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映画・演劇のレビュー

『瀬戸内海賊物語』

2014-06-10 21:59:18 | 映画
 こんなチャーミングなファンタジー映画が地方発で作られる。なんだかそれだけで、ワクワクする。映画はスケールの大きな冒険ものである。予算は決して潤沢ではないけど、それを補って余りある。

 村上海賊の残した宝物を探して4人の少年少女が旅に出る。これはちょっとした『グーニーズ』なのだ。子供たちがとてもいい。ヒロインである男の子のような少女、柴田杏花を見ているだけで、幸せな気分にさせられる。2人の男の子を従えて、冒険を率先する。村上海賊の末裔である彼女は、まさに『村上海賊の娘』だ。そこに、もうひとりの美少女が参戦して、最強の4人組が財宝を目指して旅立つ。

 小豆島と、その周辺の島々の美しい自然を舞台にして、12歳の子供たちが、大人の思惑なんか無視して自由気ままに冒険を繰り広げる。フェリーの廃船によって、生活の糧を失いそうになっている大人たち。理不尽な町長の申し出を受け入れざる得ない状況に対して、少女は断固としてNOと言い放つ。

 映画は懐かしい趣を持つ。今ではあまり作られることのないジュブナイルだ。自然の風景を存分に取り入れて、子供たちがそこで自由自在に生きている。大人たちはそんな子供たちを見守る。危険だから、とか、勉強しなさいとか、つまらないことは一切言わない。好きにさせる。昔の子供はそんな風にして、遊んでいた。自然に育まれ大地と共に育つ。でも、今ではそんな子供はどこにもいない。まさかの子供たちなのである。

 昭和30年代くらいからタイムスリップでもしてきたのではないかと、思うような「わんぱく」ぶりだ。(今時、「わんぱく」は死語だろう)小泉孝太郎演じる先生はそんな彼らに振り回されている。でも、彼は子供たちを押さえつけることはない。一緒に楽しんでいる。それでいいのだ。

 単純明快。胸躍る冒険。まさかの財宝。ファンタジーの王道をいく展開。これは決して出来のいい映画ではないけど、チャーミングで、楽しい。それだけで、十分ではないか。

 それにしても、この映画もまた、無残な公開のされ方をした。5月31日からたった2週間で終わり。しかも、1日数回の上映。見たくても、見ることができない。扱いは『六月燈の三姉妹』よりはましなようだが、似たり寄ったりの興行だ。

 地方発の志の高い映画が、こんなふうに斬り捨てられていく。客が入らないのだから仕方ないのかもしれないが、もう少し売り方を考えて欲しい。難しいことは重々承知の上だ。でも、せっかくの映画をもっと大切にして欲しい。これを作るのに、どれだけの時間と労力が注ぎこまれているか、見ればわかる。もちろん、そんなこと、どの映画も同じなのだが。ただたくさんの一生懸命作られた映画が、こんなふうにただ消費されていくのは見るに忍びない。

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