■ ファイザーとモデルナのmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン ■
先の二つの記事は、従来のインフルエンザワクチンを念頭に書いています。インフルエンザワクチンは血液免疫(液性免疫)の賦活が主な効果で、B細胞に作用して「抗体」を作らせる効果が有ります。
先に書いた様に、血液免疫(液性免疫)は粘膜では有効では無いので、感染予防効果は50%程度と高いものでは無かった。
ところが、今回ファイザーとモデルナが開発したワクチンは90%以上の感染予防効果を発揮したとされています。アメリカのアメリカ食品医薬品局(FDA)は、新型コロナワクチンの感染予防効果を従来同様に50%程度と見込んでいたので、90%を超える効果に医学界は驚いています。
「90%以上の感染予防効果」は、ワクチン接種群と、プラセボ(偽薬)接種群の、接種後の感染数を比較して導きだしたもので、ある程度の信憑性があります。
■ 細胞免疫を賦活するmRNAワクチン ■
ファイザーとモデルなのmRNAワクチンは、タンパク質の合成の再に作られるmRNA(メッセンジャーRNA)を直接筋肉に注射して、筋肉の細胞内でウィルスのスパイク蛋白質を合成させるものです。
一般的な不活化ワクチンがウイルスを薬品処理してタンパク質を適当に分断したものであるのに対して、mRNAワクチンはスパイク蛋白を正確に合成する。
もう少し分かり易く書くと、従来ワクチンが「どれが効果のあるのか分からないタンパク質の断片」をトライ&エラーで作り出していたのに対して、mRNAワクチンはウイルスに特徴的なスパイク・タンパク質を正確に合成し、タンパク質の構造もほぼ再現出来るので、より本物に近いウィルスのパーツを再現する事に成功しています。ウイルス自体を合成するのでは無いので、毒性は無いとされています。
mRNAワクチンの優れている所は、従来ワクチンでは出来なかったヘルパーT細胞やキラーT細胞などの免疫反応を賦活化する点です。これらは細胞性免疫と呼ばれますが、粘膜組織内でウイルスに免疫を発揮する。要は、最初に感染してウイルスが増殖する気道上部や鼻孔粘膜などでの感染防止が可能になります。
これは感染防止にも、感染拡大防止にも有効に働きます。
■ mRNAは1日程度で働かなくなるが、免疫記憶は残る ■
ワクチンの性能に、持続時間と副反応が有ります。
mRNAは接種後1日程度でタンパク質合成をしなくなる様ですが、生産されたタンパク質によって賦活されたヘルパーT細胞やキラーT細胞が免疫記憶を行うので、効果は在る程度持続すると考えられます。
一方、mRNA自体は短時間で効果を失うので、炎々に指標タンパク質を合成し続ける様なリスクは有りません。例えば、接種部位に長期に炎症が続く様なリスクは少ない(ガン化の原因になり得る)。
■ DNAワクチンに比べて突然変異のリスクは少ないmRNNAワクチン ■
新型コロナウイルスのワクチン開発では、mRNAワクチンと並び、DNAワクチンも注目されていました。mRNAワクチンが指標タンパク質を作るメッセンジャーRNAを直接接種するのに対して、DNAワクチンはmRNAを作るDNAを接種する点が異なります。
日本では大阪大学などが研究に先行するDNAワクチンですが、DNAの増産は大腸菌などに行わせます。合成されるDNAは一本鎖DNAで、突然変異の頻度が二本鎖DNAに比べると高い。DNAワクチンは突然変異によって、目的としないタンパク質を合成し続ける可能性が無くは有りませんが、mRNAにも突然変異は起こります。ただ、mRNAは1日程度でタンパク質合成をしなくなる様ですので、DNAに比べて安全性は高いとも言えます。
■ かなり有効性が高いワクチンだが・・・ ■
ファイザーやモデルナの発表、或いはmRNAワクチン自体の優位性から、かなり有望なワクチンという印象を受けます。
一方、mRNAは壊れ易いので低温での管理が必要になります。ファイザーのワクチンはー70度、モデルナのワクチンは-20度での保管が要求されます。-70度以下となると、普通の病院などでは冷凍設備が対応しませんので、ドライアイスや液体窒素などによる冷却に頼る事になります。これは扱いが厄介です。
モデルナのワクチンは-20度の管理なので、実用的とも言えますが、その分、安定剤が使われておおり、その安定剤の安全性の検証などは、これからされる必要が有ります。
■ ジカ熱ワクチンでは失敗したmRNAワクチン ■
mRNAワクチンお実用の先例はジカ熱のワクチンが有ますが、今は接種が中止されています。
実はウイルスの中には1回目の感染より、二回目の感染で重症化するウイルスが有り、ジカ熱ウイルスはこれでした。この様なウイルスにワクチンを接種して免疫が賦活した状態で感染すると重症化する。(ADE)
新型コロナウイルスもADEが疑われており、mRNAワクチンは合成されるタンパク質がより実際のウイルスに近いので、ジカ熱ワクチンと同様にADEが発生する可能性は否定出来ません。
■ 2%で39℃~40℃の発熱 ■
両ワクチンとも2回目の接種の後に、発熱や倦怠感や接種部位の腫れなどの副反応が有る程度発生する様です。
特に39℃~40℃の発熱が2%の人に現れるなど、インフルエンザワクチンよりも副反応は強い。さらには「腕がガチョウの卵の様に腫れた」との報道もあります。
健康な人には風邪程度の影響しか与えない新型コロナウイルスを予防する為に、インフルエンザ並の39℃以上の発熱が2%の人に現れるワクチンって・・・何だかな。
■ アジュバンドや安定剤の安全性 ■
現時点ではメリットばかりに注目が集まるmRNAワクチンですが、免疫を賦活する為にアジュバンドが使われていると思います。この安全性を問題視した記事は少ない。
今までもワクチンのアジュバンドの安全性に関してはは、自己免疫疾患を誘発する可能性などが指摘されています。これらの副反応は接種後時間が経ってから現れる可能性も有り、今の所はmRNAワクチンの安全性は確立していません。
又、壊れ易いmRNAを安定させる為に安定剤が使われている様ですが、この安全性も未確認です。
■ 重症化予防には従来ワクチンの方が有利? ■
メモリーT細胞やキラーT細胞などの細胞免疫は、ウイルスが体内に侵入したての、ウイルス量が少ない時には有効に働きます。一方、ウイルスが体内で増殖してしまった場合などはIgGなどの「抗体」が有効に働きます。
おそらく、mRNAワクチンは感染予防には役立ちますが、感染後の重症化の予防効果は従来製法のワクチンの方が高い可能性も有ります。
従来ワクチンに比べ、細胞免疫において有利なmRNAワクチンですが・・・
安全性が確認されるまでは、慌てて接種するものでは無いと思います。
「ワクチンは危険」と言う警告だけではそこら辺のブログと同じになってしまうので、mRNAワクチンの効果と副反応に関しては、しばらく情報を集め続けたいと思います。