習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ワイルド7』

2011-12-15 22:49:28 | 映画
 今頃、こんな懐かしいマンガを映画化するなんて、どういう企画意図があっての行為なのか、理解に苦しむ。でも、これはきっとめちゃくちゃ楽しい活劇になっているのではないか、と期待して見に行った。最新の技術で、ド派手で荒唐無稽なアクションのてんこ盛り、そんなお正月らしい作品になっているはずだ(った)。なのに、ここまで無残な映画になるなんて。

 バイクアクションも、銃撃戦も、確かに頑張っている。日本映画の限界に挑戦した、というのは嘘ではないだろう。スタントの人たちは命懸けで頑張ったのだろう。だが、それだけではアメリカ映画の物量作戦には及ばない。この映画がチカラを持つためには、もっと他にするべきことがあったのではないか。

 いくらなんでもこんないい加減な台本で、よくGOサインが出せたものだ。冒頭のアクションシーンはともかくとして、本題のストーリーがあまりに杜撰であきれてものもいえない。わざとこんなバカバカしい展開を用意したのだろうか、と勘ぐりたくなるほどだ。でも、作り手は「お笑い」を狙っているのではない。たぶん。それなら、このいいかげんな設定って何なんだろうか。こんなふざけた話では話に集中できない。

 もともと荒唐無稽な話である。基本設定の大嘘は許さなければ見ることが出来ないし、楽しめない。だが、それ以外の細部はちゃんと作ってくれなければ、本気のアクションすら、おふざけに見えてしまう。日本の警察はここまでバカではないし、マスコミもそうだろう。それより何より国民のみなさんが、こんな出来事を野放しにはしない。せめて、これは架空の世界でのお話、とでもしてくれなくては、バカバカしくて見ていられない。突っ込みどころは満載でどこをどうつついたらいいのか、困る。

 まずは、キザな瑛太をかっこいい、と思えなくては。それから、深田恭子。復讐のために鬼になる女! あれって、ありえないです。日本はいつから誰でもどこででも銃を乱射していい国になったのだろうか。昔のほのぼのとしていた時代の平和なマンガの世界でなら許されたことかも、しれないが、現代を舞台にした映画で、ここまで牧歌的な風景を容認するには、観客の心優しい理解が必要だ。でも、それはこの映画では無理だ。こういう虚構を容認できるだけの仕掛けがここにはまるでない。衝撃的な大失敗作である。考えられない。


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