まだ2月なのに、もう今年のベストワン候補と出会ってしまった。これだけの映画はたぶんもう今年は出てこないだろう。イスラエルの新人、エラン・コリリン監督作品。昨年の東京国際映画祭でグランプリに輝いた傑作だ。
夜のしじまの中。8人の迷子の警察官たちが、人々の善意に支えられ、別々の場所で、ひとりひとりが迎える特別な一夜。エジプトを離れ、この異国であるイスラエルの見知らぬ町で、思いもかけない時間を送る。ある男の妻の誕生日会に参加することのなる3人、デートに行く2組の男女と行動をともにする若い男、団長は食堂の女主人と夜のカフェに行くことになる。
こんなにも無口な映画も珍しい。タイトルはちょっと可愛らしいけど、カウリスマキもびっくりの映画である。イスラエルの空港に降り立った8人の警察音楽隊の面々が迎えを待つ場面から始まる。誰もいない砂漠の真ん中で、一向にこない迎えをひたすら待ち続ける。周囲には何もない。誰もいない。初めての異国の地である。不安もあるはずなのに、おくびにも出さない。この異常に長い間がおかしい。この映画は全編この調子である。
しかたなく、自分たちでバスに乗り、目的地を目指すが、間違ったバスに乗り、まるで知らない場所に来てしまう。人の姿が全くないような町。高層マンションが立ち並ぶのに人気はない。とある食堂に行き、食事を取る。何も出来ず(空港に戻るバスもないし、だいたいバスは1日1便らしい。それに両替してないからイスラエルのお金もない。)途方に暮れる。
それにしてもこの8人の無口さ。こんな状況なのに彼らは静かに佇んでいる。青い制服に制帽をきちんと被り、立っている。自分たちの住む国から遠く離れて、異国の見知らぬ町で、見知らぬ人たちと過ごす1日。とても心細く寂しい。そんな時の人々の優しさが心に沁みる。ここで暮らす人たちの生活の中に入り、その様子をほんの少し覗き見してしまう。もう2度と会うこともない人たちとの一夜限りの邂逅。偶然にもここで出会った事なんて、お互いにすぐに忘れてしまうかもしれない。だいたいそんなことがあったことも、当事者以外は誰も知りもしまい。
夜の静寂の中、彼らが過ごした時間、そのいくつもの風景が心の深い部分に残る。何もないのにそんな風景が心の琴線を刺激する。一見とてもあざとい見せ方のように見えて、実はそうではない。この沈黙が彼らの気持ちをきちんと伝える。
夜のしじまの中。8人の迷子の警察官たちが、人々の善意に支えられ、別々の場所で、ひとりひとりが迎える特別な一夜。エジプトを離れ、この異国であるイスラエルの見知らぬ町で、思いもかけない時間を送る。ある男の妻の誕生日会に参加することのなる3人、デートに行く2組の男女と行動をともにする若い男、団長は食堂の女主人と夜のカフェに行くことになる。
こんなにも無口な映画も珍しい。タイトルはちょっと可愛らしいけど、カウリスマキもびっくりの映画である。イスラエルの空港に降り立った8人の警察音楽隊の面々が迎えを待つ場面から始まる。誰もいない砂漠の真ん中で、一向にこない迎えをひたすら待ち続ける。周囲には何もない。誰もいない。初めての異国の地である。不安もあるはずなのに、おくびにも出さない。この異常に長い間がおかしい。この映画は全編この調子である。
しかたなく、自分たちでバスに乗り、目的地を目指すが、間違ったバスに乗り、まるで知らない場所に来てしまう。人の姿が全くないような町。高層マンションが立ち並ぶのに人気はない。とある食堂に行き、食事を取る。何も出来ず(空港に戻るバスもないし、だいたいバスは1日1便らしい。それに両替してないからイスラエルのお金もない。)途方に暮れる。
それにしてもこの8人の無口さ。こんな状況なのに彼らは静かに佇んでいる。青い制服に制帽をきちんと被り、立っている。自分たちの住む国から遠く離れて、異国の見知らぬ町で、見知らぬ人たちと過ごす1日。とても心細く寂しい。そんな時の人々の優しさが心に沁みる。ここで暮らす人たちの生活の中に入り、その様子をほんの少し覗き見してしまう。もう2度と会うこともない人たちとの一夜限りの邂逅。偶然にもここで出会った事なんて、お互いにすぐに忘れてしまうかもしれない。だいたいそんなことがあったことも、当事者以外は誰も知りもしまい。
夜の静寂の中、彼らが過ごした時間、そのいくつもの風景が心の深い部分に残る。何もないのにそんな風景が心の琴線を刺激する。一見とてもあざとい見せ方のように見えて、実はそうではない。この沈黙が彼らの気持ちをきちんと伝える。
エラン・コリリン。次回作を期待している数少ない監督の一人です。