Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

チェルヴィニアからの光景

2007-02-05 | アウトドーア・環境
昨年のカレンダー「ルネッサンス画集」を壁から外して眺めるうちに視線が釘付けとなる。そこに開かれている名画は、1421年ローレンツォ・モナコの作とされる「博士の謁見」である。このエピファニーに纏わる題材は、数多の巨匠の手に掛かっている。

この度の発見は、その背景に描かれている岩山で、その形状がマッターホルンを南側のチェルビニア(ライヴカム)から望んだものと確信したことである。モナコ自身は、14世紀のフィレンツェ派を代表するベネディクト会の画家であるが、その自然主義に対抗するシエナ派のミスティックなビザンチン風の影響を受けているとされる。

またこの作品には、コシモ・ロッセーリの名が入っていて所有者のウフィツィ美術館のホームペ-ジには、その預言者と告知は15世紀後半に書き加えられたとある。つまり、上部の預言者と天使を指すのであろう。

ロッセーリの画風は詳細に渡りリアリティーに富んでいる事から、上の作品に手を入れるときに、そのロケ地についても知ったに違いない。そして、ロッセーリより一世代若いレオナルド・ダ・ヴィンチは、こうした精緻で科学的な描写を行っている。

さてオリジナルとされる背景は、チェルヴィニアの村から眺めるマッターホルンの南璧やさらに左へと延びる裾野の尾根まで具体的に描かれているが、その上下に雲や岩塊上の構造を誂えて、そこに天使や羊飼いがコラージュ風にはめ込まんでいるのを見ると驚くに値する。さらに岩塊に色違いの神殿を埋め込んだりしているのは、宗教的な象徴ともリアリズムとも異なる画風となっている。ルカスによる福音の第二章「羊飼いと天使」の内容にあたる部分である。

このカレンダーから学んだのは、アルプスを描いたものとして、またその世界観から瞠目すべき作品である。



参照:仰ぐよりも見下ろす視点 [ アウトドーア・環境 ] / 2006-03-14
コメント (4)
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