Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

微睡の楽園の響き

2005-02-22 | 文学・思想
漆黒の夜間の睡眠中に、メラトニンが働き機械で言えばクールダウン状態に至る事が出来る。クーリングの重要さは、臓器移植の低温での搬送処置に良く示されている。体温低下で細胞の回復が進むが、睡眠時間と創造力の相関は分からない。4時間のナポレオンか、12時間のアインシュタインか、居睡りだけのダヴィンチか、様々である。全睡眠時間の内に、成人で4~6時間の本格的な睡眠と、夢みるレム睡眠が含まれる事は良く知られている。本格的な休止に寄り添うエピローグのようなこのレム催眠中に、何らかの精神活動が可能なのだろうか。

フロイトの夢判断より150年以上前に、自分の見た夢を書き留めていった学者がいた。スエーデンの地質学者エマニュエル・スヴェーデンボリである。国王の命を受けて行政官としても活躍した大物学者であった。本人の宗教心から殆んど神がかりな夢がこうして固定される事になり、精神的危機を迎えたといわれた。ゲーテに描かれるファウスト博士に較べられる。深層心理とは言いながら、当時の見識豊かな自然科学者が見る夢は興味をそそる。

霊界では天使が仲介を努めて対話をするという。天使は母音しか発声しない。そこでは言葉は要らない。動作で全てが理解出来る。少年時代から言葉を出す前に正しく呼吸をする方法を練習していたと、本人は述懐している。情景は五感を持って体験される。だから音も光り輝く。

ある日、彼が町を行くとヴァイオリンとハープが奏でる楽の音を聞いた。そして彼は、霊に話しかける。「これは、病んだイスラエル王サウルを慰めたダヴィデの竪琴であり、最後はサウルを滅ぼして王位に着いた。」と、すると霊は、「音楽を聴いている限り、そこに何か悪徳があるとは思わない。」と答える。「これを書いている間、いつもその音楽が鳴り響いている。」と筆者は語る。

そして「全てのハーモニーこそが天上の喜びであり、管楽器は善への願望であり、弦楽器は真実と結びついている。全ての楽器と声は、精神的で天上的な感受性に呼応する。音響は、言葉よりも精妙な流儀で経験を表現する。」という。

天界では、音楽祭が催されて素晴らしい感興に満ち溢れる。広場には歌と音楽が、舞台の上では葡萄の蔓に囲まれて、管弦が三列に並ぶ。その両脇には歌手や合唱がそれを囲む。音楽は喜び一杯に朝から晩まで鳴り止まない。天使たちもしばしば集まり、金の王冠を形作り、人間と共に喜び一杯に声を合わせる。ダンテのパラダイスの情景がこうして繰り広げられる。

エマニュエル・スヴェーデンボリは、1747年から死の1772年まで度重なる世界の首都ロンドン滞在で、ヘンデルのオラトリオなどを体験したと予想される。特にヘンデルの「メサイア」は、1742年4月13日のダブリンでの初演以降、1759年の作曲家の死までの間56回の上演が記録されている。そのうち教会での上演は僅か12回であった。公演後にケイノウ公爵は、「これはエンターテーメントだ。」と作曲家に批評した。「残念ながら、私は聴衆を楽しませたかっただけです。」と答えたという。
コメント (1)
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