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曽利文彦監督が『あしたのジョー』から6年、ようやくのことで放つ新作。この映画、実現まで、さぞかし大変だったことだろうとは、思う。それだけに、このレベルに収まってしまったのは残念でならない。どうして、こんな甘い映画になったのだろうか。
作品の舞台を海外ロケにしてしまうことでの困難は想像に難くない。だが、そんなこと、わかってやっているのだから、そこが弱点になってはならない。だが、リアリティがない描写は、映画を損なう。嘘くさいドラマの舞台は、映画をダメにする。この夏公開された三池崇史監督作品『ジョジョの奇妙な冒険』もそうだったし、昨年の『進撃の巨人』もそうだった。お話の舞台となる架空の街が、映画を生かしきれない。日本の風景ではダメだから、ヨーロッパの町並みを取り入れても、それがリアルとは程遠いペラペラの風景となり、CGでの描写と相まって嘘くささは倍増。しかも、これが表面的には明るいタッチの作品なので、誤魔化しがきかない。
とても頑張っているし、2時間13分退屈はしないけど、お話自体に破綻がたくさんあって、ストーリーに奥行きがないから、見ていて苦しい。軍と術師との関係とか、等価交換することで、何を得て、何を失うのか、とか。もう少し突っ込んで描いて欲しいところが、曖昧になっている。弟の体を取り戻すための旅っていう核となるお話にも説得力がない。『銀河鉄道999』とか、『どろろ』と同じレベルのファンタジーで、世界観が確立されていないから、説得力がない。もっと理屈っぽくてもいいのではないか。でなければ、観客を説得できない。
それから、キャスティングだが、主人公の山田涼介はいつもながら、素晴らしいのに、周囲にいるメインキャストがすっとこどっこいばかり。ディーン・フジオカや、本田翼の芝居はオーバーアクトや、勘違いも含めて、この作品にそぐわない。CGで描かれる弟のアルがなかなかいいだけに、人間ももっと頑張って欲しい。
そんなこんなで、映画は甘さばかりが目立つ作品に仕上がっている。これだけの超大作なのだから、それに見合う対価が欲しい。