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アベノミクスの虚実・・・景気は悪化している

2013-12-10 04:09:00 | 時事/金融危機
 

■ 7-9月期のGDP成長率が1.1%に下方修正 ■

景気が相当悪いなと感じていたら、7-9月期のGDP成長率が1.1%に下方修正されています。

個人で仕事をしている私などは景気のリトマス試験紙みたいなもので、特に建築内装業関係は景気に敏感です。10月以降、さらに景気が冷え込んだ実感があるので、公共事業にる底上げが啼ければ、確実にマイナス成長になっているでしょう。

消費税前の駆け込み需要でマンションや住宅関係はコンスタントに建設が進んでいますが、それもそろそろ終焉します。一方、近隣の新築マンションや新築住宅の売れ行きは、とても駆け込み需要が発生している様には見えません。下手をすれば、4月以降、業界は在庫の処理に苦悩する事になるかも知れません。

■ 世界経済の悪化を反映した輸出の低迷 ■

景気低迷の原因の一つに、外需の落ち込みが挙げられます。
円安で利益こそ水増しされていますが、数量ベースでは自動車を始めとして相当輸出が落ちています。トヨタも国内のラインを一部止めるなど、減産体制に入る中で、とてもベアアップを達成出来る状況では無くなって来るかも知れません。

緩和マネーの大盤振る舞いで、ダウが市場最高値を更新したり、日経平均が一時的に急上昇していますが、世界中で実体経済は冷え込んでいます。

特に、先進国では失業率に反映されない「雇用の質の低下」が問題に成り始めるでしょう。リーマンショック後、失業していた人達も、再び職に就き始めましたが、パーとタイムや、給与の安い職への再就職を余儀なくされているので、所得の低下は消費に影響を与えています。

アメリカの低所得層の生活を支える世界最大のスーパーであるウォールマートも、クリスマス商戦の品物の発注量は控え目だと報じられています。

■ ブラック・フライデーの売り上げが一つの目安 ■

アメリカでは感謝祭からクリスマスに掛けての休暇の最初の金曜日、所謂「ブラック・フライデー」の売り上げが個人消費の一つの目安になります。この期間にアメリカの小売店舗は年間売上の3割を稼ぐと言われ、「店の売上がこの週から黒字になる」ことから「ブラック・フライデー」と呼ばれています。

今年のブラック・フライデーの売り上げは、やや不調との報道がされています。

尤も、ブラック・フライデーは値引き率が高いので、人々は日頃の消費を我慢して、この日を狙って買い物をする傾向が強く、個人消費の低調が、ブラック・フライデーの売り上げを押し上げる側面もあり、それでもやや不調というのは、アメリカの実体経済が回復とはほど遠い事を示しています。

■ 株価の上昇は米経済には好影響 ■

一方、個人の資産運用が盛んなアメリカでは、株価の上昇は経済にとっては好材料です。これらの資産を多く持つ富裕層は、高額商品などの消費を拡大します。

この様に、アメリカでは資産を持つ者と、持たない物の差が拡大しており、経済指標の中身が問題になって来ます。

アメリカの消費指数などは、一進一退の様相ですが、株価などが暴落すれば富裕層の消費も一気に落ち込む事になり、米経済の景色は一変すると思われます。

■ 公共事業が景気を下支えする日本 ■

日本は今年前半でプチバブルは終焉してしまったので、現在景気を下支えしているのは公共事業です。

安倍政権は7兆円の補正予算を組んで公共事業を増発しています。自転車で走り回る事の多い私は、そこかしこで道路工事が行われているので驚いています。

大型の工事も発注されていて、東京と千葉県の境を流れる江戸川は、近年氾濫などした事は無いのですが、堤防の拡張工事が行われています。

以前はスーパ^堤防工事も進行していたのですが、立ち退きや用地買収などが進まないので、結局部分的に完成しただけで、無意味な工事の代表例となっていました。堤防の外側を大がかりに盛り土するスーパー堤防は、工場跡地などでは整備が進みましたが、既に民家やマンションが建っている地区では、根本的に計画進行が難しい事業でした。

そこで、地権問題の発生しない堤防内の拡張工事に切り替えて工事発注を進めています。増水時に堤防の内側が浸食されるのを防ぐ工事とされていますが、元々河川敷の拡張工事で野球場などが出来ていた所の土を掘り返して埋め戻すだけの工事の様にも見えます。

