習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『さようなら、今日は』

2008-02-20 20:26:14 | 映画
 13日、市川崑が亡くなった。あれからもう1週間だ。なんだか力が抜けてしまった気分で何もする気にならない。偶然、今、劇場で公開されていたこの映画を見てきた。

 国際シネマで開催中の「京マチ子映画まつり」の1本として上映されていたのだ。59年作品。

 大阪と東京を舞台にして、、結婚よりも仕事をとって、男なんかに見向きもせず、ばりばり働く女たちを主人公にしたこのコメディーは今見ても充分に楽しめる作品だ。結婚できない3人の男たちが(その中には田宮二郎もいる!)会社の廊下で雑談するシーンから映画は始まる。そんな男たちの横を、颯爽と仕事が出来てかっこいいキャリア・ガール、主人公の若尾文子が通り抜けていく。

 彼女と、大阪で料亭を切り盛りしている若き実業家、京マチ子を主人公にして、2人がそれぞれのフィールドで肩で風を切ってバリバリ働いていく姿と、そんな2人を好きになるウジウジした煮え切らない男たちを対比して描く。

 もちろんラブコメになっているし、3人の男たち(オープニングに出てくる会社の3人ではない)、川口浩、船越英二、菅原謙二はそれぞれ必死に彼女たちの事を思っているし、真面目でいい奴らだ。彼らに若尾文子の妹である野添ひとみのスチュワーデス(当時、時代の先端を行っていた職業婦人)も絡んできて、トータル男女6人の恋のさや当てが展開していく。結末はあっと驚く新展開で、とても気持ちがいい終わり方だ。

 なんてモダンな映画なんだろうと改めて思った。市川崑ってほんとうにすごい。いつだって時代の最先端を軽い足取りでさっそうと走り抜けていたのだ。

 この日は、もう1本。『足にさわった女』も見る。こちらは市川崑によるオリジナル版ではなく、彼の愛弟子である増村保造監督によるリメイク。市川崑のオリジナル脚本をそのまま使ったようだ。映画としては、あまり面白いものではないが、とても洒落たライトコメディーで、市川崑らしさのよく出た作品だ。ただ、増村とのマッチングがあまりよくないので、中途半端な出来になったのは残念だ。

 75年以降晩年の30年、リアルタイムで見た市川崑作品のベストテンと、僕の見たすべての市川作品(リストを見たら40数本しか見ていない)からのオールタイムベストテンを最後に書き記して、市川崑監督とのお別れとしよう。「さようなら」、そして、永遠に色あせることのない彼のまだ見ぬ作品との出会いに向けて「こんにちは」とでも記しておく。

    1 おとうと         1 細雪       
    2 私は二歳        2 悪魔の手毬唄
    3 細雪           3 犬神家の一族
    4 炎上           4 古都
    5 悪魔の手毬唄     5 映画女優
    6 股旅           6 吾輩は猫である
    7 犬神家の一族     7 幸福
    8 黒い十人の女     8 おはん
    9 野火           9 かあちゃん
   10 ビルマの竪琴     10 犬神家の一族(06)

 『東京オリンピック』とか、『破戒』とか、『日本橋』『太平洋ひとりぼっち』やら、いろいろ洩れてしまった。

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