Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

ニューヨークタイムズの報道

2020-05-20 | 
(承前)ギュンター・グロイスボェックは先月末にフランクフルターアルゲマイネ新聞のインタヴューで面白いことを語っていた。除けておいた古新聞のその記事に初めて目を通す。ZDFが3SATの為に劇場前でインタヴューしていて、少し離れて耳にしたのが、バイロイトに関する質問だった。要するにあそこは条件が違うと話していた。そのことを新聞でも語っていて、「新しい客席コンセプトにはバイロイトの劇場は余地があまりない」としていて、実際にカタリーナ・ヴァークナーがキャンセルに際して、「音楽において、(大規模雪崩災害に続きスキー場感染で再び悪名を馳せた)イシュグルになりたくない」と語り、自分もそう思ったとしている。

その一方、見通しの効かないオペラにおける再開は、彼自身のようにフリーでありながらもトップクラスのギャラを取る人間にとっても決して不安が無いわけではなく、他所では眠れぬ夜もあったとしている。それでも現在テッシンに住んでそもそもそれ程の贅沢をする訳でもないので、つまり通常の病欠での30%減ぐらいは考えているが200%減は想定外という。そこでオーストリアでは公開文章が出されてたらしい。つまり業界の個人的に付き合いのある人間の半数は半年この状況が続けば経済的に生き延びれられないと語っている。

そう言うことで、ヘッセンの劇場がドイツの他の劇場に先駆けて再開したのだが、そのオーガナイズなどにも興味があった。詳しくは3Satでインタヴューの内容を知ることになるかと思うが、百四十人の為でもどのように椅子を別けるのかなど興味もあり、又初めての劇場なので充分に時間的余裕をもって出かけた。だから駐車場の夜間料金が始まる18時を待って駐車したが、結局現在は夜間料金は無かったので9ユーロ50ととても高くついた。これが今回のただ一つ不満なところだった。その分最低料金に近い105セントで燃料を入れられたので、高くついた分は取り返せた。その他プログラムもA4一枚で無料で、飲み食いしなかったので一銭も使わずに済んだ。

「希望」の朗読に続いてゲーテの詞による「プロメテウス」のピアノの前奏に続いてレチタティ―ヴとなる。ピアノの響きもそのアーティキュレーションも全く感心しなかったが、このプログラミイングの流れでのそれはそのオペラでの技能を示していて、やはりその方での活躍に違わないものだ。

グロイスボェックのオペラは、何度か生で経験しているが、どちらかというと抑制のきいた舞台と歌で、ツェッペンフェルトなどの華が無い。その音楽的な特徴はここでもあって、もう一つ食い足りなさを感じさせるのはピアノの責任だけではないだろう。昨年は、「フィデリオ」でのロッコと「パルジファル」のグルネマンツを其々ミュンヘンとバイロイトで聴いた。後者のそれはヴェテランのルネ・パーペのようにテクニカルに抑えてくるというようなことは全くなかった。自然に楽に声を出しているという稀なバスバリトン歌手なのかもしれない。

その分力動的な歌は歌詞の力以上に声の強さと豊かさなどが大きな渦巻きとなるので、船乗りへの歌にかけてのドラマの作りが上手く嵌った。無理をせずにも低音もしっかり抑えることが出来て、上へも伸びて歌えるというのは、やはり世界中で引っ張りだこになっている筈だ。それでも今回の騒動で2025年まで決まっていた契約の一部が破棄されたり、まるで通信簿のような味気ない「当分は出番がありません」というような通知を有名劇場から受けたという。それに比べれば、METのゲルブ支配人が書いたものとかカタリーナ・ヴァークナーからの直々の電話は有り難かったというのも分からぬではない。そのようか、昨年のバイロイトとの関係もあって今回支配人のラウフェンブルクとのプログラムの打ち合わせが結実したという事らしい。

ニューヨークタイムズの報道によると、今回の欧州初の偉業の背景で支配人ラウフェンブルクの活動がAfDに呼応しているとされている。要するにコロナペギーダと呼ばれる現象で各地でコロナ対策反対運動に陰謀論が重ねられてネオナチ化しているという話題に共通している。そもそもあの下らない演出がバイロイトで採用されたというのもカタリーナ・ヴァークナーのエゾテーリックな面で共通していて、典型的な無教養や教育程度の低さとして、トラムプや安倍政権やその身辺に共通している所謂無知主義的な運動でもある。(続く)



参照:
延期になったバイロイトの声 2020-05-19 | 音
指揮科教授のバイロイト 2019-08-19 | 音 
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