尤も、無駄な箱物を作って、その後の維持管理費が税金の重荷になるよりも、「土を掘って埋める」という公共工事の本質に近い事業なので、将来的な国民負担にならないだけマシとも言えます。景観にもあまり影響を与えず、堤防の強度が増えるので、目くじら立てて反対する工事ではありません。

ただ、部分的に補強しても意味あるの?という疑問は残ります。

いずれにしても7-9月期のGDP成長率に占める公共事業の割合は大きく、これが無ければ日本経済はマイナス成長になっていたかも知れません。

■ 10-12月期はさらに酷い? ■

景気に敏感な仕事をしている私の実感では、7-9月期より10-12月期の景気はさらに落ち込みが酷いと感じています。

どこの事務所に打ち合わせに行っても空気がとても重たい。

それと、売上の回収の心配もしなければならなくなっています。世の中で全然お金が回っていないのです。私の様な個人事業主は、客先からの入金が遅れる事は仕方が無いのですが、それが多くなると困ってしまいます。

世の中で資金循環が滞り始めると、年末には多くの零細企業が倒産する恐れが出て来ます。

亀井氏が始めた中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)の終了後も、金融庁の指導もあり、各金融機関は半年程の猶予で返済のリスケジュールに応じていた様です。しかし夏頃から、業績の良い企業には一年くらいのリスケを認める一方、業績が改善しない企業のリスケ期間を3か月にするなど、対応に変化が出ている様です。

最近、小さな企業に行くと空気が重いのは、この影響が出始めているのでは無いでしょうか。身近でも小売店の閉店が目立ち始めています。

■ アベノミクスで景気回復という幻想 ■

ここに来て株価が値上がりしていますが、値動きも激しい様です。

昨年11月からの株価上昇局面では、「アベノミクスで日本経済のV字回復」なんて見出しも見られましたが、今回は浮ついた見出しはあまり目にしません。一部雑誌は、相変わらず「日経平均1万8千円!!」なんて煽っていますが・・・それもウソではありませんが、実体の無い株高はいつかは崩壊します。

国民もアベノミクスに対する期待は醒めてしまって、だんだんと現実が見えて来た様です。「期待に働きかける政策」であったアベノミクスから「期待」が剥げ落ちてしまったので、アベノミクスは1年で終焉したとも言え明日。

黒田日銀総裁もすっかり「2年で2%のインフレを達成」と言わなくなりました。「出口戦略は難しい」と発言する様になり、いつの間にか日銀の異次元緩和は、オープンエンド型に変わってしまった様です。

ただ、そもそもの目的が財政のファイナンスですから、異次元緩和を終わらせる事は始めから不可能だった訳ですが・・・。

■ アベノミクスが残した物 ■

結局、冷静になって考えてみれば、アベノミクスが残した物は、TPP参加や消費税増税、そして特定秘密保護法でした。

そして今後は国家情報局のい設立などへと進んで行くのでしょう。

これは、一見、日本が普通の国になる事で、国家安全保障上は当然とも言えますが、一方で、日米関係を鑑みた時、「特定秘密」とは「アメリカにとって日本人に知られたく無い秘密」では無いかと訝ってみたくもなります。

結局、法律は運用が問題なのであって、行間の隙間の解釈で良法にも悪法にも変わるのは歴史が証明しています。

■ 生活防衛 ■

国家の防衛も大切ですが、そろそろ私達は生活防衛が必要になって来るかも知れません。

支出を抑えては経済は回復しませんが、個人にとっては、支出の抑制は生活防衛の基本です。こういう、「合成の誤謬」が存在する限り、日本経済はなかなか好転する事はありません。

アベノミクスが何故失敗したかと言えば、やはり国民に「夢を見せ切れなかった」事が大きな原因では無いでしょうか。

その点、始めからアベノミクスに批判的な私などは批判されるべきかも知れませんが、やはり「夢を語る」には、安倍氏の言葉には説得力が無さ過ぎました。「背水の陣を敷いた敗戦の将」の様な、あの何とも言えない「悲壮感」は、夢には程遠いものを感じます。

やはり、田中角栄の様な、あるいは小泉純一郎の様な政治家は、そんなには多く無いという事なのでしょう。

「悲壮感」と言えば、オバマ大統領もだいぶボロボロになって来ました。
大統領に初当選した当時のオーラは今では全く感じられません。将来的には「最も期待外れだった大統領」という称号が与えられるかも知れません。

日本経済が久しぶりに一時の夢に酔った2013年。はたして、今年を振り返った時、アベノミクスに皆さんはどんな評価を付けるのでしょうか?