この凄いタイトルに負けないくらいに映画もまた凄い内容だ。桜庭一樹の直木賞受賞作品の映画化なのだが、ひとりの少女がたったひとりになるところから始まる。まだ10歳くらいの女の子が震災(奥尻島の大地震)
によって家族を失い天涯孤独になる。彼女を助けたのは遠縁にあたる青年で、彼は彼女を引き取り育てることになる。身寄りのない彼女は彼を慕い、たったふたりで身を寄せ合うようにして生きる。
美談ではない。生々しい男女の物語になる。男は、中学生になった彼女と深い関係になり、彼女もまた、彼がいなくては生きていけなくなる。父と娘のような関係のはずが男女の関係になる。未成年の彼女と性的な関係を結び、愛し合う。どう考えても、ふつうじゃない。弱い存在である少女に強要したわけではない。だが、人間としての理性はないのか、と思う。一線を越えてしまうことへの恐怖とか躊躇いがここには描かれない。それは不満だというのではない。そういう次元にはないものを、この映画は描こうとしたのだ。
今あるものを失うことへの恐怖。震災ですべてを失ったとき、彼女はもうこれ以上失わないと誓ったのか。彼女が彼を失うかもしれないと感じた時、自分たちを引き離そうとするものから全力でそれを守ろうとした。それは優しい知り合いのおじさんを殺すことになる。禁断の関係であることや、それを知られたくはないというようなことよりも、ただ自分たちを守ること。ただそれだけが理由だ。罪の意識はない。生きるためならすべては許される。彼もまた、自分たちの生活を守るために、知り合いである元警官の男を殺すことになる。
ただ、ひっそりとふたりだけで、生きたかった。だが、そんなことは許されるわけはない。無邪気に見える10代から、20代までを二階堂ふみが演じる。北海道から東京へと舞台を移したところから、彼らの関係性にひずみが生じてくる。異常であることは最初からわかっている。でも、自分たちの中ではこれが当然のことだった。そうすることで自分たちの生活は守られていくと信じた。だが、人は自分たちだけで生きているわけではない。他者との関係性の中で生きている。ふたりの関係性であっても、それはずっと変わらないというわけではない。少女はやがて大人の女になる。そうすることで、彼らの関係は強固なものになる、わけではない。崩れていく。その残酷さが見ていて苦しい。ただ家族が欲しかった。それだけのことなのに、それがこんなふうになるなんて、思いもしなかったはずだ。だが、それを受けいれて、生きていくしかない。
こんな映画を見て、どよんとした気分になって、でも、そんなどうしようもなさになぜか耽溺してしまう。嫌な映画だ、という人も多々あるだろう。だが、こういう気分を拒絶できない。ここに埋もれてしまいたいというわけではないけど、自堕落にも見える関係性に絡めとられてしまうのもいいんじゃないか、なんて思う。もちろん、映画の中だけの話なのだが。
によって家族を失い天涯孤独になる。彼女を助けたのは遠縁にあたる青年で、彼は彼女を引き取り育てることになる。身寄りのない彼女は彼を慕い、たったふたりで身を寄せ合うようにして生きる。
美談ではない。生々しい男女の物語になる。男は、中学生になった彼女と深い関係になり、彼女もまた、彼がいなくては生きていけなくなる。父と娘のような関係のはずが男女の関係になる。未成年の彼女と性的な関係を結び、愛し合う。どう考えても、ふつうじゃない。弱い存在である少女に強要したわけではない。だが、人間としての理性はないのか、と思う。一線を越えてしまうことへの恐怖とか躊躇いがここには描かれない。それは不満だというのではない。そういう次元にはないものを、この映画は描こうとしたのだ。
今あるものを失うことへの恐怖。震災ですべてを失ったとき、彼女はもうこれ以上失わないと誓ったのか。彼女が彼を失うかもしれないと感じた時、自分たちを引き離そうとするものから全力でそれを守ろうとした。それは優しい知り合いのおじさんを殺すことになる。禁断の関係であることや、それを知られたくはないというようなことよりも、ただ自分たちを守ること。ただそれだけが理由だ。罪の意識はない。生きるためならすべては許される。彼もまた、自分たちの生活を守るために、知り合いである元警官の男を殺すことになる。
ただ、ひっそりとふたりだけで、生きたかった。だが、そんなことは許されるわけはない。無邪気に見える10代から、20代までを二階堂ふみが演じる。北海道から東京へと舞台を移したところから、彼らの関係性にひずみが生じてくる。異常であることは最初からわかっている。でも、自分たちの中ではこれが当然のことだった。そうすることで自分たちの生活は守られていくと信じた。だが、人は自分たちだけで生きているわけではない。他者との関係性の中で生きている。ふたりの関係性であっても、それはずっと変わらないというわけではない。少女はやがて大人の女になる。そうすることで、彼らの関係は強固なものになる、わけではない。崩れていく。その残酷さが見ていて苦しい。ただ家族が欲しかった。それだけのことなのに、それがこんなふうになるなんて、思いもしなかったはずだ。だが、それを受けいれて、生きていくしかない。
こんな映画を見て、どよんとした気分になって、でも、そんなどうしようもなさになぜか耽溺してしまう。嫌な映画だ、という人も多々あるだろう。だが、こういう気分を拒絶できない。ここに埋もれてしまいたいというわけではないけど、自堕落にも見える関係性に絡めとられてしまうのもいいんじゃないか、なんて思う。もちろん、映画の中だけの話なのだが。