日銀ホームぺージより
日銀ホームページより(拡大)
■ 銀行は日銀当座預金を引き出せると「日銀のホームページ」に買いてある ■
鍛冶屋さんや、余計なおせっかい(笑)さんから、「日銀当座預金は銀行が自由に引き出したり出来ない決済用の口座だ」とのご指摘を頂いたので、日銀のホームページを掲載します。
「銀行券(お札)は、個人や企業への支払いに必要な分を用意するため、金融機関が日本銀行当座預金から引き出して、日本銀行の窓口から受け取ることによって世の中に送り出されます。これを「銀行券の発行」といいます。
その後、実際に、個人や企業の方々が金融機関から預金を引き出して銀行券を入手し、財(モノ)・サービスの購入や税金の納付といった様々な目的に銀行券が利用されていくことになります。」
■ オペレーションの決済口座としての日銀当座預金 ■
日銀当座預金が引き出せないというMMT界隈の誤解は、「お金は国債発行から生まれる」という事に必要以上に意味を見出すMMT信者が、日銀当座預金の機能がオペレーションの決済口座であるという点しか見えなくなった結果では無いかと妄想しています。(誰かの誤解が拡散したのでは?)
日銀はかつては銀行に資金を直接融資して市中の資金量をコントロールしていました。こと時の金利を「公定歩合」と呼び、市中金利もこれが基準になっていました。不景気の時には公定歩合を下げて、民間の資金需要を拡大し、不景気の時には公定歩合を下げて景気の過熱やインフレを防いだ。しかし、これだと金利決定権を持つ中央銀行の意向によって景気が左右され過ぎる。そこで、市場原理で金利が決定される様に制度改革されます。
中央銀行の金利の誘導目標は、オーバーナイトのコール市場の金利となります。日銀が直接オーバーナイト市場に資金を供給するのではなく、日銀が銀行との間で国債や社債などを売買する「オペレーション」によって、銀行の資金量をコントロールして、間接的にコール市場の資金量を調整して金利を誘導しています。
■ 日銀当座預金の超過準備には金利が付く ■
日銀ホームページより
補完当座預金制度は、日本銀行が受け入れる当座預金等のうち、いわゆる「超過準備」に利息を付す制度です。2008年(平成20年)の制度導入以降、長らくプラスの金利が適用されていました。その後、2016年(平成28年)1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」が導入されたことにより、「超過準備」部分を含め、日本銀行当座預金は3階層に分割され、それぞれの階層ごとにプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利が適用されることになりました。
この文章から、「日銀当座預金の超過準備はゼロ金利が基本」との勘違いが生じている様ですが、基本的には超過準備の金利はオーバーナイトのコール市場金利に合わせて調節されます。
「FRBの利上げ」とうのは、コール市場への資金供給量の減少によるコール市場金利の上昇という形を撮りますが、通常は市場に国債や社債を打って銀行の資金を回収する「売りオペ」市場から資金を回収します。しかし、国債価格や社債価格が下落している状況(金利は上昇)で、「売りオペ」は実行が難しい。国債金利が上ってしまうからです。
そこで、FRBは現在、FRB当座預金の準備預金金利をコール市場金利に揃えて上げる事で、「利上げ」を行っています。ゼロリスクで金利が得らるので、銀行はFRBの当座預金に余剰資金を預けます。
日本では長らく市場金利が「ゼロ金利」だったので、日銀当座預金の超過準備の金利は本来「0」であるべきですが、日銀はバブル崩壊で傷んだ銀行のバランスシートを改善させる為に、超過準備に0.1%の利付けをしていた。金融機関は民間に融資するよりも日銀当座預金で0.1%の金利を得る方が低リスクで儲かると判断して、ブタ積を増やしました。
しかし、異次元緩和で、超過準備にマイナス金利を導入した事で、銀行はブタ積を続けると損になるので、超過準備を引き出して、民間に融資する様になります。
■ 日銀は直接金融機関に融資もしている ■
日銀はオペレーションの他に直接金融機関に資金を融資をしています。日銀は国債や社債の担保を取って、民間銀行に融資も行います。コール市場の資金量が少なく、資金調達が難しい時など、コール市場の誘導目標の金利で資金を融資します。期間は5年などと長期の場合もある様です。金融機関が国債を保有しているのは、利益の他に、日銀融資の担保の意味合いもあるのです。
