人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

アメリカは再び住宅バブル?・・・リーマンショック前の水準に

2018-07-11 10:25:00 | 時事/金融危機
 
■ 「妖精物語」定点観測 ■



ゴールドマンサックス 毎月分配型債権ファンド「妖精物語」2018.05.31レポートより


債権市場で何が起きているかなんて、素人は知る由も無いのですが、私はゴールドマンサックスの舞毎月分配型債権ファンド「妖精物語」の月次レポートを眺めながら、妄想を膨らめています。元々はリーマンショック時に母が保有して「売ろうか?どうしよう?」と相談を受けたのが切っ掛けでした。

国債やモゲージ債や社債をバランス良く組み合わせていて、上位の債権の銘柄などを眺めていると、素人ながらにトレンドが薄っすらと見えて来る気がします。

最近気になるのは、ジニーメイやフレディーマックなどの住宅関連債権が上位に居る事。ジニーメイは政府機関で、邦住宅局保険や退役軍人協会の保証が付いた証券について支払保証を行うことを業務としています。政府保証が付いた証券を扱うので健全性が高く、リーマンショックの際にも赤字になる事はありませんでした。

一方、フレディーマックはファニーメイと同様に市場から住宅債権を買い取る半公的な金融機関で、リーマンショックの際に多額の損失を出し、政府が資本注入をして国有化されています。

それらの住宅関連機関の債権がチャートの上位に居ると言う事は、アメリカで住宅バブルが再び発生している可能性が高い。

ちなみに政府関連機関債も増えていますが、 「カナダ・ハウジング・トラスト No.1」などは明らかに住宅債権を扱う政府機関です。

■ サブプライムショック時の水準を回復した米住宅価格 ■



S&P/ケース・シラー住宅価格指数

上のグラフは全米20都市の住宅再版価格を元に造られる「ケースシラー住宅価格指数」ですが、現在はサブプライムショック直前の価格を越えています。これをして「アメリカは住宅バブルだ」と断言は出来ませんが、アメリカ住宅市場が過熱気味である事は注意が必要です。

アメリカで住宅バブルが発生する時の特徴として、郊外の大型住宅(マック・マンション)の建設ラッシュが起きるそうです。2016年頃からマック・マンションの建設が増えている様で、低金利を背景に、アメリカで住宅市場が過熱気味な事が分かります。

■ FRBが住宅市場を支えている? ■




FRBのMBSの保有残高

リーマンショック直後、一時的に紙屑同然になった住宅担保証券(MBS)をFRBは大量に市場から買い取り、市場が崩壊する事を防ぎました。その後、FRBは買い取ったMBSを市場に売却するというニュースが流れていました。

上のグラフを見るとFRBは2012年からMBSを買い増している様に見えますが、これは保有するMBSの価格が回復した為に残高の時価総額が増えたのでしょう。ただ、FRBは償還時期を迎えたMBSと同額を市場から購入しており、MBSの市場でFRBの存在感は小さくはありません。

2017年秋からFRBはMBSの再投資を縮小する予定でしたが、その後の長期金利の上昇を踏まえ、MBSの再投資を継続している様です。本来はMBSの再投資を停止してバランスシートの縮小を図る時期なのですが、FRBは今年6月のFOMCで再投資継続を議論している様です。

■ バブル化と金利上昇に挟み撃ちに在る住宅市場 ■

ケースシラー住宅価格指数や、郊外の大型住宅の建造ラッシュからは、アメリカの住宅市場がバブル化している可能性が伺え、一方で金利上昇の影響をFRBがMBSの再投資によって抑制している事がお分かりになったかと思います。

日本やヨーロッパや他の国々も似たり寄ったりで、リーマンショック後に中央銀行が超緩和的金融政策を継続した為に住宅市場や不動産市場はバブル化しています。日本の首都圏のマンションは一般のサラリーマンの年収では手が届かない価格になっています。

冒頭で紹介したゴールドマンサックスの債権ファンドに限らず、多くの金融商品が様々な債権を元に作られ流通しています。その総額はリーマンショック前の水準を軽々と越えています。

MBSが、BBB格の社債が、新興国や南欧諸国の国債が・・・微妙なバランスの上で高値を維持している事に自覚的な人達がどれだけ居るでしょうか?株式市場も同様です。


昨今の株価の動きを観ているとい、明らかに売り抜けている連中が居ます。しかし、日銀や年金資金がその穴を埋め、さらにはゼロ金利から逃げ出した個人の資金が様々なルートから流入して、相場の下落を覆い隠しています。


賢い奴らは逃げ足が速く、最後は庶民のお金が溶けて終わる。何度も繰り返されて来た事が再び起こる日が近い。そんな妄想が膨らむ米住宅市場の近況です。


『湯を沸かすほどの熱い愛』と『アンダーカレント』と『UNDER CURRENT』

2018-07-07 04:28:00 | 映画
 


『湯を沸かすほどの熱い愛』より


■ 観たいけど観れなかった映画『湯を沸かすほどの熱い愛』 ■

2年程前に、中野駅のトイレに行く通路にしばらく『湯を沸かすほど熱い愛』という映画のポスターが貼られていました。その隣には「拳銃撲滅」とか「クスリは身を亡ぼす」系のポスターが貼られていたので、私はしばらく風呂屋の防犯ポスターと勘違いしていました。

