小樽のパパの子育て日記

日々のできごとを徒然なるままに2006年から書いて18年目になりました。
ヤプログから2019年9月に引越し。

散るぞ悲しき

2019-02-04 05:00:05 | 図書館


「國のため 重きつとめを 果たし得て 矢弾つき果て 散るぞ悲しき」
硫黄島総指揮官栗林忠道中将の辞世の句である。
死んでいく兵士たちを「悲しき」と歌うことが、当時、指揮官にとってどれだけ大きなタブーであったか。
いたずらに将兵を死地に追いやった軍中枢部に対する栗林のぎりぎりの抗議であった。
率直にして痛切な本心の発露であったに違いない。
しかし、大本営は、この辞世の「悲しき」を「口惜し」と書き換えて新聞に公表した。

平成6年2月、初めて硫黄島の土を踏んだ天皇はこう詠った。
「精魂を 込め戦ひし 人未だ 地下に眠りて 島は悲しき」
見捨てられた島で任務を全うしようと懸命に戦った栗林以下2万余の将兵たち。
彼らは、その一人一人がまさに「精魂を込め戦ひし人」であった。
この御製は、訣別電報に添えられた栗林の辞世と同じ「悲しき」で結ばれている。
決して偶然ではあるまい。
49年の歳月を超え、新しい時代の天皇は栗林の絶唱を受け止めたのである。

ーー

なんと細やかな取材がされているのだろう。
事実だけが坦々と述べられているようでいて、行間からは筆者の情熱がひしひしと伝わってくる。
圧倒的な取材力と筆力がこのノンフィクションを支えている。
名著。
映画も鑑賞してみたくなった。