Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

また次の機会にね

2005-02-06 | 
一面の雪に隠された草の丘陵を、暗い木の窓枠に収めて漠然と見入る。午後の光は白く乱反射しながら、近くのシルエットをぼんやりとさせて、遠くの背景の稜線に包み込む。大台の誕生日を前日に祝った彼女は思った。「20年前の光景は記憶の中では殆んど変わらない。草むらに寝そべって遊んだあの時の日差しも草熱れも目前にはない。カウベルの響きも今はただ雪に閉ざされているだけだ。様々な人がこの小さな谷へ訪ねて来た。馴染みの顔も浮かべば、顔も名も浮かばないない数々の人々。机の下に潜って遊んだ好奇心に膨らんだ嘗ての少女は探しても今はいない。羊や豚の家畜小屋も無くなった。母屋の前にあった、夏に心地よい影を提供していた大木も切り倒されて今はない。ライプチッヒから来ていた骨ぎすの懐かしい男も出て行った。皆が気づかぬ間に時が流れ、あの時と同じものは良く見ると何一つない。あの日のまるで時が止まったような嘗ての永遠の感じは戻らない。」。

地元の銀行に勤める気に入った男がいる。それでもどうしても繰り返しのような日常を感じてしまう。今日も昨日のように、明日も今日のようにきっと時が流れる。そうして20年先、30年先のやはりこうして変わり映えしない光景を眺める彼女自身が見えてしまう。そして間違いなく何かが少しづつ変わってしまっている。

「全然変わらないね。」と挨拶をしてから、ぼんやりと物思いに耽る彼女に「僕のために特別に明日早起きして、食事の用意をしてくれないか?」と尋ねてみた。「駄目駄目、今、待っている男が来るから。そうじゃなかったら、あんたと一緒にブレックファーストするんだけど。」。彼女の母親は、僕に言った。「また次の機会にね!」と。
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黒い森のスキーサーカス

2005-02-06 | アウトドーア・環境
ヘルマン・マイヤーが数年前に滑降で優勝したシュヴァルツヴァルトのFIS公認ピステを滑ってきた。二回目であったが、今回は雪の量も多く比較的素直な斜面になっていた。元々大回転コースとして公認されているので、滑降としては、只谷へかけ落ちるだけの三段の一枚斜面である。滑降競技の場合はそこから林道を下の村まで更に速度を落とさず120キロ以上で飛ばさせるようである。少年スキーチームなどは来ていたが、オーストリーの立派なスキー場のように、競技風に飛ばせる人は流石に来ていない。

このところ温度が低かったので、10日間ほどかけて十分に積もった雪が、海抜1400メートルの標高の割りに質良く保たれていた。そのお陰で、天気がよくて人出の多いスキー場内アクセスの長い待ち時間を、比較的堪え忍ぶ事が出来た。その斜面を三度ほど滑ると、食事抜きだったので、喉も渇き気分が悪くなった。行きのアクセスを粗逆行して出発点へと帰り、車まで歩ける所へと戻ってきた。スキー場下部のガラス張りテントで、樽だしのシュヴァルツヴァルト産へーフェ・ヴァイツェンを飲んで意気を取り戻した。休憩なし5時間実働でも、距離も高度差も稼げなかったが、長い時間雪の上にいるだけで楽しんだ。

なんといっても標高が低いので呼吸が容易く、滑るのが楽である。オフピステで林間を滑るのも面白そうだったが、深い林は滑走禁止となっていた。雪崩や事故の危険でなくて、植物や森の動物を保護するための処分である。しかしこの説明が十分になされていないのが遺憾であった。説明がなければ思慮も思考力も知識もない一部の若いスノーボーダーのように誰でも簡単に立ち入ってしまう危険性がある。

バーゼルへ出るまでの谷で、早い時刻の食事を摂った。ワインは、カイザーシュテュール産のバーデンの赤シュペートブルグンダーを飲んだ。2003年産だろうか辛口と云いながらアルコール度も高く、バランスが取れていて酸を抑えたナオサのような味であった。アルコールに立ち昇る芋焼酎のような臭さが初めてで珍しかった。
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