赤の筆文字で書かれた作品タイトルが園子温作品かと勘違いさせますが、中野量太という方の監督・脚本作品。2015年に公開されましたが、その年の日本アカデミー賞を6部門獲得するなど、映画ファンには評判の良い作品でした。

私も観る気満々でしが、オダギリジョーが出演していると知って止めました。彼の事を嫌いなのでは無く、近年ドラマなどで散見する彼の演技が好きで無かったから。オダギリジョーと言えば彼のデビュー作である『仮面ダイダー・クウガ』の、なんとも初々しい演技が印象に残るだけに、最近の見た目「和製・ジョニー・ディップ」で、何となく浅野忠信?的な焦点を少しハグラカシタ感じの演技は好きでは無かった・・・。

だから、観たいけど観れない・・・。そうして、とうとう劇場に足を運ぶ事はありませんでした。

■ amazon Prime は見逃した映画を観るには良い ■

amazon Prime で動画を観はじめてから、アニメは良く観るのですが、実写映画はほとんど観ません。何故なら観たい映画が無い。ハリウッドや日本の話題作は有るのですが、その手の作品が苦手な私は作品リストをスクロールして溜息をつくだけ。

ただ、『青い春』みたいな映画がたまに混じっていたりするので、一応タイトルはチェックしています。すると先日、『湯を沸かすほどの熱い愛』が無料で観れる事に気付きました。無料ならオダギリジューがツマラナイ演技をしていたら視聴を止めてもいいか・・・・そう思って観始めました。

■ 緻密な脚本に舌を巻く ■

『湯を沸かすほどの熱い愛』、噂に違わぬ素晴らしい作品でした。私はこういう映画が観たいんです。特に杉崎花の演技が光っています。女優がある年齢の時に、一瞬だけ演じる事が許される演技、蝉が蛹から羽化する瞬間の、透ける様な青白さを思い出させる瞬間が、しかりとフィルムに記録されています。ちょっと『花とアリス』の蒼井優を思い浮かべました。

銭湯を営む一家の主が突然失踪します。後に残されたのは母と娘の二人きり。風呂を薪で沸かすのは重労働ですから、店を閉じてパートで生計を支える宮沢りえ演じる母親。かわいいけれど、同級生の女の子達から虐めにあっている高校生の娘。母は夫の失踪という現実に耐えながら、健気に娘を育て家事をこなしています。

ところが、彼女は末期ガンの宣告を受けます。余命数か月だと。その日は落ち込みますが、直ぐに探偵を雇って夫の居場所を突き止めます。夫はなんと隣町で若い女と住んでいた。早速アパートに乗り込み、夫をオタマでぶん殴り、癌である事を告白して家に連れ帰ります。とんだ肝っ玉の据わりぶりです。しかし、夫と共に家にやって来たのは10歳位の女の子。夫の子だと紹介されます。

街でばったり再会した一夜限りの関係を結んだ事のある女性に、「あの時の子供が居る」と突然打ち明けられた。そして少女を残して彼女は失踪してしまいます。夫はその後、アパートで少女の面倒を見ていたと。頼りないけれども心の優しい男では在る様です。

死を目前にして母親は娘の為に父親を取り戻し、そして妹まで作ってしまいます。そんな寄せ集めの様な家族ですが、母親を中心に次第に結束してゆき・・・・。

序盤の粗筋を書いてしまいましたが、この作品の凄いのは綿密に練られた脚本。最初の洗濯を干すシーンや、タカアシガニを食べるシーンなど、何気ない日常シーンが全部複線となり、後半に向けて大きな意味を持ったり、暗示になったりするのはスリリングです。

様々な「母親と娘」の関係を、一つの家族を通して幾重にも描く傑作です。


結末が許せる人と、エええ!!と思う人に分かれると思いますが、私は大好きなエンディングです。一週間で4回も観てしまいました。


■ 無性に豊田徹也の『アンダーカレント』が読みたくなった ■


『アンダーカレント』 豊田徹也 より

『湯を沸かすほどに熱い愛』を観ている途中から、この作品が無性に読みたくなりました。2005年に発刊された豊田徹也の『アンダーカレント』という漫画。

こちらも夫が蒸発した風呂屋が舞台です。風呂屋を再開する為に組合から紹介されてやって来た男と、夫に逃げられた女の話です。男は自分の事を語りたがりませんし、いつフラリと居なくなるかも分からない。それでも、いつしか男は頼りになる存在として彼女を支え、近所にも溶け込んでゆきます。

一方、妻は探偵を雇って夫を行方を追いますが、その過程で浮かび上って来るのは自分の知らない夫の姿。出身地や過去だけでは無く、自分と暮らしていた頃の夫の実体も彼女にはアヤフヤなものに思えて来ます。

一方、彼女は子供の頃から水の中に沈んでゆく悪夢に苛まれています。怖いのか、安心しているのか分からない不思議な夢です。首を絞められながら沈んで行く・・・。そんな彼女の夢の原因が、近所の女の子の失踪から明らかになります。そして、遠い過去の糸が手繰り寄せられてゆく・・・。そして夫の隠された事実も明らかに。

