ITバブル崩壊は多少の紙幣で鍋の底の穴が塞がった
リーマンショックでは穴が多きかったので、札束で穴を塞いだ
コロナバブルの崩壊は、鍋の底が抜けたので、どんなに札束を投入しても、穴が塞がる事は無い。
鍛冶屋。さんへの回答として書きましたが、長くなったので記事にしました。
鍛冶屋。さんは勘違いされている様なので、確認しますが、私は三橋貴明氏批判を書いた初期に記事にも「政府通貨が何故いけないのか実際には分からない」と書いています。充分に自制的な政府でインフレになったら通貨発行量を絞ったり、増税を出来る政府ならば、中央銀行制などはそもそも必要無く、経済規模に応じた政府通貨を発行しても全く問題は無い。
1)政府は不景気になると財政を拡大しろという世論に押されて財政を拡大する
2)財政の拡大は名目GDPは拡大出来るが、乗数効果はゼロ以下なので、経済成長には繋がり難い。
3)財政拡大の弊害はクラウディングアウトという形で民間活力を奪う
4)発達した金融市場を持ち、資金が国境を軽々と超える事の出来る世界では、政府が供給した資金の多くが金利に吊られて海外で運用される。これはアメリカとて例外では無い。
5)過剰流動性は資産市場をバブル化して、経済を不安定にする
6)本来国内で運用されるべき資金が海外で運用される事により、国内の期待インフレ率はゼロ以下に落ち込み、金利がゼロに張り付く
7)リスクに対して低すぎる金利によって、国内の投資意欲が削がれ、成長率がさらに低下する
8)先進国では上記の連鎖により金利がゼロになり、デフレ化、或いは低インフレ率化が進む
9)資産市場や、新興国経済はバブル化が進み、資金はここに留まり、実体経済を刺激する事が出来ない
10)バブル化した市場や、バブル化した新興国経済は金利上昇局面で必ずバブルの大崩壊を起こす
11)バブル崩壊の影響は、金融システムや通貨システムを不安定化すると同時に、実体経済にも大きなマイナス効果を生み、経済が停滞して失業者が増大する。(リーマンショックが良い例)
12)大規模な金融緩和でも充分なインフレが発生しなかったので、主流派経済学者までもが、通貨の過剰供給で期待インフレ率を押し上げる「リフレ論」や、財政拡大によってインフレを達成する「シムス理論」で「財政拡大も止む無し」という意見に傾いた。
13)主流派経済学者は「統一政府」を全く否定しておらず、成長の限界を迎えてインフレの達成が難しい経済では、ある程度の財政拡大が必要と主張した。しかし、これは金利がゼロ近傍に張り付いている事が前提。インフレを達成して、金利が上昇し始めたら、財政を縮小する事は言うまでも無いので、彼らは殆どこれに言及していない。MMTですら、インフレが発生したら、財政を縮小するか増税すると説明している。
14)コロナ禍のロックダウンなどで極端に需要が減少した時期は「シムズ理論」は経済の崩壊を防ぐ為に正しい政策で、各国政府は財政を急拡大させて、国民への直接給付で景気を下支えした。
15)直接給付のやり方と規模に問題があった。アメリカでは所得が減少していない様な人にも一律に大規模な直接給付を行ったので、資金は資産市場に流れ込んでコロナバブルを拡大した一方で、高級車市場や一般の消費市場にも流れ込み、ウクライナ戦争より前にアメリカではインフレが発生していた。
16)経済は「動的」で「定量的では無い」ので、何かを切っ掛けにインフレが発生すると、インフレは加速度的に進行する。デフレ傾向で値上げを抑制されていた供給サイドが値上げの免罪符を得て値上げを加速させたり、高くなる前に買っておこうという消費者心理がインフレを加速する。
17)インフレ率が上昇し始めると、上記サイクルがポジティブフィードバックを起こすので、さらにインフレ圧力が高まる
18)ある時点で、中央銀行がインフレ対策の利上げを開始する。通常の景気循環であれば、これで過剰な資金が回収されてインフレ率は低下する
19)バブル化した市場を有する経済では、中央銀行の金利引き上げは、必ずバブルの崩壊を起こし、それ以降の経済は長期に渡り停滞し、失業者が増える。
20)リーマンショック以降は、バブル崩壊の規模が大きくなり過ぎて、金融市場そのものが破壊されたり、通貨システムの継続性に疑問が持たれたりした。
21)リーマンショック以降の狂った様な金融緩和と、コロナ禍以降の狂気を越えた財政出動とさらなる金融緩和で、超バブル化した市場は、崩壊というハードランディング以外の調整方法を失った。
22)ウクライナ戦争を切っ掛けにしているとは言え、ドル基軸体制の継続性には、ぞれ以前よりも疑問が抱かれていた。それはドルが過剰発行され過ぎたので、その価値は既に相当に薄まっており、それを反映する形で資産市場がすぐにバブル化する事に現れていた。ドル基軸体制を続ける限り、10年周期のバブル崩壊は不可避で、実体経済への悪影響はもはや経済や国家を破壊し得るレベルに達していた。
23)MMTは決して間違えた理論では無いが、資産市場を全く無視している点で、主流派経済学に大きく劣る。MMTは資産市場など存在しないが如くに振舞うが、自裁の経済や社会は資産市場の影響を大きく受ける。
24)経済学は「道具」なので、仮に理論的に破綻が無くとも、資産市場や実体経済の複雑性を無視したMMTは、経済運営の実用に耐えない。
以上が私のMMTへの批判であり、さらにはリーマンショック以降の主流派経済学者の場当たり的な対策への批判です。リフレ派もかなり馬鹿だったが、シムズ理論に至っては「当たり前過ぎて」笑った・・・。まあ、彼らは「グレートリセット」の仕込みとしてこれらの理論を使っていたと思うので、彼らがバカでは無いのですが・・・。
私はMMTの理論を否定しているのでは無く、インフレ発生時に財政縮小と増税をすれば良いという「無邪気さ」が気に入らないのです。
実際にインフレが発生する中で、国民は生活窮乏を政府に訴え、様々な財政拡大による生活補填を要求しています。そして、人気取りの政府はこれに応じています。
中央銀行が金利を上げてインフレを抑制する一方で、政府は財政拡大によってインフレを加速させています。このジレンマを解決出来るのは、国民の生活を犠牲に出来る「完全に合理的な政府」ですが、民主主義の元では不可能です。
ですから、グレートリセット後の世界、特に西側諸国は「デジタル管理社会」によって、「合理的で自制的な政府」が国民を支配する社会になるでしょう。
通常ならば、国民は管理される事を嫌いますが、「ベーシックインカム」という飴によって、多くの国民は政府に従順に従う様になる。
政府に反攻出来るのは、自給自足で貨幣を殆ど必要としない人か、ベーシックインカムなどに頼らなくとも多くのお金を所有したり、稼いだり出来る人だけになるでしょう。