Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

拘りのアッペルヴァイン

2005-12-14 | 料理
フランクフルトでコンサート後に食事をした。市内有数の飲食街であっても、流石に夜中になると確りと食事が出来るところも限られる。イタリア料理の肉類を食する心算で居たのだが、残念ながら些か遅すぎた。その筋は、ギリシャ料理も少なく、トルコ料理が多い。それらに混じって、ドイツ料理も健闘しているが、深夜となると飲み屋やカフェーが主体となる。夜遅くまで働くのは、一般的に閉店時間の遅いものからギリシャ料理屋、中華料理屋、バルカン料理屋、イタリア料理屋となる。

二件のイタリア料理屋で欲しい物が与えられないのを確認した後、氷点下の街頭を彷徨した。ある店の前で学生達のグループが出て来るのを見て、中を覗くと音楽が騒々しいので、賄の時間を確かめ直ぐに出て来た。その後一キロほど探し歩いて、空腹感と寒さに結局はこの店に戻って来た。タバコの煙が漂う店などはあるのだが、食事を楽しめる店は皆無だった。感覚的に音を遮断すればコンサートの感興を壊すことなくゆったりと食事が出来ると判断する。

さて、ここの店の客層は若者中心とは言いながら良い感じである。多くは学生の雰囲気があるが、そのような店に往々にしてあるボヘミアンな感じは無くて、都会的なスマートさがある。インテリアも三つの区画に別けられた感じで、大きなガラス張りの窓際と奥の壁際の様子が別けられて、狭いところを上手くラウンジ風に作ってある。カウンター越しの区画は、更に止まり木の席を加えてある。ハードの面だけならば然したるアドヴァンテージはないものの、ソフトを含めたシステムが良く出来ていた。

何よりもキッチンシェフが、夜中は主に一人で遣っているようであったが、品書きを良く作っている。価格も夜間営業に関わらず標準である。通しの窓から覗いた仕事振りや冷蔵庫周りの様子が、その料理の質を示していた。手際が良い。肉に拘ったので、豚肉の丸グリル焼にタップリとブラウンソース(ヴァッホルダーゾース)が掛かったものを注文した。付け合せはサラダに、ジャガイモ団子が付いている。また肉の量が、今日の厨房の片付けを考えたのか、二枚厚切りで優に300グラムを超えており夜半過ぎには相当堪えた。何十時間もたった今でも腹に残っているような感じすらする。

ソフトとして挙げられるのはパーソナルの配置の仕方で、若い小柄なオーナー店長らしきもカウンターから出て注文を聞くが、若い給仕を二人ほどと、若い女性を配置している。店の雰囲気を出していて飾らないながらも、客との接し方が見事である。素人と玄人が上手く配合されており、客に玄人さを気づかせない態度が店の雰囲気作りになっている。玄人らしきコンセプトは、厨房だけでなくビールや飲み物の選択の拘りにも表れていて、カクテルを振る音もなかなか美味そうである。

ドイツ有数の大都市の有数の飲食街であるから当然とは言いながら、これでこそマルチカルチャーな場所柄競争が激しくとも、充分に人件費を見込んで商売が出来ていると感心する。若い親仁に営業時間を聞いた。年中無休で、夜中の営業をしているとは予想以上であった。兎に角、徹底している事が客の満足度の向上に寄与している。フランクフルトで機会があれば再び使いたい。

そこで、試飲させて貰った後に飲んだバイエルンの上面発酵のダンプビーアも良かったが、アッペルヴァインと言うフランクフルト名物の林檎ワインのシーダが取分け美味かった。値段がワインと比較出来ないほど安い分、一般的には食事を流し込むのに良いのだが上面発酵ビールのように幾分小水臭い。しかし、これはフランスのそれに対抗出来る品質で上品であった。ワインの半分以下の価格でこのような物が飲めるとなると、素晴らしい。酸味の利いたジャガイモや豚肉には、ワイン以上に相性が良くて美味い。

そして何よりも素晴らしいのは、こうした拘りが、拘る人には手に取るように伝わるコンセプトで、拘らない人にも何となく伝わる雰囲気なのである。
コメント (5)
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