実はこの作品、映画以上に映画らしい。話の展開は重層的で慎重。人々の言葉の裏には、本人すら気付かない思いが隠れています。『湯を沸かすほどの熱い愛』の監督は、この作品を読んで着想を得たのでは無いかとい私は妄想しています。

作品が少なく、知名度の低い豊田徹也ですが、『アンダーカレント』は日本のマンガの中でも屈指の名作だと私は思っています。

日本では知名度が今一つですが、フランスでは高く評価されている漫画家です。フランスのマンガ賞を獲得しています。雑誌に掲載された受賞告知が下の画像。



ところで、この作品に出て来るクセの強い探偵を主人公にした『珈琲時間』短編も発表されています。これも面白いです。

■ 『アンダーカレント』の表紙は『UNDER CURRENT』 ■



ところで漫画の『アンダーカレント』の表紙は、ジャズファンが観れば『UNDER CURRENT』である事は直ぐに分かります。

ギターのジム・ホールとピアノのビル・エヴァンスのデュオによる名盤ですが、静かな水の中で静かに沸き上がるインプロビゼーションは緊張感に溢れています。マンガの表紙を見る度に、「マイ フェーバレット バレンタイン」のイントロが浮かんで来ます。



本日は、映画、マンガ、音楽の連想ゲームでした。


今の若者がこの作品を理解できるか・・・『BANANA FISH』

2018-07-06 11:09:00 | アニメ
 


『BANANA FISH』より


今期アニメが始まりました。最注目作品は『BANANA FISH』

今でこそ『海街diary』のイメージが強い吉田秋生が『別冊少女コミック』に1985年5月号〜1994年4月号で連載していた歴史的傑作のアニメ化です。

もう期待が大きすぎて、駄作だったらどうしようと、原作ファンならではの不安を抱きながら第一話を視聴しましたが・・・しっかりと大人の鑑賞に堪える作品になっていました。この絵作りはマッドハウスかなと思ったらMAPPA。監督の内海紘子さんは京アニ出身で初監督の様ですね。丁寧な演出ですが、出来ればもう少しエッジが欲しい。今後の変化に期待です。原作も序盤は話の展開が良く分からない作品ですから、それを良くまとめたと褒めたい。

作者の意図とは別に、良くも悪くも「BL=ボーイズラブ」の原点となった歴史的作品。はたして腐女子はこのハードな作品も妄想ネタに出来るのか?若いアニメファンは反応出来るのか?オールドファンのお姉さま方は現代のアニメを受け入れる事が出来るのか?


興味と不安は尽きません。


とりあえず、どんな作品なのか、ネタバレ御免で、過去記事を再録します。


首筋に突きつけられた熱く冷たいナイフ・・・『BANANA FISH』 吉田秋生 2012.12.08 人力でGO より再録





■ 少女マンガってイライラするよね ■

私は47歳の中年男ですが、
たまに、少女マンガを夢中になって読みます。

だいたい娘の本棚から拝借してハマッテしまうのですが、
最近では「いくえみ綾」作の『プリンシパル』が結構楽しみです。

しかし、少女マンガを読みつけない男性は、
少女マンガを読むと、たいていイライラします。

「こんなイケメンいる訳ネーだろ!!」
「何でここで告白しないんだよ、ボケ!!」
「背景、花、引込め!!」
「フレームからはみ出すんじゃネェーーー」

多くの少女達が少年マンガを普通に読めるのに対して、
何故か多くの男性は少女マンガを生理的に受け付けません。
れは一つの謎です。

多分、女性特有の「はっきりさせたく無い気持ち」が男性には理解出来ないのです。


■ お花畑の対局にある少女マンガ ■

こんなお花畑的な少女マンガの世界において、
少年マンガよりもクールな作家達が沢山居る事は意外に知られていません。

吉田秋生(よしだ あきみ)もそんな作家の一人です。

彼女の作品の登場人物は、何処となくナイフを思わせます。
鋼の持つ硬さ、しなやかさ、鋭利さ、冷たさ・・・そして内に秘めた熱さ。

彼女の作品の主人公たちは、周囲に馴染めない者達です。

彼らは、学校から、友達から、社会から、ジェンダーから、家族から
好むと好まざるにかかわらず、阻害された存在です。

何処となく周囲と馴染めないけれど、
それを確信を持って受け入れる強さを持っています。

最新作の鎌倉を舞台にした「海街シリーズ」でも、
中学生の「すず」ですら、このナイフの肌合いを共有しています。
家庭環境に恵まれなかった彼女は、大人顔負けの強靭さで、この運命と対峙しています。

吉田秋生作品の魅力は、彼らの醒めた視点から眺めた世界の意外性です。
学校も、職場も家族も、集団から疎外された視点で捉えなおされます。

彼らは自分を阻害した、あるいは自分からスピンアウトしてしまった世界を愛しています。
あちら側の社会と、こちら側にいる自分に極めて自覚的でありながら、
確固とした自分の意思で、こちら側の自分を選択し得る人間のみが持つ強さに私は惹かれます。

