■ ヘッジファンドの保有する米株のる流動性が失われている ■
Bloombergの記事によると、米株高の裏ではこんな事態になっているのだとか・・。
<引用開始>
多数のヘッジファンドが同じ銘柄を一斉に売ろうとした場合に、市場がそれをどの程度容易に吸収できるか。分析会社のノバス・パートナーズがこれを数値化してみた。ヘッジファンドが好む銘柄の売買高を基に算出した「流動性」指数は過去最低であることが分かった。
<引用終わり>
1) ダウ平均やS&P500に影響を与え易い銘柄をヘッジファンドが好んで保有
2) その結果、米平均株価が上昇する
3) 一方で、これらの銘柄をヘッジファンドを手放そうとすると暴落する危険が生じる
4) ヘッジファンドがこれらの銘柄の売りを控える事でボラテリティーが低下する
5) 株価はボラティリティーの低下の影響で小動きで上昇を続ける
■ アベノミクスにおける日本の株式市場に似ている様で違う ■
この構造、アベノミクスがスタートした後の日本の株式市場に似ています。
1) 日経平均に影響を与え易いソフトバンクやファーストリテーリング株が好んで買われる
2) 日銀やGPIFの資金流入もあって、株価は上昇一辺倒になる
3) 〇〇ショックで人気銘柄の株が売られると相場が一気に下落する
日本の場合は、日銀やGPIFの買い支えによって下落局面は長続きせず、市場が沈静化すれば株価は知らぬ間に元の水準を回復してきました。
一方、現在の米株式市場ではこの様なビルトインスタビライザーの役割が見つかりません。だから、ヘッジファンドが偏って保有し過ぎた銘柄の流動性が記録的なまでに低下しているのです。
■ 「囚人のジレンマ」を抱えながら膨らむバブル ■
トランプ政権の打ち出す様々は「無理難題」に対して株式市場は本来はネガティブに反応するはずです。ところが、少し値下がりする事はあっても、大きな調整は起こりません。
これは「市場がトランプ政権に期待している」というよりは「売るに売れない状況に陥っている」のでは無いでしょうか?
誰もがトランプ政権下での株価上昇に???な感じなのですが、一方で「誰かが売ったら今の相場は大きく崩れる」と考えるが故に、結果的に誰も売りを仕掛けられない状況。そう、「主人のジレンマ」に米株市場は陥っているのです。
■ 誰もが逃げ出そう明確なサインが現れるまで崩壊は起きない ■
米株市場は既に「爆弾」を抱えて乗り合わせたプレイヤー達が船底で息を殺している様な状況なので、ダウ平均株価が2万円を超えても、市場にバブル特有の迫力がありません。むしろ、出来高を見れば分かる様に、徐々に低下しています。
では、すぐに暴落が起きるかと言えば、答えはNOでしょう。
トランプ政権は減税案や公共事業の拡大など、株価にプラスになる政策を小出しに出しています。それらを市場が「好感」している間は「まだ行ける」と誰もが考えているはずです。
すでにプレーヤーがそれぞれ市場を崩壊させるカードを持っているが故に、そのカードを切って儲けの機会を失う事を牽制し合う状況になっているのです。
この様な場合、誰かが裏切って一人だけ売り抜けるか、あるいは誰もが逃げたくなる様な事件が起こるまで相場は大きくは崩れません。
■ FRBの利上げテクニックの見せ所 ■
「誰もが逃げたくなる事件」で必ず起きるのはFRBの利上げです。イエレン氏は利上げに前向きな発言をしていますが、少なくとも年2回の利上げを実行しそうな気配です。
利上げに株式市場はネガティブに反応しますが、今までの経緯を見ると0.25%程度の小幅な利上げを適時に行う事で大きな混乱は抑えられています。「利上げするぞ、いやまだだぞ、いや利上げしようかな、でも未だだよ、そろそろ・・・」こんなシグナルをFRBは送り続け、市場が「そろそろ利上げしろよな・・」と利上げに耐性ができた頃にチョロリと利上げする。
「市場との対話」などとカッコイイ言い回しをしてはいますが、実際には「じらしプレイ」が実に上手い。(インサイダー的な調整も当然在るとは思いますが)
■ 物価や資産価格が過熱し過ぎなければしばらくバブルは膨らむ ■
FRBが0.25%程度の利上げを適時に行える環境は、物価が緩やかに上昇する事が肝心です。さらには米国債金利が安定している事も重要。
為替相場がBOX圏で推移しているので米国債金利は安定しています。物価も2.5%の上昇率ですが、原油の値上がり分を差し引けば比較的安定しています。
これはFRBとしては利上げし易い条件が揃っている訳で、「追い詰められて利上げした」のでは無く「米国経済がゆるやかに拡大しているから利上げした」と市場を安心させる事が出来ます。
こうして、あと何回かの利上げは順調にこなせると市場関係者が読んでいる間は、爆弾を抱えながらも米株市場は堅調に推移する事でしょう。
■ 次のサプライズは何? ■
こういう好環境で怖いのが「サプライズ」ですが、これだけは予測が難しい。
例えばイエメンでサウジアラビアがシーア派を虐殺して、イランがブチ切れてミサイルをリヤドにぶち込む・・・なんて事態は、誰かが起こそうとして起こす訳で・・・まあ、そんな事が起きれば市場参加者の9割はカモられる側になる。
ただ、今はカモをデコイで集めている状況なので・・・当面サプライズは起こりそうにありません。
え?トランプがサプライズだって・・・。いえいえ、トランプはシタタカですから。見せかけの「多国籍企業虐め」の裏で多国籍企業にもっと有利な貿易協定を作るでしょう。当然、アメリカの雇用が回復しても所得が期待以上に上がる事は無い。これもアベノミクスに似ています。
人々がそれを実感するのに2年は掛かる。それまでに、世界情勢は大きく変わっているかも知れません。
まあ、「逆指標」で名高い当ブログだけに、これを読んで不安になった方もいらっしゃるとは思いますが・・・。(あなたですよタカヤマンさん)