この優しいタイトルと84分という潔い上映時間に心惹かれて、これはきっといい映画だと思った。本屋さんの話というだけで加点してしまう。それにキネマ旬報で川本三郎さんが褒めていたし。劇場では見逃しているからようやくの配信がうれしい。
期待以上に素敵な映画だった。クラウディオ・ロッシ・マッシミ監督作品。調べてみたけど、これが初めての映画のようだ。50年生まれだからもう74歳になる。この映画を作った時でも70代になっている。
丘の上にある小さな古書店。ひとりの老人が営んでいる。隣にはカフェがある。カフェの店員はいつもこの書店にやって来て油を売る。ある日ひとりの少年がくる。お金がないけど、本を読みたい。老人は彼に本を貸す。最初は漫画、やがて小説に。さまざまな本を貸し与える。ピノキオから『星の王子さま』さらには『白鯨』へと。老人のナビゲートで読書の楽しみを知る。
彼だけではない。さまざまな人たちがここを訪れる。本が好きだから、本を読む喜びを伝えたい。ただそれだけ。こんなシンプルな映画がいい。それだからいい。