Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

芸術の歴史的意味合い

2023-11-08 | 
フランクフルトでの壮行演奏会、レーガー作曲「モーツァルトの主題による変奏曲」は歴史的な演奏だった。なによりも明快さは作曲家の求めるものであって、それは音色としても構造の明快さにもなっていた。

この曲は教育者養成教育プランの課題にもなっている。題目は、「バロックから現代の音楽への変奏」となっていて、要するに音楽などを教育する者はそれぐらいの視野を持っていないといけないという卒論程度のものであろうか。

キリル・ペトレンコは、レーガー作曲を音楽的に、近々では「ハイドンの主題による変奏曲」からブラームス交響曲四番、そしてシェーンベルクの「管弦楽の為の変奏曲」への演奏のプロジェクトの中に組み込んでいた。

抑々モーツァルト自体の主題後半の繰り返しの変奏に目を付けたレーガーが、最後に作曲した大曲であり、暴飲暴食で死亡した作曲家の音楽神モーツァルトへと繋がる創作であった。

演奏技術的には、極東ツアーの表のプログラムの独伝統的楽器配置にこのプログラムも揃えて来た。それによってフーガ、ドッペルフーガのみならず、弦楽陣も重層にアンサムブル可能となり、九月でミュンヘンで聴いたクセナキスの演奏に匹敵していた。これだけで歴史的な演奏であり、コロナ前にルツェルンで聴いた「ラペリ」に匹敵するような後期浪漫の真髄のような摩訶不思議な音響を奏でた ― これに関しては同年生まれのレオニー・ファイニンガーの作品を直前まで観ていたので関連して改める。

上の楽器配置での演奏が可能となったのもコンツェルトマイスターのダイシンの功績が大きい。ベルリンのフィルハーモニーでは音響的に効果を上げにくい配置であるが、フランクフルトのアルテオパーでは最高の結果となっていた。ソウルや日本でもシューボックス型の音楽ホールでは完璧な音響が得られるであろう。

それは後半の「英雄の生涯」においても、最大限の効果を上げていた。何よりも透明性はその楽器の音域と明るさによって保証されて、まさしくリヒャルト・シュトラウスが後年「サロメ」や「エレクトラ」で為した楽劇での作曲法、つまり声を大編成の管弦楽団に合わせて尚且つ歌詞を明瞭に聴かせる管弦楽法として集積した音響がここに再現されていた。嘗てこの伝統的配置でここまでの演奏をした指揮者は誰がいただろうか?思い浮かばない。愈々ベルリンの新フィルハーモニー構想に火が点くのではないだろうか。

しかし残念なことに脇主役のヴァイオリンソロは、夏のツアーまで六回本番を弾いてきた女性のサライカの本格的なヴァイオリンには到底及ばなかった。ブーが投げかけられたダイシンはコンツェルトマイスターとしては世界の頂点にいるのだが、ソロとしてはカラヤン時代のシュピラーラを越えられるかどうか。何も技術的な問題だけではないのだが、サライカが奏でた英雄の伴侶としての演奏は嘗てのシュヴァルベの演奏を越えており、この戦争の時勢にこそ女性がというとても大きなアピールがあった。繰り返すことでよくはなるだろうが、少なくとも「英雄の生涯」の音楽芸術的な意味合いは到底得られない。それが問題なのである。コンツェルトマイスターリンにもう一息成長して貰う方がいい。ブラームスはダイシンの方が上手にできる。(続く



参照:
彫塑の必要な若者様式 2023-04-17 | 音
初日へと期待が膨らむ 2023-08-26 | 女
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