人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

人民元の国際化…次なる危機の下準備

2015-12-03 13:59:00 | 時事/金融危機
 

■ IMFは人民元のSDRの構成通貨に採用 ■

IMFは人民元をSDRの構成通貨にする事を決定した様です。
構成比は以下の通り。

ドル  41.73%
ユーロ 30.93%
人民元 10.92%
円    8.33%
ポンド 8.07%

予想はしていましたが、日本の構成比を抜いています。

「自由化が不十分な人民元がSDRの構成通貨に採用されるのはオカシイ!!」とネトウヨを中心に怒りの声が聞こえてきそうです、


■ 人民元の信用など些事に過ぎない ■

人民元の国債通貨化の歯車を大きく回す事になるであろう今回の決定ですが、「これによって世界がどう変わるのか」という事こそが目的であって、人民元の現在の信用などIMFや世界の経営者にとっては些事に過ぎません。

■ 元々、人民元の信用はドルに支えられている ■


『正論』より

そもそも人民元の信用の源が何かと言えば、中国人民銀行の保有するドルの外貨準備だとも言えます。ドルにソフトペッグしてきた中国は、ドルの増加に足並みを揃えるかのごとく人民元を増刷して来ました。

中国国内のドルは人民銀行が一括管理しており、人民銀行のバランスシートの中身で価値が有るのはドルばかりとも言えます。

中国は輸出によってドルを積み上げ、香港を経由した為替介入でもドルを積み上げて、人民元を発行していたとも言えます。

■ 現在は元高なのか、元安なのか? ■

人民元と世界経済の行方を占う上で、人民元の現在の為替レートが適正かどうかは重要な事となります。

IMFの構成通貨となったからには、中国は露骨な為替介入や、緩やかなドルペックを縮小しなければなりません。その結果、人民元は実力に見合った為替レートに移行して行きます。

かつてアメリカは「人民元はドルに対して不当に安く固定されている」と猛烈に抗議していましたが、現在、この様な主張はあまり聞かれません。むしろ、「人民元は過大評価されている」との発言がちらほら聞こえたりします。

■ 元高になるのではないか? ■

人民元の国債通貨化は通貨の信用力アップという意味においては元高の要因となります。かつての円やドイツマルクも国内経済の拡大と共に信用力を高め、プラザ合意で一気に切り上げられます。

中国は現在世界2位のGDPを誇る巨大国家に成長していますが、将来的にはアメリカのGDPを凌ぐ事が確実視されています。日本ではプラザ合意による円高によって、外需産業の成長は鈍化し、内需が拡大しました。

■ 世界で不足している需要を高めたい世界の経営者 ■

かつては資源の不足が経済成長の足かせになっていましたが、現代は「需要の不足」が世界の経済成長を阻んでいます。

中国は既にインフラは過剰気味で、外需産業も海外流出が始まっています。貧富の差こそあれ、成熟国家の仲間に入ろうとしています。この過程において拡大するのは内需です。日本の例に違わず、中国も元高によって海外から買い物し放題のボーナスタイムが出現し、内需が急拡大すると予想されます。

■ 一方で裏で為替介入して元高を抑制しようとする中国 ■

中国は依然外需への依存度が高いので、元高が過度に進行すれば日本同様に元売り、ドル買いの為替介入を拡大します。

「元売り、ドル買い」・・・そう、中国が米国債を大量に購入するのです。アメリカは折しも利上げのタイミングに入り、米国債金利にストレスが掛ります。そこで米子債の大口の買い手が必要になります。

かつては日本が支えた米国債を、今度は中国が支える事になるでしょう。

既に中国は日本を抜いて最大の米国債保有国になっています。ここら辺はIMFのSDR入りとの交換条件だった可能性は否定出来ません。

■ 人民元の国際化は次なる金融危機の序章 ■

一見、人民元の国際化が米国債の安定化により金融システムの安定化に繋がりそうに思えまますが、次なる金融危機が発生したら、ドルも人民元もユーロも円もポンドにも信用の疑問が生まれます。既に世界のどの主要通貨も「プリンティング・マネー」と化しているからです。

結果的にブレトンウッズ体制移行のドルの基軸通貨体制がリーマンショック直後同様に揺らぎます。あの当時、フランスのサルコジ大統領が仕切りにSDRの基軸通貨化や人民元の国際化を画策していました。

もしかすると、次なる危機の発生によって、世界は一時的にせよ、SDRの通貨化を試みるのかも知れません。その為には人民元が通貨バスケットの中に含まれていた方が都合が良い訳です。


かなり唐突で、かなり強引な人民元のSDRの構成通貨化ですが、「今でしょ!!」の理由を妄想すると・・・ちょっと背筋が冷たくなります。