彼らは、凛としてカッコイイのです。






■ 青年マンガ顔負けのハードボイルドアクション巨編 『BANANA FISH』 ■

そんな吉田秋生の作品群の中では、少し異色なのが今回紹介する『BANANA FISH』です。

『別冊少女コミック』で1985年5月号〜1994年4月号まで連載され、
コミックスで19巻になる大作です。
これは、小品が多い吉田作品では異例です。

さらに、ニューヨークのストリートギャングの青年と
コルシカマフィアの攻防を描くストーリーは、少女マンガとしても異例です。

ところが、吉田秋生の代表作は?と聞かれると、
多くの方はこの作品を挙げます。
最終回は、新聞の記事になった程のヒット作でもあります。

『BANANA FISH』は少女マンガでありながら
多くの男性ファンを持つ稀有な作品です。

■ 謎の麻薬「バナナフィッシュ」を巡るミステリー ■

物語は、謎の麻薬「バナナフィッシュ」を巡るミステリーで始まります。

ベトナム戦争に従軍したグリフィンは、突然、錯乱して戦友を銃撃します。
グリフィンが最後に口にした言葉は「バナナフィッシュ」。

10年以上経過したNYで再び「バナナフィッシュ」と口にして死んだ男が一人。
偶々、彼の最期に立ち会ったアッシュはニューヨークの少年ギャング達のリーダー。
そして、彼そこが、グリフィンの弟だったのです。

アッシュは金髪碧眼の17歳の美少年。
しかし、その風貌とは裏腹に銃の腕前は殺し屋以上。
そして、頭脳はIQ200の天才児です。
彼は、優れた統率力でNYの下町の不良少年たちを仕切っています。

とこらが、アッシュには暗い過去があったのです。
彼は少年のと時、レイプされ、男娼としてマフィアに飼われていたのです。
コルシカマフィアのボス、ゴルチーネはアッシュを愛玩すると同時に、
アッシュの才能にほれ込み、彼に英才教育を授け、
行く行くは自分の後を継がせようとしています。

ところが、アッシュは野生の山猫の様に自由気ままで、
なかなかゴルチーネの思い通りには行動しません。

そして、アッシュの兄、グリフィンを廃人にしたのが、
「バナナフィッシュ」という違法な薬物であり、
その実験にゴルチーネも関わっていると知り、
アッシュは決定的にゴルチーネと対立します。

コルシカマフィアとNYの不良少年達の、
血で血を洗うような抗争が勃発します。

■ 魂のペアー ■

ニューヨークのダウンタウンの不良達に中にあってアッシュは
掃き溜めに降り立った白い鶴の様な存在です。

彼は仲間に囲まれていても、いつも孤独です。
これは、吉田作品の主人公に典型的な「阻害され、孤立した人格」です。

しかし、吉田作品は必ず、「孤立した個人」に「魂のペアー」を用意しています。
取材でアッシュの元を訪れれた日本人青年、英二が、アッシュの魂のペアーです。

極めて平凡ですが、人の良いところだけが取り柄の英二だけにアッシュは心を許します。
アッシュは英二の前でだけは、その鋼に様な心の鎧を脱ぐ事が出来るのです。

■ 少年たちの純粋な愛憎劇 ■

ゴルチーネはアッシュを愛しています。
それは美しい少年への性的愛情であり、
美しい生き物への、本能的憧憬であり、
自分の作り上げた作品への、自己陶酔でもあります。

ゴルチーネのアッシュへの愛は、ひたすら歪んでいますが、
ある種の純粋性の域に昇華しています。
俗を極めた先にある聖なる領域に達しようとしています。

一方、アッシュと英二の関係は、兄弟の様な代償を必要としない友愛です。
二人の美少年の関係と聞くと、腐女子の耳がピクピクと動きそうですが、
彼らの間に、性的な関係はありません。

英二に限らず、不良達ががアッシュとの間に交わす友情は、
尊敬の念に裏打ちされた純粋なものです。

少年達の結ぶ純粋な愛情(友情)と、
マフィアのボス、ゴルチーネの捻じれた純愛の対比が、
この物語のもう一つのテーマになっています。

純粋な愛情が、邪悪な愛情に打ち勝てるのかが、絶えず問われ続けます。

■ アッシュの鏡としての二人の少年 ■

人望の篤いアッシュをひたすら恨む少年が居ます。
若くしてチャイナタウンを仕切るユエルンです。

彼はアッシュと同様に不幸な過去を持ち、
そしてアッシュと同様にマフィアの財産を引き継ぐ立場にいます。

イェルンとアッシュはまさに鏡に映った己が姿です。
ところが、アッシュには英二という魂のペアーが存在し、
イエルンには存在しません。

その事がユエルンの魂の平穏を乱し、
彼は英二を執拗に憎みます。

本来、鏡に映ったペアーであるはずのアッシュが
ユエルンよりも幸せに見える事への嫉妬が彼を狂わせます。

■ ボーイズラブへと退化する「魂のペアー」 ■

連載当時、アッシュと英二の関係は少女達の憧れだったでしょう。

少女マンガを愛読する様な女子は、
現実世界では性的に奥手な子が多いはずです。

彼女達にとって、「男女の性」は興味はあるけど、現実からは遠い存在です。
だから、思春期独特の潔癖さによって性愛は「不潔」なものとして排除されます。

そこで、彼女達は「不潔」でない性的関係を探しました。
それが「少女同士」「少年同士」の性だったのです。

これらは最初は「友情」として描かれます。
ヒロインとその親友の女の子の純粋な友情。
ヒロインの憧れの男性とその親友の男の子の純粋な友情。

「ボーイズラブ」の発端は、『エースをねらえ』の藤堂と尾崎の様な
「理想の男友達の関係」として描かれます。

一方では少女マンガは進化の過程で、少年マンガよりも積極的に「性愛」を描写してゆきます。
少年たちよりも早熟な少女達が、作品の中に「性愛」を求めたのでしょう。

妄想力豊な少女達の求める「愛」は動物的肉欲では無く、精神的な強い絆です。
どうしても、「肉欲」に打ち勝てない異性との性愛より、
「同性愛」を少女達が好むのは、
その関係が生物学的必然では無く、精神的つながりだからではないでしょうか?

