思わぬ事態が起きるのは、旅行の醍醐味である。
事前に予約していたはずのホテルがなぜか予約されていなかったこと、地下鉄が日曜日だったせいで動いておらず駅で待ちぼうけをくらったこと、スマホのWIFIがうまく繋がらなかったことなど、想定外だったことはいくつかあったが、中でも一番大きなトラブルは、飛行機に乗せてもらえなかったことだ。
帰路は、DBX→DEL→HAN→NRT→CTSとLCCを乗り継ぐ計画であった。
帰りの朝、事前に予約しておいた航空券を発券してもらおうと空港のチェックインカウンターに行ったところ、インドへの入国ビザがないとチケットは発券できないという。
インドでは24時間以内のトランスファーであれば例外的に入国ビザが不要であると事前に調べておいたので、その旨を拙い英語で説明するのだが一向に聞き入れてくれない。
乗り継ぎが別の航空会社になる場合には、一旦入国することが必須であるとの一点張りだ。
よく調べてほしいと伝えると、分かったからそこの椅子に座って待てと言われ待っていたのだが、30分待っても呼ばれる気配がない。
そのうちにカウンターに行列ができ始めた。
カウンター業務が忙しくなってくれば状況は好転するはずがないと、意を決して再度カウンターに詰め寄ると、ついにマネージャーが出てきた。
そのマネージャー曰く、インドでの乗り継ぎは、外国人は全て入国ビザが必要で、同じ航空会社の乗り継ぎであれば例外を適用できるが、航空会社が別の場合、その例外は適用されないという。
一旦それは分かったから、それではデリーに着いた際に空港で入国ビザを取得するので、発券だけはしてほしいと伝えるが、私たちインディゴでは、それはできないルールとの一点張り。
では私はどうやって日本に帰ればいいのだと食い下がるが、あなたは新たに航空券を購入するしかない。チケッティングカウンターはあっちだと、それ以上取り合ってくれなくなってしまった。
結局1時間近く粘ったのだが、周りにいた係員たちが投げる自分への哀れむ視線が痛すぎて、ついにギブアップ。
途方にくれて目の前が真っ暗になってしまい、へなへなとベンチに座り込んでしまった。
しっかりと調べていなかった自分をしばらく責めたが、もう過ぎてしまったこと、覆水盆に返らずだ。
よしと気持ちを入れ替えて、ネットの航空券購入サイトで一番早い安価なチケットを探す。
これだというキャセイパシフィック便を見つけてポチろうとするのだが、今度はクレジットカード決済ができない。
へ?
このアラブ首長国連邦では、LINE通話ができないなどインターネット環境の規制があるためだろうか。
念のためにと持っていったクレジットカード3枚ともがすべて使えない。
あっちゃー、まじかー。
パニックになりかけたが、ここでくじけてはならん。
最終手段だが、現地決済ならばできるだろうと、チケッティングカウンターに航空券を買いに行く。
成田まではエアインディア便で約14万円。ネット予約より4万円も高い。
14万円って、当初購入していた往復航空券代とホテル代の合計よりも高いぞと思いながらも背に腹は代えられぬ。
その便でOKと祈る気持ちでカードを差し出した。
無事決済できたときの嬉しさったらよ。
思わず、よっしゃー!と心の中で叫んだ。
ベンチにへたり込んだとき、自分が小学生だったころ、夜中にグランパから電話がかかってきたことを思い出した。
それはマドリッド滞在中、パスポート一式を盗まれてしまったとの電話だったが、子供ながらに途方に暮れているだろうグランパを案じたものだ。
40年以上前に地球の裏側でグランパが味わっていたであろう気持ちを、今自分が味わっているのかと思うと、親子なのだなあと苦笑いのような不思議な気持ちが込み上げてきた。
思わぬトラブルではあったが、大きな経験を積むことができた、旅の良い思い出ができた、忘れかけていたグランパの思い出を呼び起こすことができた、とプラス思考で捉えることにしよう。
そして、当初の予定になかった経験もできた。
インドの空港ラウンジで美味しいインド料理を堪能することができた。
このお兄さんがつくるお好み焼きか春巻みたいなのが熱々で抜群に美味しかった。
バイキング形式の料理のどれもが美味しかったし、注文をとってから淹れてくれたカプチーノも味わい深かった。
さらに、成田で時間ができたせいで、前から気になっていたカプセルホテルにも寄ることができた。
一休みと横になったら一瞬で3時間が経過していた。
ぐっすりと仮眠をとることができた。
シャンプー、タオル、寝具など上質のものだったし、機会があればまた利用したいと思った。第3ターミナルのフードコートでは、お好み焼きも無料で食べることができた。
プライオリティパスはマジ最高。
そして、無事に小樽に帰ってくることができました。
よい経験をさせてもらえた周りみんなに感謝です。