2011年度からスタートした新しい学習指導要領では「生きる力」をよりいっそう育むことが求められている。
「生きる力」は教えられるか。
たまたま読んだ雑誌に掲載されていた池上彰氏の特集記事が興味深かったので、以下、自分用メモとして。
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子どもたちの学力が低下していると言われるが、きっかけは、OECDが行った2003年の国際学習到達度調査(PISA)で日本の順位が下がったことによる。
しかし、この年に新たに参加した国や地域が日本より上位に入っただけで、日本の学力はほとんど変わっていない。
戦後、最初の学習指導要領は、国家の強制をやめ教える内容は現場の先生に任せます、という手引書のようなものであった。
冷戦時代にソ連が人工衛星の打ち上げにすると理科の内容を増やしたり、さらに国際競争に負けまいと詰め込み教育が進められた結果、落ちこぼれが増え、授業放棄や校内暴力が深刻化していった。
これではいけないとゆとり教育の必要性が叫ばれ、授業時間が削られ、教える内容も大胆に削減されたが、今度はゆとり教育が学力の低下を招いたとの批判がわき起こった。
最新の学習指導要領では、再び教える内容を増やし、自ら学び考える「生きる力」の育成に重点が置かれている。
日本の教育は、戦後ずっと右往左往してきた。
これまでの学力は、先生が教えてくれた知識を一生懸命覚えて、テストでいい点数を取れれば良いというもので、先進国に追いつこうとしている時代には有効な手法だった。
しかし、すでに先進国に追いついてしまった現在、これまでのような学力では通用しない。
自ら課題を見つけ、一番ふさわしい答えは何だろうかと考えることがこれからの時代を生き抜くために必要な学力だ。
例えば、昔はイイクニ(1192年)と教わった鎌倉幕府の成立が最近ではもっと早かったと言われるようになった。このとき、ただ新しい年号を覚えさせるのではなく、
「そもそも何をもって幕府が成立したとみるのか」
「研究が進めば進むほど歴史は変わっていく」
というところまで踏み込んでみることで学問の面白さも伝わるし、自分で考えさせることにつながる。
「教科書を」教える授業ではなく、「教科書で」教える授業が必要だ。
もちろん基本的な知識事項を教えるのは大事だが、その上で学びの楽しさを伝えることが先生の仕事だ。
学ぶことが楽しいとわかれば、自分でずっと学ぶことができ、結果的にそれが生きる力になる。
決められた枠組みの中で一生懸命に正解を探そうとしてしまうのが日本人の弱いところだ。
「世界の大学ランキング」では欧米の大学が上位を独占しているが、ランキングの指標をつくっているのは、ハーバードやオックスフォードのような欧米のトップレベルの大学で、留学生数や論文の引用数など欧米の大学にとって都合のいいことが指標になっている。日本の大学にとって有利な指標をつくったのなら、日本の大学のランキングはもっと上がるのに、接敵された基準の中でもっと頑張ろうとしている。基準やルールを自分たちで変えていくという発想はない。
今は枠組みをどう決めるかが問われる時代だ。自ら問題点を見つけて上に行くにはどうしたらいいか。
考える力をつけることが若い人に限らず日本人の課題だ。
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「ゆとり」でも、「詰め込み」でもない、「生きる力」。
はたして、自分自身には身についているのだろうか。
参考リンク:文科省HP
新学習指導要領・生きる力