一方では少女の潔癖性が、「同性の魂のペア」を生み出し、
一方では「アブノマルな精神的性愛」少女達は求めてゆきます。

この二つの事象が合体した先に、現代の「ボーイズラブ」の世界があるのでしょう。

そして、『BANANA FISH』 はそういった時代の先駆けとして、
男同士の友情が、同性愛という安定性を獲得する前の
スリルングな状態を鮮やかに描き出したのです。

言うなれば、現代の「ボーイズラブ」は、魂の高みを目指した「同性同士の魂のペアー」の
墜落した姿であり、退化した姿なのです。

■ ジェンダーの障壁を軽々と越えてゆく吉田作品 ■

吉田作品の孤高の登場人物たちには、かならず魂のペアーが存在します。

『吉祥天女』の冷酷な殺人者、小夜子にも涼という「魂の鏡」と、
由依子という控えめな「魂のペアー」が用意されています。

『ラバーズキッス』は、様々な登場人物経ちが、社会から少しずつ阻害されながらも
傍らにはいつもその理解者が付き添っています。

彼らはジェンダーの壁をも超越しています。
男性と女性の組み合わせ、
男性の同性愛者と、女性の同性愛者の組み合わせなど多様です。

吉田作品では男女は理解し合えない存在では無く、
人間性の本質によって、理解し合える対象として描かれます。

■ 時代と共に変化し、成長する吉田秋生 ■

吉田作品の主人公たちは、今も昔も熱いナイフの様に強い精神の持ち主です。

しかし『ANANA FISH』や『吉祥天女』の時代の主人公達は、
「自分を守る為に相手を傷つける事しか知らない強さ」に守られていました。

しかし近作の『海街diary』では、そのエッジは大分和らいでいます。
それでも、時々登場人物達の見せる醒めた表情に、背筋がゾクゾクします。

吉田秋生の絵柄も作品の内容も時代と共に変化し、成長していますが、
作品の根底に流れる、クールさと「しなやかな強靭さ」は未だ衰えを知りません。


ちなみに、鎌倉を舞台にした4姉妹の物語、『海街diary』は少女マンガの到達点の一つです。

「海街diary」・・・本音をみつめる女性の視点 (人力でGO)



園芸女子・・・娘のアパートに記念植樹

2018-07-03 12:05:00 | エコロジー
 
■ 目的は水やり ■

ところで日曜にに熱中症戦いながら自転車で鴨川を目指した重要なミションですが、それは「植物への水やり」。



実は娘のアパートの駐車場に1年以上も前から大型のプランターが5個、土が入った状態で放置されています。車が建物に近づき過ぎて停車しない為の「車止め」として設置されているのですが、雑草がショボショボ生えていて「みすぼらしい」。

私、空のプランターとか、空き地があると、花を植えたくなる性質を有しています。多分、先祖が「花咲かジジイ」か、下町の路地を植木鉢でイッパイにしてしまう様なジジイだったのでしょう。

1年間以上、空のプランターに何か植えたいという欲求と戦って来ましたが、先週、娘のアパートで雨で降り込められて、暇をしていた時に、欲望に耐えきれなくなって園芸店に行ってしまったんです。雨の中、傘差して・・・。

プランターの中の土は、どこぞの山で掘って来た様なカチカチの粘土。雑草も大きく育たない様な土でしたから、腐葉土や肥料が必用です。重そうだから近くの園芸店で入手するつもりで、ネットで「鴨川 園庭店」で検索して行ってみると・・・



辿り付くと、こんな園芸店なんです。これ、栽培農家さんですよね。そんな事が2度3度あって、仕方なく大型ホームセンターのカインズ鴨川店まで歩きました。雨の中、田んぼの中を、ウシガエルの声を聞きながら、トボトボと、結構楽しく、アパートから3kmも。



いやー、歩くって楽しいですよね。特に雨の中・・・・。私、実は雨、好きなんです。歩くのも。

■ 田舎のホームセンターってマジにワンダーランド ■


いやー田舎のホムセンってマジ、パナイですね。腐葉土なんて40リットル入りですぜ!!思わず40リットル入りの腐葉土を二袋、野菜の培養土、60リトル入りを一袋、大型プランター1つ、肥料、ハーブの苗、10リットルのジョウロ、シャベルなどを買い、レジへ。18000円になっちゃたよ・・・・。

ところで、カート山積みの荷物をどう運ぶのか・・・・。軽自動車を借りるという手は有るが・・ペーパードライバーなので、多分無理。(マニアル免許ですよ。33歳の時取りました)

