Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

咽喉から手が出る

2005-02-16 | 料理
ペスト菌の運び屋と疑われた渡り鳥がやって来ると、不吉な前兆と見做された。一方、当時の果樹園やワイン畑では、牛糞から女性の髪までさまざまなものが害虫駆除として燃やされた。山焼きによる土地改良と硫黄で樽を燻らすワインの製法が入り混じった害虫駆除のお呪いであった。中世初・中期の社会を象徴するのが、このペストの蔓延と不作である。中世人は野鳥を捕獲して、ネズミや野鳥に宿る蚤がペスト菌を運び、ペスト菌が中世人を襲った。食物連鎖もしくは天敵の連鎖である。

しかし中世末期になると食生活は、150日間の断食期間を除けば今日の飽食と変わらなくなる。この間の事情は、ヒロニムス・ボッシュの絵画に描かれている通り、当に「七つの大罪」のそのものである。一人あたり年間100キロの肉の消費は、ジャガイモがまだ無かった時代に魚のたんぱく質を凌いで重要な栄養源であった。貧富の差は、嘗て粥に対する肉・魚の食事であり量の差であったのが、都市化の波のなかで食料の質となっていく。低地の野生肉に対して高地の野生肉が、内陸部の断食期間においても、近郊の河川の沢蟹に対して良質の養殖淡水魚の差となって現れる云う具合に変わって行った。このことから、中世後期にも雛の新鮮な肉は、庶民にとっては咽喉から手が出るようなグルメ食材だったに違いない。因みに鳩の食用は平和の象徴として慎重に避けられていた。

町で二つの教会塔に次ぐ高さを保っていた我が家も、数年前に鳩の被害を被りだした。そこで屋根の大棟に長いブラシ状の針金を貼り付けて鳩が休む場所をなくしてしまった。こうして、鳩の大群は次なる屋根へと移っていった。鳩の大群は、騒がしさもあるが糞などをして天窓を汚すだけでなく樋を詰まらせたりする。そして、害虫駆除をしてくれて、美しく囀る数々の善良な鳥達を遠ざけてしまうのだ。それでも天窓からそっと顔を出して、鳩に手を伸ばしたりしたことは一度もない。(続く)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする