YA小説と図書館では分類されているけど、これはほとんど児童文学のノリだ。こんなアホな中学生はマンガの世界か、児童書にしかでてこないだろう。大人の小説ではこのノリは絶対ない。バカバカしい。付き合いきれない。なのに、それがなぜか嫌ではない。それどころか、なんだか気持ちいいくらいだ。作者はこれを無意識にするのではなく確信犯。わざとこういうキャラクターをでっちあげた。そして、それが過剰にならず、ちゃんと寸止めが出来ている。上手い。
キャラだけでなくお話もとんでもない。あんな中学剣道部ってあり得ない。お話はかなりいい加減だけど、このノリを貫いていくみたいで、仕方ないなぁと思って付き合うことにした。定番の展開を悪びれることなく、堂々と描く。その中できちんと大切な想いや気持ちを伝える。突っ走っていくややの暴走をみんなはしっかりとフォローしていくのが素敵だ。そして彼女は熱いだけでなく、中学1年生なのに人間ができている。
地域の剣道教室や道場、中学のクラブ活動を適度にデフォルメしながらも、核心はリアルに描かれるから、腹は立たないし、納得できる。
「第11回ポプラズッコケ文学新人賞 大賞受賞作!」とある。なるほど、と思う。それにしてもズッコケ文学新人賞っていうネーミング。さすがポプラ社だ。ズッコケさせられるのが、心地よいし、楽しい。
6人の女の子たちの置かれたさまざまな状況がリアルだ。上手く描かれていて、そんな状況への対応も的確。ふたりの指導者の描き分けもあからさまなパターンだが、納得できる。すべてにおいて確信犯。やられたな、と思う。