■ MMTって「金融抑圧」だよね ■
MMT(モダン・マネタリー・セオリー)を巡る議論が活発化しています。
異次元緩和でも国債金利の上昇が起きなかった事で、真面目な経済学者が、周回遅れでネトウヨ言論をトレースしているイメージが有りますが、ネトウヨが「美味しい所取り」で、その本質を理解していない事に対して、流石に経済学者達は、この制作が「金融抑圧」の手段として国民から政府への所得移転である事には自覚的です。
1) 日銀は政府の子会社だから、政府の負債としての国債と日銀の資産としての国債は相殺される
2) 日銀の受け取る国債の利息は、国庫に返納されるので金利負担も事実上ゼロ
3) 満期の国債を日銀がロールオーバーすれば事実上の無限国債
ここまでが「美味しい」ところ。
4) MMTが成立する為には「国債金利<名目成長率」である必要がある
これ、実は上限金利を決めて政府債務を圧縮する「金融抑圧」という政策と同じなんです。
■ 「隠れ税金」としての「金融抑圧=インフレ税」 ■
第二次世界大戦で債務が膨らんだ各国政府は、債務の圧縮手段として、成長率よりも低い上限金利を設定します。
1) 戦後の復興でインフレ率(成長率)は上昇
2) 税収もインフレに応じて拡大
3) 上限金利をインフレ率よりも低く設定
4) インフレによる税収の増加に比べ、低金利国債の金利負担額は低く抑えられる
5) 中長期的に財政赤字はGDPに比べて縮小する
6) 金融抑圧の間、預金者はインフレ率に見合う金利が得られない
7) 預金者の資産は金融抑圧の期間中、実質的に減少する
8) インフレ率よりも低い預金金利によって預金者の利益は減り、政府の債務は圧縮される
9) これを「(マイルドな)インフレ税」と呼ぶ
第二次世界大戦後、アメリカもイギリスも上限金利を低く設定して債務を圧縮します。アメリカの成長率は高かったので10年掛かりませんでしたが、成長率の低かったイギリスでは15年以上掛けて、徐々に債務の圧縮を達成します。」
この間、国民はインフレ率の上昇に見合う金利を得られませんでしが、経済成長に伴う所得の増加が、これを見え難くしていました。特にアメリカは戦後の好景気の恩恵を強く受けています。
一方、イギリスを始めヨーロッパ諸国は戦争で生産設備が破壊されるなど、経済活動も低調でしたから、金利上昇も緩やかで、不景気の中で国民はインフレ税を払う事になります。これは現在のMMTの状況に似ています。
■ 「マイルドなインフレ税」と「急激なインフレ税」 ■
アメリカやイギリスの戦後の「インフレ税」はマイルドに進行しましたが、日本ではインフレ率が高かったので「インフレ税」は急激に進行しました。
10) 戦後日本では統制経済の崩壊により急激なインフレが発生する
11) 預金封鎖と新円切り替えによって事実上の預金の凍結を行う
12) 預金が引き出せない間にも急激なインフレが進行し、預金の価値が失われる
13) これも「インフレ税」である
一方、歴史を振り返れば、「インフレ税」は国家債務を解消する常套手段でもありました。
14) 過去に政府通貨の過剰発行(政府債務の急拡大)による通貨の信用消失は何度も起きている
15) 通貨の価値が失われる時、極端なインフレが発生して政府債務が消失する
16) これが典型的な「インフレ税」
これに近い「国家の借金チャラ」作戦は、新興国や途上国では現在も日常茶飯事です。例えばブラジルやアルゼンチン、ソ連崩壊後のロシアがこれに当たります。
1) 国内経済の混乱で為替市場で通貨が暴落
2) 国債のデフォルト危機でさらに通貨が売られる
3) 通貨安によるコストプッシュインフレが加速する
4) 通貨防衛で金利を上げるが、インフレ率ははるかにこれを上回る
5) 混乱が収束すると・・・あら不思議、国家債務が圧縮されている・・(借金チャラ)
■ ゼロ金利・マイナス金利を維持する為に必要な金融危機 ■
封建主義の終了によって、国家や政府は一方的に国民から搾取する存在では無くなります。様々な福祉やインフラ整備によって、国家や政府は国民の利益を追求する様になります。
民主主義においては納税者である国民は、国家に対して相応の対価を要求しますが、それは往々にして国家に財政の負担限界を超えてしまいます。結果的に国家は財政赤字を膨らめ続ける事になります。
経済成長率が高い時期には、国家債務の拡大よりも税収の増加や、インフレ率の増加によって国家債務の拡大は緩やかです。しかし、成長率が下がると、国家債務は加速度的に膨らみ始めます。
ここで、社会福祉費を切り詰めたり、インフラ整備の予算を圧縮する緊縮財政を進めると、国民の不満を煽る事になります。民主主義において、政権を維持する為には債務の拡大を止める事が出来ません。ここで、金利が上昇すると財政の維持が難しくなります。
そこで、頭の良い誰かが考えました・・・金利を抑制すれば良い・・。
現代において「露骨な金融抑圧」はタブーですから、金利が低下するイベントを発生さえる事が望ましい。そうだ、バブルを作って崩壊させればイイ!!
そうすれば、中央銀行が国債を大量に買う事も、通貨を大量に発行する事も容認される・・・。
こうして、1980年代以降、幾度と無くバブルが作られ崩壊していったとさ・・・。
とまあ、頭のネジの緩んだ陰謀脳は妄想してしまう訳です。
■ 消費税増税で成長率を抑制すれば国債金利をゼロ以下に抑えられる ■
現代版金融抑圧(MMT)のトップランナーの日銀と財務省はさらに賢い。
既に日本の財政赤字はGDPの200%を超えていますから、国債金利がプラスでは、いつかは財政が破綻します。そこで、偉い人達は考えました・・・・。
消費税増税で適度に消費を冷却すれば、税収も増えるし、成長率も低いまま維持出来る。マイナス金利なら財政も若干なら拡大出来るから、政府支出によって名目GDPを金利より高く維持してMMTを長期化する事も可能だ!!
真面目な経済学者が読んだら激怒しそうですが・・・陰謀脳の戯言ですから・・・。
あ!私は日銀と財務省を尊敬していますよ。金融抑圧って資産を沢山持っている人の負担が大きいので、「ステルスな所得移転」としては有効な手段だと思います。アメリカの共和党支持者は、所得移転に敏感ですから、バブル崩壊の様なイベントでも無い限り、中央銀行の国債の大量買入れなど認めませんが、日本人は全体の利益を優先するので、多少のモラルハザードは「結果的に皆の為になる」ならば問題としません。
但し、日本だけ「まったり」と「よろしく」やっていると、海の外から破壊的イベントがやって来て、それを台無しにしてしまう・・・。そんな不安に駆られる今日この頃です。