和温泉の泉質はアルカリ性単純泉、泉温四十一度だ。ということは当然加温は必要だし、この規模でさすがに源泉掛け流しではない。温泉通が喜ぶパンチが効いた濃い温泉には程遠い。
石和温泉は、あの城崎温泉と同じように温泉を集中管理しているのだ。(この集中管理している温泉地は結構多い) ただ、大ホテルにありがちなへっぽこ腰ぬけ温泉とはいえぬ、まあまあの温泉だったといっておく。

湯あがりに、屋上に通じるドアが開いていたので出てみた。
(へぇ~、さすがホテルふじの名の通り、本当に富士山が見えるんだ!)


「ホテルふじ」は旅行新聞主催「第44回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」に選ばれている。100選をよくみていくと「えっ、あそこより上なの?」と首を傾げたくなるが、和洋中六十種の創作バイキングと広い部屋、広い温泉などで、名立たる有名旅館を抑えての総合のランク四十九位はとにかくあっぱれ立派といっていい。

きんきんに冷えたコーヒー牛乳をごくごく飲みながら思う。
温泉行脚を始めるずっと前だったため、石和温泉の宿も温泉もどうしても思い出せないことからの「思い立ったが吉日」旅だったが、次回は豊富な湧出量がある自家源泉を持つ宿を選んで再訪したい。
→「石和温泉(1)」の記事はこちら
→「石和温泉(2)」の記事はこちら
→「城崎温泉(1)」の記事はこちら
→「城崎温泉(2)」の記事はこちら
早朝である。内風呂「大岩風呂 信玄」は、喉に良さそうなもうもうたる湯気に包まれていた。

「ほぉー、こっちは岩風呂なんだ!」
到着日の前日に入った風呂は深夜の午前一時で終わり、二時間の清掃時間を掛けて、午前三時から男女の風呂が入れ替わる。

身体がまだ目覚め切れていないから、入浴前のルーティンである掛け湯を朝は入念に浴びる。朝の血圧の乱高下から身体を若干でも守り防ぐためである。脱衣所で、冷水を紙コップで一杯飲むのも朝の入浴前の習慣だ。


外の「露天風呂 風林」も風情があり、どちらかというと昨日の露天より好みだ。
この露天風呂は朝の爽やかな大気に実にふさわしい。

入替風呂となった朝になんと入浴を敬遠する女性がいるという。
脱衣所を清掃しても「もう! 女風呂なんだからシェービングクリームなんか片づけといてよ!」、浴槽の湯を抜いて新しい湯に取り替えても「とにかく男が使ったあとなんて厭なの!」というケッペキーン女子。 こっちにはパウダールームがないから無理、という小梅太夫風(失礼!)のマダム淑女たち。
その昔、男風呂のほうが女風呂より断然見晴らしもよく広かったが、怒涛のような<男女同権だ・差別だ・不公平だ>の大波は温泉宿の業界も等しく襲った。
その結果もあってのせっかくの男女入替風呂、両方入らずに帰るのはわたしにすれば、ただただ<もったいない>の一語である。
至福の二度寝から目覚め、昨日と同じバイキング会場で軽めの朝食を食べると、満員の陣容を確かめて見晴らしのいい貸切風呂に向かった。
このホテルには貸切展望風呂が「ぶらり」と「ゆるり」と二つある。どちらも三人がゆっくり入れる広さがあり、石造りの「ぶらり」が四十五分で二千五百円、和風の「ゆるり」四十五分で三千円である。

その展望風呂が、朝四時から無料で開放され「ぶらり」が男湯、ゆるりが女湯となるのである。

よし、いいぞ。時間を見計らったのが功を奏し、独占だ。
掛け湯をしてゆるゆると身を沈めていく。

石和温泉の泉質はアルカリ性単純泉、泉温四十一度だ。ということは当然加温は必要だし、この規模でさすがに源泉掛け流しではない。温泉通が喜ぶパンチが効いた濃い温泉には程遠い。
石和温泉は、あの城崎温泉と同じように温泉を集中管理しているのだ。(この集中管理している温泉地は結構多い) ただ、大ホテルにありがちなへっぽこ腰ぬけ温泉とはいえぬ、まあまあの温泉だったといっておく。

湯あがりに、屋上に通じるドアが開いていたので出てみた。
(へぇ~、さすがホテルふじの名の通り、本当に富士山が見えるんだ!)


「ホテルふじ」は旅行新聞主催「第44回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」に選ばれている。100選をよくみていくと「えっ、あそこより上なの?」と首を傾げたくなるが、和洋中六十種の創作バイキングと広い部屋、広い温泉などで、名立たる有名旅館を抑えての総合のランク四十九位はとにかくあっぱれ立派といっていい。

きんきんに冷えたコーヒー牛乳をごくごく飲みながら思う。
温泉行脚を始めるずっと前だったため、石和温泉の宿も温泉もどうしても思い出せないことからの「思い立ったが吉日」旅だったが、次回は豊富な湧出量がある自家源泉を持つ宿を選んで再訪したい。
→「石和温泉(1)」の記事はこちら
→「石和温泉(2)」の記事はこちら
→「城崎温泉(1)」の記事はこちら
→「城崎温泉(2)」の記事はこちら
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます