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「FRBは利上げのタイミングを逸した」という意見・・・まったく違う二つの見解

2015-08-21 10:28:00 | 時事/金融危機

 
■ 「FRBは利上げのタイミングを逸した」という意見 ■

「FRBの9月利上げが見送りになるだろう」という予測が支配的に成る中で、「FRBは利上げのタイミングを逸した」との発言が散見される様になりました。

実はこの発言、注意深く観察すると、全く異なる二つの見解が有る様です。

■ 世界的景気の減速から利上げが難しくなった ■

アナリスト達の多くが、昨今の中国を始めとする世界経済の変調で、アメリカの利上げが難しくなるのでは無いかと予測しています。今年前半ならば米経済も堅調で、世界経済のリスクも顕在化していなかったので、結果論的に利上げのタイミングを逸した・・という論調です。

ただ、6月頃には各中央銀行総裁やIMFがボラティリティーの上昇や、市場の過熱感を指摘してむしろ「リスクオフ」を促していましたから、現在の世界経済の変調は利上げ前に過剰リスクを整理するという金融マフィアの筋書に則ったものかと私は妄想しています。

バーナンキのテーパリングが市場の混乱無く実行できた裏には、バーナンキショックで過剰リスクが整理された事が大きく寄与していたはずです。

確かに中国を始めとする新興国や資源国の景気減速は要警戒領域に突入していますが、これは裏を返せばアメリカや先進国への資金還流が起きている事の現れで、ドル高が進行する前に「収穫」を済ませていだけだとも言えます。

■ 長期の金融緩和がコントロール不能のバブルを既に作り出したとする意見 ■

ジム・ロジャースも米利上げは昨年中に行われるべきだったと発言していますが、彼は超緩和的金融政策が既に制御不能のバブルを世界中に作り出してしまったという見方をしています。彼は昨年までは2017年に世界経済が崩壊し始めると予言していましたが、昨今は早ければ2016年には変調が始まると発言しています。

元PIMCOのビル・グロースも直近で次の様な発言しています。「利上げは9月。優先されるのは経済情勢ではなく金融情勢。つまり、統計に関係なく正常化を始めるということだ」

これはポジショントークと受け取れますが、しかし一方で金融市場がバブル化しているので、実体経済の状況を見て利上げを遅らせると、バブル崩壊で採り返しが付かなくなると警告している様にも聞こえます。

■ デフレとバブルが同時進行する世界 ■

ここで注意が必要なのは「低金利の罠」の影響です。

超緩和的金融政策の状況下では金利が異常に押し下げられる為に投資リターンが不当に低下して中長期的に経済に悪影響を与えるます。結果的に資金は実体経済から資産市場や金融市場に流出して、短期により高い金利を稼ごうとします。結果的に「実体経済のデフレ化」と「資産市場のバブル化」が同時進行します。

中国を始めとする新興国経済に急ブレーキが掛っていますが、リーマンショック以降中国は
世界経済をけん引すべく、多くの投資を行って生産力を増強しました。資源国でも過剰投資が発生しました。

しかし、アメリカを始めとする先進各国では、リーマンショック以降、労働の質の低下が発生して中間層の購買力が大きく損なわれています。その結果、世界は新興国を中心に過剰生産力を抱える結果となっています。

これが最近の世界的な景気減速で急激に顕在化して来ました。中国と資源国の過剰設備の問題は短期的には深刻です。中国は元安に為替操作をして輸出を拡大しようとしていますが、その影響は先進国各国にデフレ圧力まりとして現れています。同様に原油安もインフレ率を抑制しています。

■ インフレターゲットを堅持すると世界的なバブルが生まれる ■

デフレ圧力が有る中で、FRBは利上げを行えば実体経済は失速します。ですから、FRBは利上げに踏み切れないでいます。しかし、デフレ圧力を生み出しているのが超緩和的金融政策そのものなのですから、利上げを先延ばしすれば、デフレが深刻化するだけです。既にFRBも日銀のECBも「低金利の罠」にしっかりと絡め取られているのです。

ここに来て、各国中央銀行の関係者から、量的緩和の目的をインフレターゲットから金利にしようとする発言が散見される様になっています。(FRBのハト派はハチャメチャなので、物価目標をさらに高く設定すべきなどと言っていますが、彼らはクレージーです)

いずれにしても、FRBは年何にチョロっとだけ利上げして市場を牽制するはずです。

■ 9月利上げのサプライズを警戒する市場 ■

昨日ダウが1万7千ドルを割り込み、本日は日経平均が2万円を割り込んでいます。中国経済の減速や、米雇用統計が原因とされていますが、私はFRBがサプライズで9月中に利上げする事への軽快も有るのでは無いかと邪推しています。

日銀の追加緩和という実弾支援が実行されていないので、可能性としては低いのですが、中国の元の切り下げという隠れ支援も有るので、もしかすればもしかする・・・。

何れにしても、量的緩和マネーでリスクが膨れ上がった市場は、しばらくは荒い値動きうを繰り返すのでしょう。これも、昨年末頃に見た光景ではあるのですが・・・。こうして、リスクに慣れた頃に、FRBはシレっと利上げに踏み切る事でしょう。