この他、コール市場金利が急騰した場合や、円高が加速した時や、コロナ危機で市場の流動性が著しく低下した時には、日銀は銀行への直接融資を拡大します。直近では「コロナオペ」があります。ゼロ金利で100兆円規模の貸し出しを行いました。これは融資なので、後から銀行から回収します。(現在倒産や廃業が増えているのは、コロナオペの融資で生き残ったゾンビ企業が、融資を返済できずに潰れています)
■ 日銀は円高対策で融資する事もある、そして銀行の運用先は海外? ■
下は2012年12月21日の日経新聞の記事
「日銀は20日、民間への融資を増やした銀行に無制限で資金を供給する新しい貸出増加支援制度を創設すると正式に発表した。年間15兆円規模の供給量を見込んでいる。海外向けの融資も制度の対象とし、日銀から得た円資金をドルなどに転換する動きが進むことで、円高是正効果を見込んでいるのが特徴だ。
白川方明総裁は20日の記者会見で「成長力の強化につながる民間の前向きな資金需要を最大限サポートする」と狙いを述べた。
新制度は、金融機関が民間への融資を増やせば増やすほど日銀から低利で資金を得られる仕組み。日銀は事実上のゼロ金利政策を敷いているが、企業の設備投資などが落ち込んでおり、実体経済にマネーがまわっていない。銀行が新制度を使って積極的に融資先を掘り起こすようになれば、前向きな民間投資が促されるとの考えがある。
新制度では年0.1%で最長4年まで借り換えが可能。資金供給の総額の上限は決めず「無制限」とする。貸出期間は2013年1月から14年3月までの15カ月間で、四半期に1回の頻度で実施し、1回目の融資は13年6月ごろとする。
供給額は四半期ごとの金融機関の融資残高が、基準時点とする今年10~12月期と比べてどれだけ増えたかを算出して決める。日銀によると、最近1年間の金融機関の貸出増加額は全体で約15兆円で、新制度で同額規模の資金供給ができる見通し。
新制度では外貨建てや海外企業向けの貸し出しなど、幅広い融資先を支援制度の対象と認めた。白川総裁は「邦銀の国内融資の伸び率は前年比1%程度だが、海外向けは2割も増えている」と述べ、むしろ海外融資を後押しする色彩が強い。
新制度で海外融資がさらに増えれば、日銀から得た円資金を売ってドルなどの外貨を買う動きが進み、結果として円高を是正する効果があるためだ。外資系金融機関を通じてヘッジファンドなど向けに資金が流れ、低金利の円を元手に高金利通貨などに投資する「円キャリー(借り入れ)取引」が活発化し、一段の円安を促すとの指摘もある。
ただ「海外の金融機関を取り巻く規制環境は厳しい。リスクを伴う融資を積極的に増やすのは難しく、円高是正効果は限られる」(バークレイズ銀行の山本雅文ディレクター)と指摘する声もある。」
上の記事で金利が0.1%なのは、日銀当座預金の金利に合わせたからです。
1)日銀が民間企業に融資する
2)民間企業は海外に融資する
3)円売りドル買いが高まるので、円安に誘導する
要は日銀が「円キャリートレード」を推奨しているのです。
■ 日銀融資が海外融資に使われるのに、銀行が日銀当座預金から引き出した資金を海外融資に使えない訳が無い ■
ほとんどラノベのタイトルの様な小見出しになってしまいましたが・・・銀行が日銀から受けた融資は「他人資本」です。これを民間の銀行は海外の融資先に融資出来ます。融資先とは企業だけでは無く、銀行も含まれます。仮にアメリカの銀行に融資した場合、アメリカの銀行はファンドなどで資金を運用するので、日銀マネーは海外市場を拡大する役割を負います。
日銀に借りたお金ですら海外融資出来るのですから、銀行が日銀から引き出した資金が海外融資に使えない訳が無い。銀行が日銀から引き出した資金の中には、銀行勘定で「自己資金」に相当するものがあれば、それは米国債投資などの直接投資にも使えます。
■ MMT信者は日銀のホームページを読んで基本を勉強しよう ■
今回はコメント欄に頂いた「日銀の当座預金は引き出せない」というご意見に対して、日銀のホームぺ―ジを参照しながら、回答致しました。同時に「日銀当座預金に金利は付かない」というご意見に関しても回答いたしました。
日銀のホームページは、詳しく分かり易く解説されているので、本当に便利です。ただ、最近の記述は「マイナス金利」がベースになっているので、金融が正常化(プラス金利)になった時のオペレーションや、当座預金の金利に関しては、金融調節機能の全体像を把握していないと理解出来出来ないかと思います。
MMT信者の方は、他人をバカ呼ばわりする前に、日銀のホームページを読んで、少し基本を勉強されては如何でしょうか。