タクシーも嫌がりそうだし。

「すみません、すぐ近くなので、カートお借りして宜しいですか?」と切り出すと、怪訝な顔をするも、レジのお姉さんは「良いですよ」と言ってくれた。

「普通、田舎の郊外のホムセンって車で来るでしょう??」って思ったかどうかは私には分かりません。

■ 土砂降りの中、カートを3km押すのは辛いよ ■

先程からの雨は止んで、雲間から日差しが差しています。これなら濡れずに帰れそうです。

しかし、ホムセンのカートは小口径タイヤなので段差に弱い。さらに道路は水勾配が着いているから、真っすぐに走らせる事が一苦労。こんなので、3kmを押して行けるのか不安になりながら田んぼの中を進んでいると・・・・いきなり土砂降りになりました。

ここから先は羞恥心は捨てます。カート押してる時点でヘンな人ですが、土砂降りの中を傘も差さずにカートを押してる人は、かなりヤバイ人に見えるでしょう。

そんな、こんなで延々とカートを押して娘のアパートに到着しますが、今度は3kmをカートを押して戻る必要が有ります。ただ、雨が上がっていたので土砂降りよりはマシです。かなり蒸し暑いですが。

再び、ウシガエルの声を聞きながらカートを返しに行きました。3kmの道のりを。

■ アパートの女子大生を労働力に徴用しよう!! ■

娘は園芸科の高校出身なので、用土と苗と肥料とシャベルを置いておけば後はどうにかするハズ。そう思って娘の帰宅前にトンズラするつもりでしたが、アパートの玄関の前の雑草が気になります。掃除のオバちゃん、雑草は全くアウト・オブ・眼中なんだよね。

1)雨上がりは雑草が抜きやすい
2)雑草はあまり大きくなる前の抜くべし

私の小学校では、校庭や学校周辺の雑草取りは生徒の日課でした。「雑草は敵」「雑草は根絶やしにしろ」と幼少の頃より刷り込まれています。だから、舗装の隙間から健気に生えて来た雑草でも私は容赦はしません。

「雑草という植物は無いんだよ」とは昭和天皇のお言葉だとか、有川浩の小説の主人公の言葉とかは知りませんが、カワイイ花を咲かせるヘクソカズラだろうが、カタバミだろうが、その気になれば食べられるヨモギだろうが、玄関先に生えていたら容赦はしません。

そんなこんなで30分程、無心に雑草を退治していたら、娘が授業から帰って来てしまいました。

「お父さん、アレ何?」「誰植えるの?」「アレ、2万円位い掛かってるよね。お金無いんじゃなかったの!!」

流石は園芸科出身です、さらっと苗や用土を見て、一瞬で費用を算出しました。

「いや・・・お前が皆に教えて、アパートの友達と記念植樹すると楽しいかと思って・・・・」

「エ?!バカじゃない、誰も手伝わないに決まってんじゃん。今時の女子大生だよ」


そう、プリップリに怒りながらも「手伝って、とっとと植えちゃうから」と言う娘は、流石は園芸科出身。本人は今時の女子大生のカテゴリーからは外れているらしい。

それでも娘は仲の良い友人の部屋の呼び鈴を鳴らしている。どうにか運の悪い娘が一人捕まりました。「〇〇子ちゃん、ご飯食べたら来てくれるって」

しばらく娘と二人で用土を混ぜ合わせていると〇〇子ちゃんがやって来た。真っ白な軍手を嵌めている。多分、わざわざ買って来てくれたのだろう。素手で土を捏ねている娘を見て、軍手しない方が良いかな・・・と娘に聞くが、「爪ボロボロになるから、してた方が良い」と娘。

そんな、こんなで女子大生まで徴用して、一しきり園芸作業に勤しんだ結果、それなりの見栄えのプランターハーブ園が完成しました。



■ 誰が水やるの? ■

「ところで、お父さん、これ誰が水あげるの」と娘が問う。

「お前じゃねぇ?」

「ハァ、勝手に植えたのお父さんじゃん。水道代だって掛かるんだからね」

これは予想された反論です。そこで、私も隠し玉を出します。

「だって、お前、この前の就職面接で園芸科出身の事を聞かれて、家の植物に良く水をあげます・・って答えたっていうじゃん。本当は水やったら千円ちょうだいってお金取るくせに、水やりが甘くて、後ろの方の鉢とか萎れてるじゃん。面接で嘘言ったら内定取り消しになるかも知れないからねぇー」

「いいよ、ヤレばいいんでしょう。だけど、長期休暇とか居ない事もあるじゃん。それと水道代お父さん持ちだからね」


そこで私は一計を案じました。「PC貸て、張り紙するから・・・」

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この度、このアパートの学生有志で卒業を祈念して、記念植樹をしました。

オシャレなハーブガーデンにしてみました。

丈夫な種類を選んでいますが、何分、学生なので、

長期休暇などで不在にする事もあります。

水が涸れて萎れている時は、お気づきの方はどうか水をあげて下さい。

尚、バジルやローズマリーなどは皆さんでお使い下さい。

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どうだ、女子大生のお願いとあれば、アパートの住人だって無下には出来まい。

