昨年の『高野豆腐店の春』に続いて藤竜也が主演する。最近高齢者が主演する映画は多い。昔ならありえなかったことだ。それだけそこには深刻な問題が山積みしているし、誰もが気になっている。需要があるから作られる。今映画の客層は若者ではなくシニアが高いパーセントを締める。
認知症を扱う。だがお話は単純ではない。まさかの始まり。機動隊がある民家を取り囲む。突入するという緊迫したシーンから始まる。そこにひとりの男が家から出てくる。藤竜也である。アクション映画ではないのに、そんなシーンから始まるなんて思いもしなかった。「なんなんだこれは!」と驚く。
もう20年以上会ってなかった父。父は初恋の人と再婚した。それから疎遠になった。今、認知症が進んで、最愛の奥さんもいなくなる。ひとりになったそんな父親を施設に預ける息子(森山未來)の視点から描かれる。父に対して複雑な想いがある。結婚して、俳優として、暮らしている。今の生活がある。父親に構っていられない。
だけど、父と向き合う。避けてきたことと妻の支えもあり、きちんと向き合っていく。そこからは知らなかったさまざまな問題が見えてくる。
重くて辛い映画である。だけど、この問題を避けることは出来ない。老いと向き合い、必死になって生きることはこれからの自分たちの問題でもある。母を看取り、今年高齢者の仲間入りをする僕は今度は老人グループからこの先の人生と向き合う。もう森山未來の側ではない。