「ドイツ銀行」・・・写真はネットより
■ 陰謀論と見まかう、一般経済紙の記事 ■
シリコンバレー銀行やクレディースイスの破綻以降、一般の経済紙でも「次はドイツ銀行かもしれない」などと書かれた記事を見るようになりました。さらには「ドルと米国債が危機の中心」などと、「陰謀論かよ!!」ってツッコミを入れたくなる様な記事も出て来ています。
■ ペトロダラーの終焉 ■
ニクソンショックで金兌換性を停止したドルが、その価値を保ち続けたのは「石油決済通貨」だったから。「ペトロダラー」などと呼ぶ人も居ますが、その構造が崩れています。
ウクライナ機器でロシアをSWIFTから締め出したアメリカですが、ロシアはルーブルでしか原油を売らない事で、結果的にルーブルは原油決済通貨としての地位を確立しました。
今までアメリカはドル以外の原油決済を試みた国を、ことごく敵視し、潰してきました。ユーロ決済を試みたイラクやイラン、アフリカ共通通貨を作って原油決済に使おうとしたリビアを攻撃しています。
ところが、ロシアがルーブルでの原油決済に成功すると、アメリカの顔色を伺っていたサウジアラビアやアラブ首長国連邦が原油決済に元やその他の国の通貨を使い始めました。ケニアは先日、両国とケニアの通貨での原油決済を承認された。
ケニアの大統領は国民に「数週間以内にドルにイベントが起きるから、ドルを手放せ」と伝えましたが、ケニア国民は「ケニアの通貨がドルより安全な訳が無い」と笑い飛ばしています。
■ サンドマン計画 ■
ネットには、「世界100カ国余りが、一斉にドルと米国債を売り浴びせる『サンドマン計画』が近く実行されるという「噂話」が流れています。こういう噂はたいていフェイクですが、中露と西側諸国が露骨に対立し、ペトロダラーのシステムが崩れ、ケニアの大統領が意味深な発言をするので、「もしかすると・・・」などと妄想してしまいます。
今後、原油決済や貿易決済で、ユーロや元、ルーブルやその他の通貨の比率が増えると、ドルは世界的に余り始めます。銀行危機で世界の銀行は手元のドルを増やしていると思われますが、新興国が手放しているドルを西側の銀行がかき集めているのかも知れません。結果的にドルに大きな下落圧力は生じていませんが、何かを切っ掛けにこのバランスが崩れるかも知れません。
そのタイミングで新興国がドルや米国債を売り浴びせたら、ドルとて無事では居られません。しかしドルの終焉は金融システムや資産市場の崩壊を意味しますから、仕掛けた側も大きな痛手を負います。それでも「サンドマン計画」が実行されるのであれば、それはアメリカ合衆国が崩壊する事と引き換えに実行されるでしょう。
■ ドイツ銀行危機 ■
ドイツ銀行のデリバティブ残高は膨大で、金利上昇で経営が危機に陥る可能性は、ここ数年来、何度も話題に上っています。確か2019年時点のデリバティブ残高が4,400兆円という記事を読んだ記憶があります。「どんだけーー」と言いたくなる数字です。それから、多少は圧縮されているとは思いますが、まだ相当額の残高を抱えているはずです。
リーマンショック後の狂った様な金融緩和と、コロナ後の常軌を逸した財政拡大と金融緩和で、世界の市場はパンパンに膨らみ切っています。市場から溢れ出た資金は、インフレ率を押し上げ、債券市場を崩壊させようとしています。国債金利もどんどん上昇しているので、安全資産と言われた米国債ですらリスク資産になり、含み損を拡大し続けています。シリコンバレー銀行のリスク管理は確かに甘かったが、米国債やMBSがリスクになっている事を露呈させました。
ドイツ銀行に限らず、多くの銀行や年金基金が、国債や債券、デリバティブ商品を大量に保有しています。危機はドイツ銀行にだけあるのでは無く、至る所に蠢いています。
■ AT1債(劣後債)という爆弾 ■
クレディースイスはスイス最大の銀行のUBSが買収した事で大崩壊の引き金にはなりませんでしたが、社債市場に大きな影を落としています。クレディースイス買収に当たり、本来価値が無くなるクレディースイス株の価値を残す一方で、クレディースイスが発行して劣後債(AT1債)が2兆円分無価値になりました。
AT1債は金融機関が発行している社債の一部で、金融機関が経営破綻した時に、強制的に自己資本に組み入れられるたり、株式に転換されて投資家は大きな損失を被ります。ハイリスクですが、銀行の信用力を背景に、多くの投資家が購入しています。
AT1債は「償還可能日」が設定されており、次回は6月に召喚可能になるものが多い様ですが、償還に応じて、金融機関が再びAT1債の発行で借り換えをするコストは金利が20%~30%になると予測されています。一部の自己資金の薄い銀行は、償還に応じない様です。
AT1債市場は既に金利が高くなり過ぎて昨日を失っています。銀行は資金調達の手段を一つ失っています。株価も下落位し、社債発行コストも上昇する一方で、手持ち資産は含み損を拡大しています。
一部では「シリコンバレー銀行や、クレディースイスは突出してリスクを多く抱えていた。銀行危機には波及しない」という楽観的な意見もありますが、NHKや日経新聞でさえ、AT1債の問題に言及している今、どこまで楽観が許されるかは未知数です。
■ 「サンドマン計画」は起こりうる ■
戦後構築されたドル基軸体制や、アメリカ一極体制は、ものすごいスピードで崩壊を初めています。同時に、ドルによって支えられていた金融市場も、通貨システムも大きなストレスが掛かっています。
この状況を、アメリカから覇権の座を奪いたい中国や、アメリカと敵対するロシア、そして今までアメリカに蹂躙されて来た中東やアフリカ、南米諸国が見逃すでしょうか・・・。彼らがその気になれば「サンドマン計画」はいつでも実行可能です。
そして「グレートリセット」は、それを前提として動いている。システム不良になった資本主義と民主主義を「リセット」すると宣言しているのですから。
大手報道機関の記事が、私たち陰謀論者が長年書き続けて来た内容と、何ら変わらなくなってしまった今、陰謀論が夢想した世界が実現しようとしているのかも知れません。そして、それは希望に満ちた世界では決して無い・・・陰謀論的未来ですから。