「こんなの貼ってもダメだと思うよ。今時の若い人は気にもしないよ」と娘。

でも、一応、可愛らしいマスキングテープでエントランスのガラスに貼りました。

「よし、どう見ても女子大生が作った張り紙に見えるな」と自画自賛。


■ 初めの週にして速くも危機が・・・ ■

ところが、娘は木曜日から韓国に遊びに行き、来週一週間は浦安でダラダラと過ごすと言い出した。「梅雨だから、出発前にたっぷり水を上げておけば、しばらくは大丈夫だよ」と私も楽観的に考えていました。


・・・・週が明けたら、気象庁が関東地方の梅雨明けを宣言しました・・・。


こうして、翌週の日曜日、31℃の気温と5mを越える向かい風の中、パンクを修理しながら、熱中症になりながら、私は水やりの為に100kmの道のりを、自転車で鴨川を目指す事になったのです。



あまりに早い梅雨明けで、翌週1週間も水やり無しでは持ちそうにありません。そこでジョウロとバケツとペットボトルに水をセットしました。

娘に写メすると「隣の部屋の〇〇ちゃんが来週居るから水やり頼んだ」と娘からの返信。


どうやら、アパートの現代風の女子大生達は、こうして園芸の楽しさに目覚めて行くのだろう・・・多分。



家に帰ると娘が、「韓国行く前に、たっぷりと水あげといたよ。クラスの子が見かけたらしいんだけど、変な子が水あげてると思ったら〇〇ちゃんだったんだって言われちゃったよ。」だって。


変なオヤジと変な子で有名になりそうです。

チューブレスタイヤはパンクした時に手に負えない・・・シーラントでも塞がらないパンク

2018-07-03 09:58:00 | 自転車/マラソン
 

■ 初めてのチューブレスタイヤ ■

チューブが無い為に低圧でもリム打ちパンクが発生せず、転がり抵抗も少ないチューブレスタイヤは自転車乗りの間では話題になる事も多いのですが、「パンクした時が大変」という噂も多い。

そこで、その「噂の真相」を身をもって調査してみました。(単にパンクしただけ)

先日ヤフオクで落札してしまったBASSOのASTRAのホイールはユーラスのチューブレス仕様可能タイプ。元々、前輪はIRCのFORMULA PROのチューブレスが、後輪はミシュランのPRO3のクリンチャーが装着されていました。両方ともほぼ新品に近いタイヤですが、年式は不明。ただ、ひび割れ等は見られなかったので、そのままでロングライドをしていました。

柔らかくて乗り味が良いと評判のチューブレスタイヤですが、このフレームでクリンチャータイヤと比較した事が無いので、乗り味が良いかどうかは判断できません。

■ 初めてのパンク ■

先々週、いつもながら100Km走って鴨川に行く際に、太平洋のビーチに出た途端に雨が降って来ました。この自転車、タイやでの初めての濡れた路面の走行でしたが、グリップには問題無く安心して走れました。

娘のアパートまで後1kmという地点で、突然、シュー・シュー・シュー・シューという音が前輪から聞こえて来ました。何だろうと思って前輪を良く見ると、クジラの潮吹きみたいに、前輪から水が細くプシューと噴き出しています。どうやらパンクした様です。

クリンチャータイヤならば、直ぐに空気が抜けてしまうのですが、チューブレスタイヤは徐々に空気が抜ける様で、そのまま700m程度は走れました。道が荒れた所で、リムが心肺なので自転車を降りてタイヤの空気圧を指で確認しますが、柔らかいながらも空気は幾らか残っています。タイヤもリムにしっかり嵌っているので、クリンチャータイヤの様にパンクでタイヤが外れてチューブが飛び出す様な事は無い様です。

これは下り坂などでパンクした時に安心です。

■ 修理がメンドクサイからシーラント剤を入れてみた ■

かねがね「シームレスタイヤはリムから外し難いし、嵌め難い」「嵌めるのに2時間格闘した」なんて噂を聞くので、出来ればタイヤを外したくありません。

そこで、鴨川市内に一軒だけあるアウトドア店に行ってパンク防止剤(シーラント剤)が有るか尋ねてみました。

「エバーズなら在りますよ」と言われて出て来たのが下のシーラント剤。



はたして、これが良いのか悪いのか分かりませんが、これしか無いのですから買うしかありません。娘のアパートの廊下で、シーラント剤を注入しますが、あまり入れると重くなりそうなので、60CC入りのうち40CC程度を注入します。

先ず、空気を入れずにホイルをカラ回してから、空気入れで空気を入れてみます。すると、プシューという音と共に青い液体がタイヤから滲み出して来ました。

「なーんだ、効かないじゃん」って心の中で悪態を付いていると、空気漏れの音は次第に止み、青い液体も出て来なくなりました。「やるじゃん、EVERS」と心の中で喝さいを送りながら、空気を7気圧程度まで入れてみましたが、どうやらパンクを塞がっている様です。これで、走行中にパンクしても自然に空気漏れは止まるハズ。

EVERSをネットで調べると6mmまでのパンクを防げるとの事。これ、サイドカットの様なパンク以外はほぼ修理できるって事ですよね。「やるじゃん、EVERS!!」


■ 2週連続でパンクした ■

7月1日の日曜日。5~7mの南からの向かい風を突いて、一路鴨川に向かいます。実は重要な用事があって、鴨川に行かなければならなかったのです。

関東地方は梅雨が明けたので、暑さが厳しそうです。最高気温の予測は31℃。体に暑さに慣れていないので、軽い熱中症は覚悟します。

君津から鹿野山竜宝寺ルートを登って。ASTRAのヒルクライム性能をチェックするつもりでしたが、流石に5~7mの向かい風で海岸沿いを70km走るのはは辛い。そこで浜野から姉ヶ崎まで一本陸側の旧道を通り、久留里街道~鴨川有料を抜けて楽して鴨川に向かう事にします。本日の目的は自転車の他に在りますから。

向かい風と暑さに閉口しながらも姉ヶ崎のコンビニせ小休止します。ここから鴨川まで60km。11時頃までには到着したい。

久留里街道を内陸に進み、最初の長い坂を気持ち良く登っていると、前輪からプシューって何だか聞き覚えのある音がして来ました。

そう、2週連続のパンクです。

■ 2mmのパンクにシーラント剤が役立たず ■



パンク箇所から青色のシーラント剤がクジラの潮吹きの様に噴き出す様はシュールですが、空気圧が下がった所で噴出は収まります。「EVERSのシーラント剤、ヤルじゃん」って心の中で喝さいを送ります。

ちゃっちゃと空気を入れて走り出そうと、CO2インフレーターでシュー!!っと空気を入れると、ブジュブジュブジュ、シュシュシュシューーーと再び青い噴水状態に。おかげで地面はこの通り。



そして空気圧は再び1気圧に近づきます。パンク箇所を見ると2mm程度の切り傷があるのみ。あれれ・・・、空気を入れるのが速すぎてシーラント剤が固化しなかったかな・・。そう思い、パンう箇所を下にしてしばらく放置した後に、ハンドポンプで少しずつ空気を入れます。

すると、3気圧を越えた辺りからプシュプシュプシュと少しずつ空気が漏れ出し、それ以上入れるとプシューっと景気よく空気とシーラント剤を噴き出します。

こんな事を1時間以上繰り返して、とうとうシーラント剤での修理を諦めます。チューブを持っているので、チューブレスタイヤにチューブを入れる事にします。

しかし、シーラント剤が入っているので、ベトベトになる事は必至。できれば水が有る所で修理いたい。そこで最寄のコンビニまで炎天下を自転車を押してトボトボ歩く事に。

■ 外れない、ベトベト、ハマらないの三重苦 ■

コンビニで2リットルの飲用水のペットボトル2本と、液体石鹸を買います。チューブレスタイヤのビート(リムにハマる部分)は硬いので、石鹸水で滑りを良くしないとビートがハマらないと読んだ事があるからです。

先ずはタイヤを外そうとしますが・・・・硬い・・・。素手ではリムから外す事も出来ません。そこでタイヤレンチで強引のリムから外しますが、中からシーラント剤がドバーードロドロで溢れ出して来ます。そして、半ばゴムの塊の様になった固化したシーラント剤のカスも沢山出て来ました。それらをペットぼボトルの水で洗い流します。

チューブをセットして・・・タイヤを嵌め様としますが、石鹸水を使っても素手では容易ではありません。奮闘する事20分くらいで、ようやくタイヤがリムにハマりました。

今度はビートをリムにしっかり嵌める「ビートを上げる」という作業が待ち構えています。これには一瞬でタイヤに空気を高圧で送り込む必要があり、携帯用のハンドポンプでは無理。

CO2ボンベを2本持参していますが、パンクの際に悪い予感がしたので、ボンベは一本の残しています。まさに悪い予感が的中して嬉しいやら・・悲しいやら。インフレターで一気にチューブに空気を入れるとパチパチという音と共に、ビートがキッチリとリムの溝にハマります。

ここまで、コンビニの駐車場で汗だくで格闘30分。自動車で来ていたオジサンが見物がてら話し込んで行かれました。おかげで、楽しく作業が出来ました。ありがとうございます。

■ クリンチャータイヤになったけど違いは分からない・・・ ■

さて、チューブレスタイヤが普通のクリンチャータイヤになった訳ですが、乗り味の違いは私には分かりませんでした。多分、低圧にすればチューブレスの良さが出て来るのでしょう。

2時間程時間をロスして12時過ぎにコンビニを出発します。鴨川までは40km以上で、しかも登り基調。これは暑そうです。

暑さで多少フラフラしながら久留里に到着します。コンビニで氷を買った首筋を冷やし、水を頭から被ります。何だか、意識にうっすらとカスミが掛かった様で、頭痛も少しします。頭からポタポタと大量の汗が滴り落ちます。これは軽い熱中症です。

向かい風でスピード以上にパワーが出ているので、体がオーバーヒートしているのでしょう。久留里から鴨川有料の入り口までは登り坂が多いのですが、セーブして走らないと一発で熱中症で動けなくなるでしょう。

そこからは、パワーを抑えながらもヘロヘロしながら、道の駅近くのミニストップに到着。ペットボトルの冷水をジャンジャン掛けてクールダウンに努めます。ここまで来れば、後少し登れば鴨川有料の下り坂を「ヒャッハー」って鴨川まで一気に下るのみ。

そんなこんなで3時に鴨川到着です。予定の4時間オーバー.

11時から3時までの一番気温の高い時間帯に山越えをする最悪のパターンでした。